不穏な影と君の友達!
めっちゃ遅れました。すみません
急いで教室へ向かった。
友達の為にしなくちゃいけない事がある。
止めないと。羽羽亜を止めないと。
頼む、間に合ってくれ。何も起こってないでくれ。
衝突するかの様な勢いで教室に入った。
「お願い、もうやめて!」
「ん?どーした」
教室には、割れた花瓶と血の出た生徒。あと、数名の怖がる生徒。悲しそうなるいくん。
怒りの余り、拳を振ろうとする右腕をどうにか止める。どうしてこうなった?
「ぉ前が!」
声が出ない。それは当然だ。僕だって羽羽亜と同じだ。中学生になりすました男。数奇な人生を選んで、責務を放棄するクズ。
いや、でも。僕と羽羽亜はちがうだろ。僕は勝手になったんじゃ無いか。羽羽亜は望んでやったんだろう。そうぁ、そうだぁろう!僕は、僕は。
クラスの子が叫ぶ。
「助けて!」
………
………
………
はは。僕って自分勝手だな。自分自身を擁護する事に全力を注いで周りはそっちのけ。僕って、ちょっと前まで、こんなだったっけ?もっと社会人らしくて。周りを見れて。は?何言ってんだ。元から僕はそんなに出来て無かったろ。
でも。
今くらいは大人らしく、子供を守らないと。
「やめろ、手からその子を話せ!」
「なんだ?優里、なんの用だぁ?」
こいつ、本当に羽羽亜か?喋り方が全く違う。行動も言動も癖も。
まるで何かに取り憑かれた様子だ。
ん?取り憑かれた様子?
そうか。そういう事か。
こいつは、妖怪に取り憑かれているのか。
『少し違うが、ほぼ正解じゃ』
この声、タマ?
『そうじゃ!よく聞こえたな。其奴は玉兎に取り憑かれておる。こいつがこうなった詳しい仕組みは後話すのじゃ。とりあえず、今は我らでこやつをどうにかするのじゃ!』
どうやって。
『ゆう、忘れてたとは言わせないのじゃ。我は猫又なのじゃ。妖怪なのじゃ。妖怪同士倒せなかったら、あかんのじゃ。それにほら、ゆうには心強い奴がいるじゃろう。神とかいう奴じゃ。力でも借りてみるのじゃよ』
神から力を借りるのか。俺にそんな事。出来な…。 いや、するしか無い。
「タマ、どうすれば良いの?」
『もう待っとるじゃろ』
『呼べ』
「神ッ、ここに来てくれ。頼む!」
「なんじゃね、どうしたのだ?」
来た、本当に来た!
「こいつをどうにかしてくれ」頼む
「了解じゃぁ」
その時神が何をしたかは、分からない。ただ、羽羽亜本人に危害は与えなかったのだけは見えた。さも余裕そうに。
「ぐふぁ!」そう言ったのは中の妖怪。神が攻撃した時、妖怪がどこかへ消えた。これにて一件落着。
と行きたいところだが、まだ終わってない。
羽羽亜には聞くべき事がある。玉兎の事だ。契約したってことは色々話は聞いた筈だと思う。
神は言った。
「一応言うのじゃが、この事についての記憶はクラス全員消しておいたのじゃぞ」
倒した後は帰っていった。ポンと消えた、やっぱりあいつ神なんだな。と実感した。
気掛かりな点が有る。妖怪が消えたのに子供の体のままだ。そして、玉兎に関係する奴がここまで簡単に倒されるとは想像できない。だって、あの夜のタマは、玉兎の話を聞いた時のタマは激怒していた。あんなに優しいタマが。
そして今、増えた疑問が神という存在。これほどの力を有するのに、なんで玉兎の件を放置する?何が目的で僕に話しかけたのか。何故だ?
「タマ、帰ろう」
みんなが寝てる間に、一度家に帰って情報を整理しよう。勿論、羽羽亜も持っていく。呆気なく終わってしまったこの戦いに、ピリオドを打とう。中学生らしく。
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1時間後の学校。
この時には、もう2人は帰ってしまった。いや、正確に言えば3人か。神などとやらの力のお陰で皆には、この件に関する記憶は残っていなかった。
ただ一つ、皆の目が覚めるまでにするべき事はあった。勝手に逃げ出した3人の後始末。突如消えるのは余りにも不自然。その不自然をどう隠すか。その不自然をどう消すか。それは私のやるべき事だ。
「沙織ちゃん、今日も一緒に帰ろう!」
「うん、ゆうりちゃん!」
「留糸、今日の放課後遊ぼうぜ」
「ああ、そうしよう。羽羽亜」
ここには存在しない帰った筈の2人がそこに居る。
いつも通り。
陰に何か隠れている。私だ。
これをドアの隙間から密かに覗く不穏な影。僕だ。
「学校の安全を守るのは、僕の役目です」
不敵な笑みを浮かべ笑う。帽子を掴み、制服を整える。
僕の名は…
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一方その頃優里の家では、羽羽亜は目覚め、事情を聞く事となった。
「ここは…?」
羽羽亜は僕に問いかけた。きっと、誰だってそう思うだろうな。
「羽羽亜。僕はお前に話を聞きたい。玉兎について」
きっと、羽羽亜はこの事を言うのを躊躇する。だって、幼児化する何かしらの理由があっただろうから。その理由が良い事か、悪い事かも分からない。
羽羽亜が口を開く。だが、その雰囲気はおかしい。あの羽羽亜が、落ち着いている。わんぱく少年だったやつが。襟を直そうと手を首元に向かわせる。姿勢も綺麗になっている。まるで、社会人のような動作じゃないか。
じゃあ、いつもの羽羽亜は偽物だった?
流石に有り得ないだろう。妖術によって、以前の人格が書き換えられるなどは。
まぁ、今から言う事次第で分かるだろ。
「申し訳ないなですが、貴方は…?」
・・・
「なんだよその喋り方ァ!気色悪ぃ」
おっと取り乱した。
・・・僕のことを覚えてないのか?
「会って早々に気色悪いなどと。失礼ですよ!」
おかしい。
絶対に何かおかしい。
羽羽亜がこんな話し方なんて、有り得ないだろ。
いっつもわんぱくだった羽羽亜がだぞ。
「すみません。さっきから、パワーパワーと言ってますが。なんなのですか?」
羽羽亜が羽羽亜じゃない?!
自分自身の名前すら忘れてしまったのか。
「タマ!お願い。鏡を持ってきて」
いろいろと忘れている様だが・・・
さすがに自分の顔を見れば状況が分かるだろう。
「ほら、見てみろ」
鏡を出した。
鏡を見た羽羽亜はきょとんとしている
「誰…ですか?」
全てを忘れているのか・・・?
・・・そうなると何を聞いてもダメだな。
「逆にあなたは誰なんですか!」
まぁ、そうなるよな。突然、中学の女子に説教されてちゃ、怖いよな。
胸ぐらを掴んで言う。
「お前と同じクソ野郎だ」
妖怪に都合のいいよう改造された成人男性。
だけど、許せないんだよ。
『もういいじゃろ、返してまえ』
タマ・・・?何で?
タマの目的でも無いのか、玉兎は。
『こいつには記憶が残っていないのじゃ。玉兎と契約したその時から。だから意味が無いのじゃ』
いやでも、こいつは
「記憶が無くても!」
許したく無い。
『帰せと言っとるじゃろ!玉兎の匂いが少しでもつくのが嫌なのじゃ!』
・・・もう帰すしかないのか。
*****
結局帰らせた。
あの見た目のままな事は少し気がかりだが、きっと大丈夫だろう。
僕自身、怒りは収まった。羽羽亜の元の人は悪くないだろう。そう考え直したから。羽羽亜は明日からも来るのだろうか?いや来ない。だって羽羽亜自体もういないんだから。もうただの社会人しか残ってないんだ。るい君が心配だなぁ。羽羽亜といつも一緒だったから。
だが、もう数日で夏休みだ。きっと風邪だと思って誰も気に留めないだろう。明けた頃にはきっと、誰も覚えてない。
ところで、タマのあの異様なまでの怒りは何だったのだろうか。
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例の事件から数日。
気を一転し、久しぶりに学校へと向かった。
羽羽亜はタマ曰く、姿が姿だから、学校にも仕事にも行けてないらしい。少し不憫だな。
この数日間、気を落ち着かせる事と並行してこれからの計画を立てた。
玉兎について。
これについては前当たった温泉旅行券を使うという口実で生徒会長にバレないよう、僕の実家へと向かう。きっとそこに玉兎がいる筈。そしたら、タマと一緒にやれば倒せると思う。いざとなったら神の力を借りればいい。
同伴する人は、玄セン。許可してもらえたらだが。
生徒会長はなんか凄く嫌悪感が湧くから呼ばない。
他には呼べる人が居ない。
まぁこれだけ。
特別な計画はない。
そろそろ教室へと着く
久しぶりだなぁ、さおりちゃん元気してるかな。
るい君寂しがってないかなぁ。
「おはよう!」
わいわいと人の声が聞こえる教室の扉を勢いよく開ける。
・・・
教室が静まり返る。
そこにはいない筈の人がそこに居た。
「なんで居るんだ、羽羽亜・・・」
さおりちゃんの方を見る。そこには受け入れ難いものがあった。
さおりちゃんは口を開き
「どうして、ゆうりちゃんが2人もいるの・・?」
と言った
次回から玉兎編の始まりです。よかったらこれからもご覧ください!




