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47話 善人とクズ①

 ブダシヤカ・ギルド館にて――


「ジャックス、お前にレトーの教育係を任せる」


 ドーベンさんにそう頼まれてから半年となる。彼は何というか…人見知りなのか殆ど会話をしてくれない。仕事の会話はするが、日常会話は一切しないという状態。意思疎通がほぼできないので始めはどうなる事かと思ったけど、仕事の方は難なくこなしている。

あと、彼の仕事の様子を観察して思ったのだが、彼が不愛想なのは我々職員(ドーベンさんを除く)にだけで、冒険者や依頼者に対しては愛想よく接している。なので、先程の人見知り解釈は間違いらしく、彼には何か別の意図がある様に窺えた。普通に考えれば、仕事仲間にも愛想よくしておいた方が、情報交換が円滑になって仕事もやり易くなるから仲良くする他ないのだが。

 

 こちらから色々と交流の場へ誘ってみるも尽く断られ、半年経っても彼とはまだ仕事以外の会話をした事が無い。だが、ここで諦めるわけにはいかない。ドーベンさんには恩があるので、あの人に頼まれた教育係をしっかりとこなさないと。そう自身に言い聞かせ、今日もまた彼に誘いを断られるのだった。


 何か彼の興味のありそうなネタを探ろうとドーベンさんに聞いてみても彼が僕と同じ歳という事以外教えてくれなかった。どこからどういう経緯でここに連れて来たのか不明だったがドーベンさんがわざわざここへ働かせる為に連れてきたので、ただ者ではない事だけは分かる。現に試験の成績は良かったみたいだし、実技ではカブリトンを武器として使ったと聞いた。そして、彼がわざわざ魔物を武器に使ったのは仁力が無いからだという。この時点で、ただ者でない事は確定した。

 仁力がなければ、魔物に有効な特殊武器・防具が使えないから戦闘に関わる職は選ぼうにも選べない。それなのにその資格があるという事は今まで相当苦労してきたに決まっている。その証拠に彼は毎日朝と夜にコソコソ出かけ、町外れの人気のない所で道具の試し撃ちや体力トレーニングをしている。中々追い込みが激しく僕でもついていけるか怪しかった。 

 自分と同じように毎日鍛錬する彼の姿を見ていると親近感がわくし、負けない様に頑張りたいと思える。何だかんだで僕は彼をライバルとして認識しているのだろう。できれば、ライバル同士、熱く鍛錬情報の交換をしたり、合同トレを行い所なんだけど、いつになる事やら。


なんて事を考えていると、クーア王国( ブダシヤカを含む複数の地域を収める王国の1つ。3000人以上が暮らす城下町があり、外周は外敵から守る為の高い壁で覆われている )への配達依頼代行に彼が行く事になった。ドーベンさんから教育係中は外回りの仕事では必ず彼に同行する様頼まれているので、彼が嫌な顔をするのを宥めつつ同行する。


早朝から出て、半日かけて到着。依頼を終えて帰ろうとした所、彼があまりにも興味津々で城下町の商店街を見ているものだから、少しだけ時間をかけて歩くことにした。そうしていると、慌てた様子の女性に声をかけられる。


「あなた、もしかして冒険者ですか?」

「はい、そうですけど…」

「どうか娘を…娘の捜索をお願いします…!」


 冒険者ギルドに依頼すれば済む事だが、わざわざ冒険者を探していたという事は断られたのだろう。町の規模的にギルドが抱える冒険者人数も多く、手は有り余っているはずなのだが、ブダシヤカの様に冒険者を厳選しておらず、職員の対応も雑であると噂に聞いた事がある。おそらくこの女性はそれらの要因が重なって断られたと推測する。

 目の充血とうっすらクマもできていて事の深刻さが伺えた。なんとかしてあげたいという気持ちが強くなった所で尋ねる。


「最後に娘さんをみたのはいつで、場所はどの辺か分かりますか?」

「分かりません…! 昨日は学校の遠足で町の北にある湖まで行ったらしいんですけど、そこで迷子になったらしくて… 今、引率の先生と夫が付近を探しているんです。泉の近くには魔物の住む森があるのですが、もしあの子がその森の中に入っていったとなったら……」


 泣き出す女性を宥めつつ、状況を整理。冒険者でない一般人が魔物と対峙するのは危険すぎる。全員が森へ入ったと仮定すると、娘さんだけでなく大人の方も保護対象になる。事は一刻を争う。


「あなたはここで待っていてください。必ず連れて帰りますから」


 女性の目をしっかり見ながら安心させる様に言う。変な気を起こして着いてこられると危険。そんな2次災害を防ぐ為だ。そのまま彼を連れてその場を後にした。

 向かう際中、彼が「幼い子が森で丸一日でしょ? 多分死んでますって。他の生きている人達回収したら帰りません?」とギルド職員とは思えないクズ発言をした。採用時、いくらドーベンさんのコネが働いたとはいえ、これでは性格に問題があり過ぎる。とういうか報告次第では即刻クビだ。

 湧き上がる怒りと共に僕が今まで抱いていた彼への好印象やら親近感は全て崩れ去った。


(君とはまともに話さなくて本当に良かったよ)


 そんな皮肉を込めて微笑みながら「まぁまぁ、仕事だから」と言って同行させた。膨れ上がった怒りを鎮めながら。

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