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ショートショート6月〜5回目

美味すぎるりんご

作者: たかさば

 いつものようにスーパーに買い物に出かけた私は、ふと…レジ横のお買い得コーナーに並んでいる、袋入りのなにかに目が留まった。

 萎れた水菜にホウレンソウ、キャベツなんかの横に並ぶ、赤い果物。


 ……このりんご、めっちゃ安い。

 なんと、二個で100円。

 一個50円とか、破格だ。


 ……だが。


 やけに袋がクシャクシャで、見目がよろしくない。

 ぶつけた跡があるし、へこんでいる。

 変色してるところがあるし、なんか皮が汚い。


 まあ、すぐに食べるし…悪いとこを取ったら、そこそこ食べられるでしょ。

 かごの中にお値打ち品のりんごを入れ、清算を済ませ、スーパーをあとにした。



 夕食後、冷やしておいたリンゴをデザートに出そうとキッチンに向かった。


 りんごを袋から出すと、甘くて爽やかな香りが広がった。

 りんご自体はわりと重みもあって、まさに今が食べごろといった感じだ。


 傷んだリンゴを水で洗うと、皮の一部がぺろりと剥がれて…茶色い果肉が出てきたが、気にしない。

 わりと深いところまで傷んでいそうだけど、悪いところは取っちゃえばなんてことはなさそうだった。

 私はりんごの皮も好きなので、極力余分な皮をむかないように切り分けていく。

 多少変色している部分はあるものの、切った感触はおいしいりんごそのものだ。


 悪いところを取ると、りんごは1.5個分くらいの量になってしまった。

 とはいえもともと100円で買ったのだから、どう考えてもお買い得ではあったな…そんなことを思いながら、カットした切れ端をつまみ食いして、驚いた。


 めちゃめちゃ甘くて、軟らかくて、酸っぱくなくて、香りが強くて…とにかく、美味いのである。


 今までに食べたことがないような、濃厚で豊潤で、歯触りの良い、のど越しが素晴らしい、極上のりんご。

 りんごってこんなに美味しかったんだと目から鱗がボロンボロンと落ちそうな…りんごの味に関する常識が塗り替えられるような衝撃があった。


 家族みんなで、りんごの美味さを心行くまで堪能し、大満足で食事を終え。


 またおいしいりんごが食べたいと願う家族のために、翌日、一個298円のりんごを買ってきたのだが。


 酸っぱくて、甘味が薄くて、歯ごたえがあり過ぎて…、正直、美味いという感想が出なかった。

 別の店舗でりんごを買ってみても、どれもこれも満足の出来ない結果に終わってしまった。


 ……あのりんごは、もしかしたら幻だったのかも、知れない。


 そんな事を思いつつ、私は今日も果物売り場をチェックするのだった。



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