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73話 もう一つの運命

 ハチの巣状態の体に、上半分が綺麗にえぐられた“頭だったもの”が乗っているのを確認。


「頭部を兜ごと破壊するとか… 相変わらずとんでもない命中精度と威力だな」


 魔人の急所は人間と同じく脳か心臓。その1つが完全に消えていたのを確認し、勝利を確信する。張っていた緊張の糸が緩むようにその場であぐらをかいた。

 

そこへ今日のヒーローがやって来る。


「早いよ。もう少しで運命通りだったのに」

「運命…? ああ、そういう事。…なら、急いで正解だったみたいだね」

「だから不正解だよ」

「僕にとっては正解だ」


 2人は笑いながら拳を合わせた。

 余韻に浸った後、ジャックスがキョロキョロする。


「おじいさんと女の子は?」

「邪魔だったから離れてもらった」


 そう言って指差した先は遠くの林の方。木の間で蠢く人影を確認したジャックスは安堵する。


「よかったぁ。…君に時間稼ぎを任せて正解だったよ」

「途中まで不正解だったけどな」

「不正解…? いや、どう考えても正解でしょ。魔人相手に2人を守り切ったのだから。普通なら守り切れないよ? それにちゃっかり魔人を弱らせて動きを鈍くしてくれたしね。おかげで凄く狙い易かったよ」

「お役に立てたみたいで良かった」

「うん。…ところで体は大丈夫? 立てる?」

「さっき薬塗ったからそろそろ効き始めて動けるようになると思う」

「そっか。じゃあ、先に2人の所に行ってるね」

「ああ――」


 瞬間、ジャックスの体に穴が開いた。それも先程の魔人と同様、無数の穴が。体には石が食い込んでおり、穴が投石によって開けられたものだと気づく。それで攻撃者の予想がついた。

 レトーが振り返ると、そこには先程まで死体だったものが立っていた。頭部、上半身の穴、右腕の全てが再生された健全な姿で。

 

 オヌキスは単独狩りを常に楽勝でこなしている。反面、楽勝じゃない時も当然あった。その時に編み出したのが、今回使用した頭部偽装。自分の頭と同サイズの人間の頭部を用意し、その上半分を無くしたものを作る。それを鎧の隠しスペースに仕込んでおき、銃声が聞こえたのと同時に自分の頭は亀の様に鎧に引っ込め、代わりに兜をのっけた偽装頭部を上に出す。こうする事で、死を偽装。そして、不用意に近づき、隙だらけの瞬間を見計らって反撃するといった戦法だ。これにより、楽勝じゃない伏兵を含んだ対集団戦を何度も乗り切っている。

これに加えて一時的に身体能力と再生能力を増強する麻薬を使用している。右腕が完治したのはこの為だ。


「ジャックス…!」 急いで駆け寄り、薬で止血を開始する

「すま…い…ゆだ……た」

「しゃべるな。生き延びたきゃ、自分の意識を保つことに集中してろ」


 嘲笑しながら魔人が近づいてくる。


「…まだ生き延びる気でいるのか?」

「当たり前だろ? 少なくともこいつはここで死ぬ運命ではないからな」

「いや、終わりだよ。“貴様らを生かしておくと厄介だ”と私が判断したのだからな。今の貴様らの運命はすべて私次第で決まる。弱者はそのまま黙って強者に従ってろ」


「弱者は…従う……?」


 父親の戒めが描かれた右手の甲がズキズキと痛む。


(やれる事はやった。なら、これは”仕方がない”って事だよね?)


 自分に『仕方がない』を何度も言い聞かせて無理矢理納得させた。

 

 そして視線はジャックスへ。


 目の前で弱っていく彼を抱えた事で、昔の友人の最後の亡骸を抱えていた場面が重なり、脳内にフラッシュバックされる。


(あいつもこんな感じで死んだのかな。 …そういえば、ペンダントの中身は空だった。って事は、あいつは最後まで戦ったんだ。おそらく、他の皆も一緒。あの人達が最後まで何もしないままでいる姿は想像できない)


弱者が強者に従うのが運命なら、弱者が強者に抗うのも運命。

フラッシュバックによって大切な真理を思い出す。


「ははは… なら、こんな所で休んでる暇はねぇよなぁ」

(急に笑ってどうした…?)「いや、休んでいろ。永遠にな」


「やだね」


 途端にオヌキスの左足がサイコロ状に刻まれた。


「貴様、何をした…?」


「何って? 足掻いているだけですけど? …あっそうそう。これからちょっとだけ足掻き続けるからお相手よろしく。強者なら余裕でしょ?」


 続いて左腕もサイコロに。


「舐めるな」


オヌキスが気合を入れると左腕と左足がすぐに再生される。


「わぁー凄い凄い。余裕そうでよかったよ」


 そう言いながら、何かを手元から発射する。

 するとまたしても左足がサイコロ状に。

 

 今度のオヌキスは驚かなかった。

 ずっと彼の行動を観察していたからだ。


(網目状に糸を括りつけた石をとばしていたな。膨らみ始めたって事は膨張石だろう。それにすぐ、別の膨張石をぶつけて萎ませる事で、張っていた糸が一気に伸縮。糸は勢いをつけて飛び、私の左足を細切れにした。糸の強度といい、膨張石の利用方法といい、これもすぐにできるような芸当ではない。これも練習済みというわけか)


 レトーがこの糸飛ばし道具を今まで使わなかったのは、これがまだ試作段階であり、飛ぶ場所がうまくコントロールできなかったからだ。相手が動く的だとその欠点が大きく働き、当たらないのが予想できる。だが、そこは道具を使う者次第。レトーの様に敵を挑発しまくる事で、正常な思考を奪って動きを単調にし、狙いやすくする事が可能だ。


「なるほど、良い発想と良い道具だ。…しかし、狙うべき私の頭部と心臓には一度も当てられていないぞ? どうやら命中精度がいまいちのようだな」

「いや、狙いはばっちりだよ」

「減らず口を。そろそろ挑発には飽きてきた。仕留めに行くぞ」

「…いやー本当の事なんだけどなぁ」


 緩い顔のままえげつない道具を使い、オヌキスの四肢をバラバラにしていく。この勢いに若干押され、中距離を保って飛び道具を使って反撃する事を余儀なくされる。オヌキスはまんまと彼の足掻きに付き合わされる羽目になった。

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