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01 プロローグ

掲示板回がやってみたくて書いた話。

よくある展開に関しては匂わせのみなので脳内補完していただければ。

完結済ハイファンタジーランキング日間3位、週間4位でした、ありがとうございます。

 エルンスト伯爵家といえば百年ぶりに今代の聖女ユーフェミアを輩出したとして話題になった高位貴族であると認知されている。そして伯爵家の長女ユーフェミア・エルンストは王立学園を満点の成績で入学し卒業したとして文句なしに当代随一の才女でもある。伯爵位にしては過分ともいえる広大な領地を有しているとはいえ、それ以外に目立った特徴のない古いだけの家柄。

 そんなエルンスト伯爵家であるが、実はひとつの秘密を抱えている闇の名家でもある。

 およそ数百年の昔に王家と伯爵家の間で取り交わされた盟約はすなわち『聖女代行』。不信心の結果として生まれなくなってしまった聖女の代わりに聖女の代役を引き受けることになったのは、当時のエルンスト伯爵が世界最高の魔術師であったからだと記録されている。

 古エルンスト伯は長女ベアトリーチェの8歳の加護判定の儀において王命により司祭の口を封じ、娘に聖女の加護が与えられたと宣言した。聖女の不在は王家にとっても教会にとっても大問題であったため、教会上層部とも共謀しての捏造であった。

 古エルンスト伯は娘の聖女修行に随行して教会に寝泊まりし娘の才能を延ばしていったと言われているが、実際のところは娘と息を合わせて聖女の奇跡を演出するための特訓であった。光魔法と治癒魔法を併用することによって娘がさも奇跡を起こした風に見えるよう特訓を重ね、娘の聖女お披露目の際には実際に重病人を癒して見せることに成功した。

 これは古エルンスト伯が魔法で重病人すら癒してしまう破格の天才であったこと、当のベアトリーチェがパパと一緒に魔法を使うことを楽しんでいたこと、そしてなにより王家と教会の総力をあげての演出だったことで、民衆の前で行われた聖女お披露目は大成功に終わり、民衆は聖女万歳と国家万歳を口々に叫んで大喝采を送った。

 不信心の結果として神から聖女を取り上げられて数十年、ふたたび神の奇跡を目にした民衆は涙を流して神に感謝を捧げたという。

 それが終わりの始まりであると知らずに。


 古エルンスト伯は晩年に差し掛かるまで魔法の真髄を極めんと研究を行い、ついには前人未踏の領域である多重魔法の実践的指導法を編み出した。これは秘伝の完全秘匿という条件で王家が永久に伯爵家より提供されるものとして魔法契約が行われ、伯爵家は教会の聖女教育顧問という役職とともに広大な領地を与えられた。王家と教会と伯爵家が安泰である限り、王国において聖女は神からの下賜でなく人の手によって生み出される装置となった。

 ベアトリーチェも天才の娘というだけでなく父親譲りの才能と熱意で聖女の代役を生涯に渡ってこなした。後進の教育にも熱心で、新たに各領地から選出され送り出されてきた聖女候補達に魔法と聖女の心構えを指導し、最終的に才能と覚悟ありと判断された次代聖女に全ての秘密を打ち明けて聖女代行の役目を譲った。

 己に神授の才などないと理解していた次代聖女もこれを納得の上で伯爵家のサポートを受け入れ、自らの献身的な働きと国家ぐるみの演出によって聖女の恩恵を民衆に知らしめ、それ以降の世代においても同様に大切な役目として聖女代行の伝統は秘密裏に受け継がれていった。

 そしていつの世も人とは愚かであるわけで、数百年という歳月の中でエルンスト伯爵家の役割は次第に理解されなくなっていく。特に王位を譲り受ける前の王子王女達には聖女が『代行』であることも伏せられ、王位の継承と共に国家の闇として歴代の王と王妃、宰相や一部の高位貴族と教会上層部のみの秘密とされていた。

 時代は現代に移り今代の聖女はエルンスト伯爵家の長女ユーフェミアが指名されることとなった。同世代の才能の不足により有望な魔力を持つ聖女候補が見つからなかった場合にはこうしてエルンスト伯爵家の女子が聖女に指名されることは歴史上珍しいことではなかった。

 そして事態は起こるべくして起きてしまう。

 「ユーフェミア・エルンスト!貴様との婚約を破棄する!」

 王立学園の卒業セレモニーの終盤となる大夜会の場、制服から正装へと着替え名実ともに大人の仲間入りを認められた卒業生達の真ん中で、王太子リチャードが高らかに宣言した。

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