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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

前世の記憶がある転生ヒーローですが、なにか?



クスっと笑えるだけのお話が読みたかったので書きました。





ハイ皆さんこんにちは。

この世界のヒーローです。

前世で読んでた漫画のヒーローになってます、俺。


だからなのかな~。

色白美人のエルフと、健康的なムッチリ獣人と、巨乳女剣士と、エロいボンテージ姿の魔法使いと、清楚なのに何故か胸が隠れてない聖女に囲まれて冒険してま~すっ。

冒険パーティだから常に一緒。

寝る時ですら見張りを除いておっぱい塗れて雑魚寝。


これって天国?

………………ううん。俺には地獄。

確かに、俺は前世からの巨乳フェチだ!し・か・し!

(だって俺の好きなのは…おっぱいはおっぱいでも、鍛え抜いて筋肉が盛り上がった雄っぱいなんだもんよ…)

巨乳の解釈が違う…っ!←血の叫び。)


朝から晩まで恋愛対象外の女に囲まれて何が楽しいというのだろうか…

前世なんて学生時代は筋肉おっさんを愛でたいが為に建設現場や引っ越し業者のバイトに明け暮れ、選んだ就職先もブルーカラー業種の筋金入りだぞぅ?

なにが悲しくて転生した先で美女に囲まれなきゃならんのだ………あぁもう!プルプルおっぱおをくっつけんな。

絶望で顔が ースンっ ってなるわ!


もちろんこの世界にだって俺好みな筋肉男は存在する。なんだったら前世より多い。だって平民の男は大抵が筋肉質で屈強でなければ生きていけないし。

だけど貴族は駄目だ。みんな細身だし漫画によくある騎士ってのもスラーっとした美形が多いから。

ごくたまに筋肉隆々なのも居るにはいるが…貴族も平民もみーんな結婚が早いもんで既婚者ばかり!流石に既婚者の幸せを壊して迄は…という常識くらいあるので、人間の男との恋愛は諦めて旅をすることにしたところ、魔王討伐部隊の勇者になったのである。


(まぁ…勇者スキル持って生まれてるわけだしね、こうなるのはしかたない。)

漫画でもそうだったし。

っていうか、旅に出るまでの流れも俺の心情はさておきシナリオ通りだったので、そういうものなんだろう。


ただやっぱり、俺の心情が違うように同じだけヒロインたちも違うなとはおもう。

同盟国からの選出であるエルフも獣人も、国はないが魔法使いも。人間国からの女騎士や清楚な聖女は俺の好みがわからず男なら好むだろうという聖女と、どこかで「筋肉は素晴らしい」と「雄っぱい…」発言を聞かれたのか二段構えできている。

ようするに、魔王討伐を成しえるであろう勇者と「既成事実を作って国のものにしよう」という思惑が透けて見えているのだ。


漫画じゃ、ただのハーレム冒険譚だったけど。

よく考えたらこのパーティーメンバーってバランスが良すぎるんだもんな。

(まさかパーティーメンバー内で勇者争奪戦が水面下で行われてるなんて…世知辛いぜ。)

漫画で読んでる分には何ともおもわなかったけれど、実際におっぱい押し付けだの過度なボディタッチだのをされるのは、違和感がすごい。現実的じゃないよなぁっておもうし、彼女たちの思惑も察する。

(もし俺がちゃんと主人公(ヒーロー)だったなら、全員とフラグが立ってたんだろうけど……残念でした。はい、ごめんごめん。)

という、気持ちにしかならない。



そんな(勇者)だったからなのか。

この世界での好みの条件を独身と肉体美に絞った結果、オークキングやゴブリンキング、オーガやワイルドウルフなんかは俺の視界に入ることさえ忌避して逃げるし、追い詰めると純潔を守りたいがためなのか自害までする始末だ。

やっぱり野生の本能と勘は侮れん……。

俺の周りに侍ってる女どもは何にも気が付いていないのに。

(いや、自分に自信があるから同じ土俵の女と戦っても男は歯牙にもかけていないのか。…だから、俺が女に興味が無いのに気付かないんだな。他の女のせいで自分を見てくれてないだけ…って。)


魔獣殲滅の祝杯でも、酒に酔った女たちによる自然な流れでのラッキースケベや、スケベハプニングは阿保ほど起こるものの、そもそも魔王討伐のパーティーメンバーに選別された連中が状態異常回復のパッシブスキルが無いわけがないのだ。

(酒に酔ってる演技するの今日ものお疲れ様です。)

としかならない。

いっそエロ魔女のようにストレートに誘惑してくれた方が潔い。…応じないけど。だって俺の息子が反応しないんだからどうにもなり様がない。

(ほんと悪いな。一生懸命魔法で色々してるけど…エロ魔女さん、ほんっとごめん。俺アンタじゃ勃たねーンだわ。)

心の中で謝罪して、酔ったフリで寝る。

これは誘ってきた女性の尊厳を守る為の紳士の振舞として、正解だとおもうので、寝るのだ。狸寝入りで。




そしてとうとう到着しました魔王城。

いやぁ、デッケーな。人間界の王城より高いし。窓からの景色がビルの最上階よりも高い。

ってか、ダンジョン抜けた先からワープしたね。漫画の通りだね。

こんなに都合よく王城の内部に入れるって警備ザルじゃねーかな。


…さて。問題はここからなんだよな。


なんせ、俺の前世の記憶にあるシナリオはここまでなのだ。

特に好きで読んでいた漫画ではなく、現場の人間との円滑な話題の為に毎週買って読んでいた漫画雑誌の内の一作品がこの世界というだけ。

単行本を買ったこともないし、真っ先に読むような作品でもなかった。

だけど毎週読んでいたし、話題にも上がったから内容を覚えている。そんな漫画だ。


(確か、漫画では魔王のシルエットは大きかったよな。俺の理想としては漫画世界なら範馬〇次郎とかなんだけど。もしくはタフの宮沢〇龍か、性格も身体もで欲張れば宮沢〇虎かな。)


これから登場するであろう魔王に期待に胸を膨らませワクワクしていた。



「よくぞここまでたどり着いたな。」


「え?」


え?

この目の前の人物が、魔王?

えっらい男前イケメンが?長身でスラっとしていて細マッチョな()()がぁ??

右を見ても左を見ても他にそれらしい人物はいない。

それにパーティメンバー達はあまりの絶世の美形の登場にモジモジしたりと忙しそうだ。


「うそ…カッコイイ…♡」

「しゅごいィ♡」

「あぁん♡罵られたいわぁん♡」

「下僕にしてくれと土下座すればいいのだろうか?あぁ、濡れるぅ♡」

「あのお方の子を孕みたいよぉ♡」


などなど。

すごいな?魅了魔法をかけるまでもなく魅了するってチートやんけ。


「ふはははっ。どうする勇者よ。お前の仲間たちはもうすっかり我に骨抜きにされておるぞ?」


「いや別にそれはいいんですけど……あの~、マジで魔王ってアンタなわけ?魔王なのにそんな細身なの?ってかさ、若すぎないかなぁあああ!だって魔王だぜ!?俺の予想ではさぁ!筋骨隆々の中年くらいから初老かな?ってイメージだったわけよっ!!!」


何百年も生きてるくせにこんな二十代の若者みたいなビジュアルで居るんじゃねぇええええ~~~~~っ!!!!


「ったくもう!なんなんだよ!?この世界に転生してからちっとも良いことなんかないんだが!?前世もそれなりにイケメンの自覚はあったけど今世じゃ神がかったイケメンに生まれ変わったのは良いけどさぁ!あと同性婚がオッケーな法律とか常識とかも嬉しいけどさぁ!それでも好みのタイプとは恋どころかワンナイトすらできてないんだがっ!?つーか既婚者ばっかだし!もう人間じゃなくてもいいやって守備範囲広げたら魔物は逃げるし、捕まえたら自害するし。だったら異種族のドワーフは身体つきは最高だけど身長が低すぎて俺のマグナムを尻にツッコんだら内臓アレして死にそうだっておもうと諦めざるをえなかったし、エルフは瘦身の美人ばっかで論外だし、獣人は逆に俺をヤろうとすっから取っ組み合いのポジション争いになって殺し合いに発展するし!もう!もう!もおぉ~~~~っ!俺は!死ぬまで!童貞でいるしかないんかいっ!!!!!」


この世の不満を漏らしながら感極まって思わず床を両拳で叩きつけるとビシビシィっと皹が走った。だがそれは実際の床や壁にではなく、その表面を覆っていた魔法空間の膜にだったようで薄いガラスが砕けるように崩れていっただけだった。


「ぅわ!なんつー()鹿()()だっ」


焦った魔王が魔力を巡らせ再生しようと試みるが間に合わずあっという間に魔法空間は消え、ただの室内になった。


「何てことしてくれたんだ!これじゃ父上にバレてしまうじゃないかっ!」


「は?ちちうえ?…って、お前は魔王じゃないってことか??」


「お、俺は……~~~~~~~っ!次代の魔王だっ!」


「ほぉん?つーことは魔王子様ってことか?」


「魔王太子だっ!魔王である父上の子は俺一人しかいないからなっ」


「なんでドヤってんだ。」


「ドヤってなど、いないっ!いやそもそもそんなことよりも、いいのか?お前の仲間たちは俺に侍らんとしているのだぞ!?」


チラリと見ると


「王子様だって~♡」

「しゅてきぃ♡」

「人類を滅ぼせる力って憧れちゃう♡」

「子宮が疼いて…♡」

「ペットにしてェ♡」


うーん、パーティガールズ達は脳味噌エロ溶けしちゃってんな。


「いいのか?仲間がこんな有様ではキサマに勝ち目などあるまい!」


「いや、別にそんなことないけど。今までも足手纏いなだけで特に役に立ったこともないし、なんだったら(勇者)とヤッて自分の価値を上げたいだけのエロ妖怪だし。そいつら相手の人間性とか、性格とかそんなのどうでもいいんだよ。現に今も、魔王太子って男にすり寄ってヨダレたらしてるじゃん。」


「ぇ、うわ…そういうことだったら、最悪……キモイな…」


そうなんだよな。

純真な恋心で見つめるだけの村娘とはわけが違う、権力主義と自己愛の塊のような女を侍らせたって、何の得も無い。

もちろん外見の好みや条件といったこだわりが悪いわけではない。

俺だってそれはあるし。

だけどもつい数十分前まで俺に媚びておきながらアッサリ他にすり寄るようなのは駄目だろう。まるっきし愛が無いのがバレバレだ。



「こんなんでよけりゃ侍らせればいいんじゃね?こいつら其々それなりに利用価値はあるぞ。俺はいらんから持ってけ。」


なんせ全員が選び抜かれた勇者パーティーメンバーなのだ。

いっそ全員を侍らせれば凡人も最強になれる。




「おい、いったい何の騒ぎだ?」






「おい、いったいなんの騒ぎだ?」


奥扉から二メートル以上の巨体の髭面中年が煩そうな顔をしてやってきた。

それがとんでもない美丈夫だったんだから飛びついた。


「ぅぇわぁ!?何だこの人間はッ」


威厳ある登場も台無しにするくらいに本物の魔王を動揺させたのは他でもな勇者様だ。


カエルのように飛びついて真夏のセミのようにしがみつく。

盛り上がった胸筋の谷間に顔を埋めながら愛を叫ぶ。


「やっと見つけた俺の理想の嫁さんッ!!!この際もう俺が愛人でいい!結婚しようッ!!!!!」


出会って三秒で爆音プロポーズした。

いやだって理想が目の前に現れたらそりゃそうなる。

それに既婚者つったって子供がこんなに大きいのだ、幸せな家庭を壊すというのとはちょっと違うしいいだろ。新しい関係の提案くらいはしても許される気がする!←


「…は?」


「おまっお前!?父上になんてことしてるんだ!?!?えぇいっとにかく離れろこの変態がァ!!」



魔王太子の小僧がどうにか剥がそうと引っ張ってくるが、正直勇者チート野郎である俺には羽で撫でられてるレベルで何ともない。


「はーなーれーろーぉおおおおっ!」


「うるせぇ!こっちはプロポーズの返答待ちなんだぞ、ちょっとは空気読め馬鹿野郎!」


「ふざけんな!お前の方が空気読めてねーだろっ!なんだ結婚って!俺は絶対に認めないからなっ」


「認めて貰わんで結構だ。そもそもお前幾つだ?どう見ても成人はしてるよな?よちよち赤ちゃんじゃないんだからいい加減親離れしろ。」


「赤ちゃんなわけあるか!もう三百年は生きてるしお前の方がよっぽど年下だろうが!」


「確かにそれはそう。俺だってまだ十九歳だし。」


「未成年っ!?」


「おう、でも大丈夫だ。あと半月で二十歳になるから。」


「なんっも大丈夫じゃねぇが!?つーか貴様と父上では千歳以上の年の差だぞ??????」


「ははっ!愛に歳の差なんて野暮なこと言うなぁ」


ロマンの欠片もない発言に呆れていたら、それまで静かにしていた魔王様がおもむろに口を開いた。



「愛、愛か。…ふむ、いいだろう。そなた儂と結婚するかね?」


「いいのか!ありがとうございま、あ、ってか今更だけど魔王様の嫁さんは?息子の母親はいないのか?」


「我が子に母はおらんよ。なんせ魔王になると己より強い相手としか子を成せんのでな。三百年前に人間国が異世界から召喚した勇者も今のお前のように対峙した瞬間に襲ってきてなぁ…それで息子が生まれたのだ。」


「えーっと、つまり?(ぽくぽくチーン)……なるほど理解した!ということは俺と魔王様の間にも子供が作れるってことでオッケー?」


「ああ、そうだ。」


結婚の承諾どころか子作りの許可までもらって大喜びだ。

だがその一方で魔王太子は呆然としていた。


「…………もう、わからん。訳がわからんし意味がわからん、ぅ…頭痛くなってきた、」


ふらりとよろけた魔王太子を受け止めたのは脳味噌エロ溶けパーティーガールズだ。瞬く間に拘束し担ぎ上げえっさほいさと拉致って行きおった。

いってらっしゃーい。搾り取られてスカスカになるまで解放されないだろうなぁ。…頑張れよ義息子!


さて。


「不束者ですがよろしくお願いします。」


と、改めてから魔王様を口説きました。やっぱり結婚の了承得たとはいえソコはね、紳士的に振る舞うしロマンチックがないと恋じゃないじゃん。





……数か月後……



「ほぎゃぁっ!」


愛らしい声で赤ちゃんが生まれた。

もちろん魔王様と勇者との子供だ。


え?早くねーかって?

そりゃ人間の子じゃねーからな。魔王の産んだ子なんだからソレはしょうがねーって。

むしろこんなに早く可愛い我が子に会えるなんて最高なんだが!



「おぉ~よちよち、いまマンマにちまちゅからねぇ」


産後も魔王としての執務に忙しい嫁さんの代わりに子育ては一手に引き受け日々幸せな悲鳴をあげる俺は勇者失格だろう。が、それでいいとおもう。

(ちなみに魔王の子だからというわけではなく、魔族だから赤ちゃんの頃から生肉を食すよ!)


魔王太子の兄も三百歳差の弟が可愛いらしくよく近くをウロウロしては構う隙を伺っている。

そしてそんな魔王太子に恋する勇者パーティーガールズも居残っているから魔王城は賑やかだ。意外にも真っ当に働いててあら健全。




案外、この結果こそ討伐するよりも誰も死なない完全無欠のハッピーエンドなんじゃねーかな。





END




















最後まで読んでいただきありがとうございました!




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