第11話 絡まる糸!
すみません。前話を直したので、前話の最後の部分だけ読み直して欲しいです。
「俺は花道 舞糸だ。生徒会長兼、沙織の兄!」
なんというか、騒がしいなぁ。会って数秒だぞおい・・・。
見た目でいえば、沙織ちゃんに似た整った顔立ち。だが、学帽をつけた着崩し状態。ほんとうに生徒会長かよ・・・。
何故か、学帽を大切そうに守っているし。何だこの人。
一体何の用だ?わざわざ生徒会長さんが自分のとこへ来て。全くわからん。
「コホン。え〜っと、要件を言い忘れていたな。俺は、生徒会役員で話し合った結果、お前と少し話が必要な様だ」
「僕そんな事しましたか?普通に暮らしている一人の男・・・女子中学生です。見た目も普通ですよね?なんで疑うんですか?それにあなたの妹とも仲良くしてますよ」
溜め息混じりに言ったのは申し訳ない。だが何をそこまで。中身は30歳の男だが、何も迷惑かけてない。
「まぁまぁ。そこまで畏まらないでくれ。とりあえず」
ん?なんだ後ろの方にいる筋肉。なんか見覚えが。
「こいつか?こいつはな、生徒会の役員の一人。2年の桝田力という奴だ。自称、ゴリラ組のヤンキー。別に組にも入ってない、ヤンキーと言うながらも実際のところヤンキーでもないな奴だから安心してくれ。年齢が近いと話しやすいかなと考えてね。どうだい!話を聞く気にはなったかい?」
へ〜。体育祭の時のヤンキーの名前、桝田力って言うのか。知らなかったな・・・
「返事はどうかな?」
でもあの時のヤンキーが生徒会か・・・なんか実感が湧かないな。
「まだかい?」
いやでも、だからこそのギャップで良いのか?
「ま★だ★か★い★?」
「あぁごめん忘れてた。話なら聞くよ」
「ま、まぁ良かった。で、何を話に来たかと言ったら玄センからの直々のお願いでな。学校内では、生徒会の監視下の中に合って欲しいとのことだ。理由はよく知らないが。これはお願いでは無く、生徒会からの、☆命令☆だ。背くことは出来ない。それだけだ」
くっ、あの玄センめ!何やってんだ!?こちとら何もしてないぞ!それで監視下に置くだと?無理に決まってるだろうよ!
「はい、分かりました・・・」
「よかった。感謝しよう」
仕方ない。こんな時に反発して何になる。それは長い人生の中で知ったんだ。
なんか悔しいな・・・
せめてだ、こいつの大切そうな学帽を取ってやろうか。
「それはそうとして、生徒会長さん。その帽子の下気になるんですけど・・・外してもらえませんかぁ?・・・」
「んっ?!この帽子か・・・えーと、うん!これはな大切な帽子だ。外せんぞ!・・・。」
やっぱりなんか隠してる。
だが、最近タマに妖術を習っている。だから僕は少しならつかえる。
なんで習ってるか?それは、近い内に玉兎と対面するから、その時のせめての保険だ。
動かずに、妖術を使う。風に意識を集中させて、それを舞糸に向けて吹かすだけだ。緊張すればそりゃあパフォーマンスは落ちる。
何かを触る様な感じるような感覚に浸り、風が吹いた。
少し風の音がして、土の匂いが混ざった様な匂いを感じた。
だが・・・
「バサっ。おっと危ない!見られちゃいそうになったね。そこまで気になるのか?まぁいつか分かる筈だ、それまで待ってもらおう!」
凄い反応速度で目が追いつかない。そんな速さで帽子を押さえた。
「それじゃあ、さようなら!」
周りをチラチラと見ながら校舎へと向かう速度は速かった。
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翌日
学校で沙織ちゃんに会った時に聞いてみた。
「沙織ちゃんのお兄ちゃんって生徒会長らしいね」
少しだけ、嫌そうな顔をして沙織が口を開いた。
「知ってるんだ・・・じゃあ、あの事は知ってるの?」
あの事とは何だ?ヤンキー引き連れてる事か?それとも、着崩しの事か?それとも時代に合ってない様な学帽の事か?いや、その中身の事か?
全くわからず聞き返した。
「沙織の言うあの事って何?」
沙織ちゃんは、ぱっと明るい表情になった。
「よかった・・・というか授業始まっちゃうよ!それも移動教室。ほら一緒に行こう!」
かなりの疑問は残っているが、友達に問い詰める程でもない。
隠している様だしあまり深くは聞かないでおこう。
あの人本人もいつか分かるっていってたし、それまで待っておくべきだな。
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端的に言うと、今僕は落胆している。
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下校の前、突然あの玄センに呼び出された。
正式名称は風波玄三郎。何とも和な名前だ。
と思いつつ、指定された場所へ向かう。
また面倒な話かなと考える。友達と一緒に帰ろうとしていたが、それが出来ずかなり悔しい。
「何の用ですか?」
場所に到着して、そこには玄センが見つからず、まず見つけたのは玄センの靴だった。急いでぬいだかの様な痕跡ですこし戦慄したが、まぁあの先生だし大丈夫だろう。
その上、何故かあの学帽もある。あの生徒会長の奴だ。あいつは妙に受け入れがたい。
入り口付近の椅子に座り机に肘を置き溜め息をつく。
突如ドアでガラガラっと音が鳴り、本能的に後ろを振り向く。
「げっ・・・」
「げっ・・・とはなんだい?ハァ。少し酷いなぁ。」
そこに居るのはあの生徒会長。
ここに学帽はある筈なのだが、何故か被ったままだ。二個も学帽があるのか?その中身はなんなんだ?
色々疑問は浮かぶが、今はそれを聞く時じゃない。
もっと聞くべき事があるだろう。
「玄センはどこにいますか?玄センに呼び出しくらって。だけど居なくて・・・」
「あぁ、玄センか?玄センならすぐ来る。話でもして時間を潰そうじゃないか」
「・・・はい」
まず最初に持ちかけられたのは、
「僕の妹と仲良くしてるらしいじゃないか」
と言う話だ。
「そうですね」
こうとでも答えておくしか無い。それ以上に何を言う?
「沙織、クラスで楽しそうにしてるか?」
「はい。いつもみんなと遊んでますよ」
「そうか、良かった」
沙織ちゃんがどうしたのだろう?
「この写真を見て欲しい」
突然、写真を一切れ渡された。
そこに映って居たのは沙織ちゃんだった。
陽が落ちて来た頃、沙織ちゃんが河原の水辺で何かの動物と遊んでいる写真だった。
悲壮感をどこか感じ取れるが、写真の中の沙織ちゃんの表情はとても笑顔だった。少し不思議な感覚がする写真だ。
普通によく撮れた写真だと思いつつ、何故見せた?と疑問になる。
そうすると、舞糸は口を開いた。
舞糸の表情は自信のある様な元気な顔ではあったが、少し苦しそうだ。
「この写真、見ての通り沙織の写真なんだ。なんというか普通の写真だろう?だが、俺にとっての宝物なんだ」
「なら、なんで僕にその宝物を見せたんですか?」
「そりぁ二人が友達だからだろう」
『友達だから』、か。
「あんたも初めて沙織と会った時思っただろう?この子凄く緊張してるなって。沙織はな、昔からそうだったんだ。小学校の事だ。学校で友達を作ろうとするが、既にクラスにはグループが出来てた。先生とは話したらしいが、ほとんどクラスの子とは話さなかったんだ。」
あの時思ったことは確かだったのか。
また口を開き始めた舞糸の顔は、どこか切なく誰かを想う様な顔だった。
「そんな時、家でペットを買い始めた。だいたい二年生頃の事だろうか。そのペットは凄く沙織に懐いてた。飼った直後からだ。だが、中学生になるかならないかくらいの時そいつは死んだ。病気だったらしい。沙織は沢山泣いたよ。おっと、。すまんな・・・。沙織の友達っていうからつい喋り過ぎた」
「すみません・・・。僕にも頑張ってる妹がいて、最近ペット飼い初めて。聞いたらちょっとうるっと来ちゃいました」
僕にも、妹がいるからわかる。いや、僕は兄だから分かる。凄く妹想いのいい兄だなと。
「沙織ちゃんの事、本当に大切に思ってるんですね」
「あぁ、ありがとうな!そう言われると照れくさいな」
今も受け入れ難い感じは拭えないが、良いところを見た。仲良くなるのは、まだ後でいいだろう。
そしてさっき見た写真の動物はそのペットか。写真のそのペットの場所だけ黒く塗られている。何のペットなんだ?
写真は返した。
僕も個人的に決意した。僕も妹と次会う時は楽しませてあげよう。
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「そろそろ玄センが来そうだ」
OKと反応した。だが、舞糸も風波先生のこと玄セン呼びか。とんだ偶然だ。まぁ玄センは愛されているという事だろう。
「すまん!遅れた」
「かなり遅いです!」
僕がそう言うと玄センはペコペコと頭を下げた。社会人として遅れるのはあまりよく無いな。それも中学生(舞糸)の前で。僕は普通に社会人やってたからいいが。
「今日、二人を呼んだ理由を今から説明する」
「はい・・・」
直前まで軽かった空気はどんと重くなり、玄センは言う。
「二人は知っているかもだが、若返りの術を使って悪事を働き、学校に通っている輩がいる」
そんな重要なこと。何故それを僕に話したか。理由は明確だろう。前一度、玄センに疑いをかけられて、そこで妖怪の術による事を話したからだ。勝手に大丈夫だと判断したのだろう。
ここで一つ疑問に浮かぶのが、「何故舞糸にそれを伝えたか」だ。
「・・・・・・」
何故急に黙り込む?って、今の口に出てた!なら、尚更何故黙るんだ?!あっ、呼び捨てしてしまったかか?
「あーうん。よく考えてみ、生徒会長やで。そりゃ知っとるもんだよ」
・・・確かに!そりゃそうか!
「優里。話を戻すが良いか?」
「はい・・・すみません」
「さっきの話の通り、この学校にそいつはいる。本来の年齢なら27歳と言ったところだろう。それが、子供の姿で。男子の姿になってるんだよな。まったく、良い年した男がが何してるんだよ」
最後の言葉、僕にも刺さる。
「グフォァ!」
「おい大丈夫か優里!」
「いや、心配いらないです・・・話を続けてください」
よく考えたら、僕も七緒も「良い年したおっさんが何してるんだよ」だな・・・自分を見直さないと。流石にそうだな。尚更、僕は中身おっさん外見女子だから。ガチで・・・うん。
「そしてだが、そいつは兎と鶴に似た特徴を持っている。兎は多分あの兎だろう。そして、鶴が何なのかが分からない」
兎と鶴?何故ここで兎と鶴が出てくるんだ?その二つになんの関連性があるんだ?そして、兎と言うならば玉兎とも関係があるのか?
「なんで、兎が出てくるんです?」
「優里知らなかったのか?そんな見た目して」
タマから聞いていない妖怪について、知る機会なんてなかなか無い。
全身全霊で聞きたい気持ちを伝えないと!
「お願いします、教えてください!」
「分かった。説明はする。だがこの騒ぎが落ち着いてからで良いか?」
知れるのならばなんでも良い。
「ところで、どうやってそいつを特定するんですか?」
「特定か?それならもう済んでる。そいつの名前は・・・」
その瞬間、僕は息を呑んだ。追い求めている情報に近づけるチャンスだと思い。直前。僕は喜びが満ちた。やっと母と父を助けれる情報を手に入れれる。かもしれないと。
だが聞いた途端。何とも言えない感情になった。
端的に言うなら、今僕は落胆している。
その名は。
「そいつの名は、羽羽亜だ。親の気が知れねぇ様なキラキラネームの奴だ。」
そいつは、羽羽亜だったのだ。
これまで、みんなと友達やってた羽羽亜が?聞いた途端そう考えた。
どんな悪事を働いた?いったい何故?そんな疑問が頭をよぎる。
何故僕は落胆している?新しく良い友達ができたと考えてた。沙織ちゃんにも、良い友達として。るい君とも良い男友達だった。スピードとなんてまるで兄弟のよう。
良い奴だと思っていた。羽羽亜が成人男性で、それも悪事を働くなど考えれなかったからだ。
ならなぜ、親近感が湧かなかった?似た年なのに。
なぜ、意思疎通が出来なかった?
どうして、嫌悪感が湧かなかった?
羽羽亜も僕みたいに平穏にしてればよかったのに。
「俺にその件を任せてください!羽羽亜と言う名を聞いた事があるんです。そう、沙織から!俺は放っておけないです。自分自身の妹が危険に晒されているんですから。だから・・・だから!俺がやります!」
「僕も行きます。大切な親友がかかってるんで」
正直今のところは、会ってすぐだし、全く好いてもない。今、舞糸とタッグを組むのは気分が上がら無いが、親友がかかってるなんて動かない訳がない。
「今回限りの二人組です」
「今回限りってのは変だけど、組もうぜ!」
親友を助ける作戦の始まりだ。
羽羽亜は今何をしている?
どうせ家に着いて、遊び呆けているんだろうなぁ。
「ところでたが、もう下校時間になった。二人共帰ってね・・・」
「元はといえば玄セン遅れたせいでしょうがー!」
惜しいが、もう時間になった。
「それでは、さようなら!」
会う時の挨拶、離れる時の挨拶を元気良くする。これは、学生で慣れて、社会でも大切な事だ。
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家に帰ったら、また別の計画を進めないと行けない。
「どうしようタマ〜!」
『どうしたのじゃ?』
こう話しかけたのは良いが、あまりタマに兎の話をするのは良くないだろうから、話を変えた。
「ちょっと前の玉兎の話さ、いつ行くべきだと思う?」
『その話か・・・。なるべく長く滞在できる様にしたいにゃ。だが、ゆうは長い休み無さそうなのじゃよな。』
「そうだよね〜。あ!学生って言ったら夏休みがあるじゃん!」
忘れていた。
僕は今、中学生なんだ!
嬉しさと共に違和感も付き纏うが、気にしない方がいい。
という事で、夏休みに玉兎の件を片付ける事が決定した。
今は、じめじめと暑く紫陽花がさく季節。
それまで後一ヶ月程と言ったところだろうか。
それまでに羽羽亜の件も片付ける必要がある。だが羽羽亜の件では、兎が関わってくる。ある意味、玉兎の件のヒントになるかも知れない。
社会人らしく計画的に進めて行くべきだ。焦らずに行こう。
『さっきから何考えておるんじゃ?』
「玉兎の所、僕の地元へ向かうのは、7月から8月の間の夏休みに行く。それで大丈夫だと思う?」
『良いと思うのじゃ』
その後はさっと風呂を上がり、寝た。明日からまた忙しくなりそうで仕方ない。
「おやすみタマ」
『おやすみなのじゃ!』
深く深く、眠りについた。
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夢の底で、ある昔の記憶が蘇る。
あの日親に秘密で、山へと向かった日・・・
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「はっ?!もう朝か」
眠りから覚めると。懐かしい気分となった。
今日は夢を見なかった様だ。
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梅雨も明け、カラカラとした暑い夏がやってきた。
まだ羽羽亜に動きは無くまだ調査中だ。
朝から図書館で玄センと羽羽亜について話した。
約一から二週間かけて計画は考えついた。予備も備えた。
これでもう完璧だ。
「ズドン!!!」
突然、教室から大きな音が鳴った。
「なんだ今の音?!」
少しばかりじゃ無いくらい驚いた。
僕は教室から走りでて教室へ向かった。友達や親友がかかっていると感じた。
一人残され玄センは目を大きく見開き、耳をすましながら呟いた。
「もう、蝉が鳴く季節になったか」
その時には僕は図書館を出ていた。
その言葉を僕は聞いていない。
文字数的には最多の話です・・・。まだまだ書くのが下手ですが読んでもらえると嬉しいです。
最近の話中二病見たいかも知れませんが、すみません。
私、その年齢帯なんで・・・
次話も一ヶ月以内に出します