表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/33

思い出その6 私はこの時が一番楽しかったよ♪

「ママぁー♪ ママぁー♪」

「はいはーい、ママでちゅよー♪」

「ばぶー♪」

 ガラガラガラガラガラガラガラガラ……♪

 よだれかけとおしゃぶりをした一花ちゃんのことを、私がウサギがプリントされたピンク色のガラガラであやしてあげる。

 まさか一花ちゃんにこういう甘えん坊さんな一面があるなんて思わなかった。

 私は一花ちゃんから「私の事を赤ちゃんみたいにたくさん甘やかして、ママみたいに接してほしい」なんてお願いされた。

 いわゆる赤ちゃんプレイというものらしい。

 最初は、一花ちゃんにそんなお願いされて驚いた。

 でも、いざ始めてみたらこれまで聞いたことがないような、甘えん坊さんな声で私に甘えてくれるのがうれしくて――。

 私も一花ちゃんのママをするのが楽しくなってきた。

 私が赤ちゃんの時のおもちゃをおばあちゃんが大事に保管してくれたので、すぐに赤ちゃんごっこをしてあげることができた。

「ママぁー♪ いちかちゃん、プリンたべたいのー♪ うーうー♪」

「はいはーい、プリンでちゅよー♪」

 私はスプーンでプリンをすくいとり、そして一花ちゃんに食べさせてあげる。

 一花ちゃんは頬を赤くしながらそれをおいしそうにもぐもぐと食べている。

 そんな一花ちゃんがとても愛おしくなる。

「はーい、よくもぐもぐできましたでちゅねー♪」

「いちかちゃん、えらいえらいでちゅよー♪」

「ママー、ばぶー♪ いちか、ママのことだいちゅきー♪」

「ママもいちかちゃんのことだいちゅきー♪」

 楽しい♪

 嬉しい♪

 幸せ♪

 一花ちゃんは、両親からのプレッシャーと勉強疲れ、学校での優等生の振る舞いを期待され、そうしたストレスで精神的に限界だったらしい。

 後にも先にも、こんなふうに一花ちゃんが甘えてくれたのは結局この一度だけだった。

 あくまでもこれはおままごと。

 ごっこ遊びでしかなくて、一花ちゃんにとってはストレス発散のための遊びというのはわかっている。

 それでも、一花ちゃんが私にしか見せてくれない姿を見せてくれたのが嬉しかった。

 こんなふうに私にたくさん甘えてくれるのが嬉しかった。

 んなに可愛い声で私に「大好き」って言ってくれるのたまらなく嬉しかった。

 私の心は一花ちゃんの幸せな気持ちでいっぱいになった。

(この時間がいつまでも続けばいいのになぁー)

 二人で遊んで、二人で声のお芝居をして。

 そして一花ちゃんが望むなら、赤ちゃんごっこだってしてあげて。

 こんな幸せな時間が、永遠に続けばいいのに……。

「うーうー! うーうー! ママぁー! ママぁー!」

「あっ、はいはーい♪いちかちゃん、どうしましたでちゅかぁー?」

「ぶぅー、ママがいちかにかまってくれないのぉー♪」

 私が一瞬ぼーっとしてたせいだろう、一花ちゃんがぐずってしまった。

 私は一花ちゃんに笑いかける。

「そんなことないでちゅよー♪ ママはいちかちゃんのことだいちゅきでちゅよー♪」

「うーうー! うーうー! ママー! ママぁー! よちよちちてー♪」

「はーい、いちかちゃーん♪ よちよちでちゅよー♪ よちよーち♪」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ