猫と虎と兎!
時間かかりました〜。読んでくれると嬉しいです!。
僕だ。
また始まった月曜日。
何をするかも予定は無く、ただ校舎へと向かう。
「おはよ〜」
「おはよう」
で、だが。昨日当たった旅行チケットは誰と行くかって話だ。流石に一応中身成人男性と中学生を一緒に連れて行く事はできない。
なので、七緒や葵、タマと行く事になった。タマには人間状態になってもらい。
ちなみにだが、向かう旅館はなんと少し前行った我が地元の近くだ。
みんなに良いかを聞いてみたが、大体がOKしてくれた。実に良かった。
そして今日は何の日かというと、ただの日だ。ほとんど何も無く、いつの間にか下校間近になっていた。
ただ淡々と過ごしている。
せめて言うならば、一限目と二限目には理科の実験で毒ガスが出たくらい。まぁよくある事だろう。実験だしな。
三限目には、本当に何も無く、ぼーっとしていたくらいだ。四限目でいつもの班に分かれて、普通に数学の授業を受けた。今回はかなり高度な事をしていて、大人の僕からするとかなり驚きだった。
ただ、昔から頑張ってたのもあって余裕で終えた。
その後、給食を食べ五限目・六限目として、一週間に一度の七限目の授業を受けている。
国語の文法の授業だが、もう終わりそうになっている。
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「キーンコーンカーンコーン」
チャイムがなり、せっせと家へ帰ろうとする人、学校に少し残り勉強をするつもりの人に分かれた。
家でやらないといけない事が多い僕は前者で、もう帰ろうとしていた。
「ちょっとええか。優里」
「はい?」
突然担任に呼び止められた。
この担任は風波玄三郎 という名前の男だ。みんなは、風波先生と呼ぶ。年齢は大体、僕の実年齢と同じぐらいだ。詳しくは知らないが。
まぁ年齢が近いだけあって話がとても合う。
子供の当時やっていた漫画や映画、洋楽なんかを凄くよく語る。
周りには、優里と風波先生の謎トークとも呼ばれていたりいなかったり。
まぁこういう風にかなり距離が近いこともあって、僕だけは風波玄三郎のことを玄センと言っている。気軽に話しかけれるのでとても良い先生だ。
ちなみに三十代でもかなり若い顔で、二十代前半と見間違われてもおかしくないような先生だ。
ところで、どうして僕に話しかけたのだろうか?
「どうしたんですか?」
「あ〜、な。ちょっと前から聞こう思ってたんけど、聞いてええんか悪いんか分からんな。・・・今聞いてまうわ。」
玄センが髪の後ろに手をやり、目を泳がせながきいた。
「お前、ほんまに中学生か?」
ギクッ。
バレたか?・・・
「いやちょっと変。ちょっとどころや無いかも知れんけど、いつも話とって、こいつ中学生か?って思ってな。どうなんや。変な質問やが答えて欲しいんや。」
言い訳を考えているが全く思いつかない。
それはそうだろう。なぜなら玄センの言っていることは、何一つとて間違っていないのだから。
でも、さすがにちょっと濁すか。
「そんな訳、ないですよ〜。何言ってるんですか〜。ただ好みが一昔前だっただけですよ!」
「ま、まぁそりゃそうだろうな・・・」
多分誤魔化せた・・・だろうか?
仕方ない祈るだけにしておこう。
「でもな、おかしいんだよな。体育の前の着替えで、皆んなと一緒に着替えするの断固拒否したり、一人称が僕だったり。まぁ一人称が僕の女子は最近いるらしいが。それに、話し方とか考え方とか、全くだれとも言い合ったりしない所とか。この行動を優里がやると、どうにも中学生に見えなくなるんや。もはや、女子かどうかも怪しく感じるな・・・。まるでな、自分の年齢帯の活発な男みたいな感じがすんな。昔から人見るめには自信あるぞ」
す、鋭すぎる!?
この人、本当にただの教師か?
確かに10年も子供みとったら、怪しく感じるかもだな。とりあえず、一旦にごして・・・
「何言っちゃってるんですか〜」
玄センの横腹を小突く。少し意地悪そうな顔をして玄センと目を合わせる。
「こんなことする、三十代男性。いませんよー」
上手く言い訳出来たと思っていた。
だが、また玄センが口を開きあることを言った。
「いや、いるぞ。ここに。自分や」
いる。どういうことや?
「自分な、生徒らを見ながら、どうすりゃ仲良くなるとか。どうすると気軽に話せるかとか考えて、優里みたいなったねん。だからこそなんや」
確かに思い返してみれば、凄く生徒と仲良くしてたし、それで治安も良い。よく考えればそうだ。
僕もそうやってここの人と仲良くなった筈だ。
玄センと僕は少し似ている。だからこそ、互いに解像度が高い。
とりあえず逃げるか!
「すみません先生、急用を思い出しました!また明日の朝に話しましょ〜!」
「え、あっあ"ぁぁぁ!」
「ふ〜。危なかったぁ!」
思い返せば思い返すほど、やばかった。
ほとんどバレていた。
勘が鋭く、観察眼がつよい。まるで、優しい虎のような。
まぁ逃げ切れたから、よしとしよう。
家へと直行し勢いよく扉を開ける。
「ただいま!」
荒い呼吸で、大きな声で言った。
そしたら、家に居たタマが元気な声で言った。
『おかえりなのじゃ!』
やっぱり可愛い。最近の生き甲斐だからな。
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理由がありタマに頼み事をした。妖術だから、タマはすぐに了承した。温泉旅行チケットにも関する。
荷物を片付けて、席に座りポケットからスマホを取り出し電話をした。一件の不在着信の通知を確認し、その相手に電話をかける。
「妹よ〜!どうした〜?」
その声はいつもの女子の声ではなく、しっかり男性の声で、最も聞き慣れている声。自分の声だった。
電話越しに返事が返ってきた。
「お兄ちゃん、返事が遅い!前返って来るって言ってたのに何してるの!で、なんなの?」
その声は、少しの怒りを含んだ元気な嬉しそうな声だった。
「最近ね、そっちに近いとこの温泉旅行のチケットが当たってな、行こうと思ってて。その時に、久しぶりに返って見たくて連絡したんだ」
「ふ〜ん、そうなんだ。まぁいつでも返って来て、そしたらお兄ちゃんが好きな私のオムライス作ってあげるから・・・」
「本当?!そりゃあ楽しみだなぁ」
そうして楽しい会話を続けた。
そう、電話の相手は妹だ。その中でも一番下の妹。名前は、猫田美花だ。高校生で、勉強を頑張っている時期だろう。
ある意味、僕もそうなのだが。
こいつは僕が高校に入った頃に産まれたが、物心ついた時から、僕に甘えてた。昔から「お兄ちゃん」と何度も何度も言われて、それを学校の友達に自慢してたくらいに可愛い妹だ。
ちなみにだが、僕が一番上で二十二の弟が1人、成人してすぐの妹が1人と4人兄弟だ。みんな頭がよくてスポーツも万能なんだが、僕はと言うと昔から・・・落ちこぼれなんだが、なんとか仕事を見つけれている。
そうすると突然、美花深刻そうな声色で話し始めた。到底、数秒前に楽しく話していたとは思えないほど。
「お兄ちゃん少し驚くかもだけど、どうしても話さないといけない事があるの」
「あぁ、なんだ?」
多少驚きながらも返事をした。
「あ、あのね。お母さんとお父さんの事なんだけどさ・・・」
少し緊張もしていそうな声だ。
「落ち着いて」
「うん」
少し緊張が解けたのか分からないが、話を続けた。
「お母さんとお父さん。若返ったの。」
あまりにも予想外すぎる話で驚いたが、僕にも関わりがあるかも知れないから落ち着いて返事をした。
「ごめん、その話詳しく」
「2人が若返ったんだけど、それに加えてさ、動物耳みたいなのも生えて、そして様子が変なの。危ないこととかは全くしないけど、2人らしくなくてさ・・・」
「そうか・・・」
妖術が関連する、と考えタマへと聞いた。
こういう事をする妖怪はいるのか。と。
『もう少し詳しくしたらわかるんじゃがな〜』
流石のタマでもこの情報だけで犯人妖怪の特定は少し難しそうだ。
「それに2人が時々、変なこと言ってるの。確か「玉兎様」ってさ。ちょっと怖くて・・・」
ギロッ
瞬間、タマは目を見開いた。まるで獲物を狩る目だった。
『今、玉兎と言ったな』
「うん。って、誰の声!?」
『そうか、ゆう一度電話を切れ。奴の力で精神が侵される。』
「いや、でも」
『切れと言っとるのじゃ!!!』
「はひぃ!!」
ピッ。
妹よごめんな。
一旦状況を理解しよう。
まず、僕の母親と父親の2人が若返って。その2人が玉兎様と言っていて、それを聞いたタマが怒った。
普通の人ならば微塵も理解出来ないであろう事だが、僕は少し分かる。僕も似た状況だからだ。きっと玉兎とは妖怪の名前だろう。それも、かなり悪い奴だ。きっと。なぜなら、普通のタマとは違う口調になっていた。あのタマですら動揺する様な妖怪と言う事だから。現に今、声が元に戻ってる。
聞かなければと思いタマに聞いた。
「玉兎ってなになの?」
語り始めようとする口は重く力強く、どこか哀しさを感じ様だった。
『奴は、悪神じゃ。悪へと染まり力をつけた妖怪。それ以上は言えんのじゃ』
少しの間、沈黙が続き段々とタマは不安そうな面持ちとなっていった。
僕はタマに無理をさせたく無い。
「大丈夫、落ち着いて。」
『突然ごめんのじゃ・・・』
ふと顔を上げたタマは切ない雰囲気を醸し出していた。
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火曜日。
一晩が経ち、朝となった。少し眩し過ぎるくらいの太陽が目に刺さる。
昨晩のことは・・・まだ詳しく話していない。
魚を頬張りながら笑顔でこちらを見ているタマは昨日とはまるで違かった。
『行ってらっしゃいなのじゃ』
「おはよう」
ふと隣から七緒の声がしたのは校門の前。
「おはよう」
靡く桜の葉は初夏を迎えようとしている。本来なら今、いる筈の無い場所。
一日が始まった。
朝吹く風は少し涼しく、どこか暑い。
昨日とはまるで違った雰囲気な教室には、言葉が溢れている。
「それじゃあ、朝のホームルーム始めるぞ〜」
扉をがらがらと開けた玄センが言った。
時は少し飛び昼休み。
呼び出しを食らった。玄セン直々にだ。
「なんで呼び出し食らったか分かってんよな。昨日話してる途中に逃げ出したやろ。流石に駄目だぞ。せめて言えない訳を言ってくれ。教師としては聞いておかなきゃいけないんやから」
やはりか、と思いつつしっかりと話を聞いた。
内容はほぼ昨日と同じなことだった。
まぁ、はぐらかそうとしてはいた。
だが最後の方で玄センが言った。
「動物の名が入った妖怪の事を知っているか?」
と。
「そいつらは何とな、大人を子供に変えたり女性を男性に変えたりその逆も然り。そう、タチが悪いだよ。で、だ。優里それじゃないか?その猫耳も証拠だ」
どうやら、この耳は見えていたらしい。
前、タマは特殊な人にしか見えないといっていた。
つまり、玄センは普通では無い。一体何だというのだろうか。
そして僕は納得した様な顔をした。
「分かりました・・・よく考えてみます」
「秘密の一つや二つ、あってもおかしくないぞ。だがそれで人に迷惑かけたり、生徒に変な事したら。そん時はな。許さねぇぞ」
少しの怒りを孕んだ声でそのことだけを言った。
正直、僕は思っていた。こんな事をして良いのかと。
トン、トン。
玄センが手に持った教材を整え教室へと向かった。
「玄センは一体何者なんだ?」
疑念は残るがどうしようもない。またいつかは玄センも素性がバレる。僕はただそれを獲物を見つめる猫の様に待っているしか無い。
「優里ちゃん、優里ちゃん!起きて!」
耳の近くで聞こえる花道沙織の声で目が覚める。
どうやら授業中に寝ていた様だ。
仕方ない。と割り切ってしまうしか無いだろう、昨日に限らず、今日も沢山の出来事があった。
「ありがとうね、沙織ちゃん」
「なんか優里ちゃん、いつもより元気ないよ。しっかりお家で休んでね。私との、や、約束だから」
まったく、この子は優しさの塊だな。
「しっかり休むね・・・」
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プツン。
「精神が侵される」そのセリフが何故か脳裏にこびりついたまま離れずにいる。そのまま眠りについた。
「僕は?・・・」
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そして今日は水曜日!
また今日も楽しみな学校だ。
「行ってきます!タマ!」
『行ってらっしゃいなのじゃ!』
ちょっと暑いくらいが心に響く。
「おはよう!」
「おはよう、ゆう」
るい君に挨拶をして、教室へと向かう。
玄センにも挨拶して教室へ入る。
「おはようさおりちゃん!」
「お、おはよう!ゆうりちゃん!」
ちょっと驚いた顔でこっちを向いている。
少し決意をした顔で僕に言った。
「今日はいつもの『ゆうり』ちゃんだね!」
ズキッ。
「あ、ありがとう!」
「最近のゆうりちゃんなんか変だったよ。な、なんかね、大人っぽいっていうか男の人っぽくもあった様な。それもそれで、か、可愛いと思うよ。優里ちゃん。」
「ありがとう(死)」
やっぱり、この子は天使だな。
さおりちゃんは可愛いすぎる。実際、僕が本当に中学生の時だったら、好きになってたかも位。
まぁ今は流石にない。普通に犯罪だから。
僕はここでこう言う風に楽しく話していると、よく思ってしまう。
もし僕が実はみんなと同じ中学生じゃ無いと言う事に気づいてしまったら。
いつか終わるかも知れないこの幸せを噛み締めようと思っていた。
これから、こういう日常系じゃないのも時々入れます!でも、あらすじの通り、メインは一応日常系恋愛なので安心してくださいね!
次話5月中旬投稿します