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4-3 一花ちゃん、私に内緒で他の女の子と話すんだ?

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「助けて、七緒ちゃん!」

「やだ、こんなの、私、やだよおぉぉぉぉぉぉ!」

「蓼原なんかに、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 寒い。

 辺りは真っ暗な闇で、なにも見えない。

 後頭部が割れたように痛い。

 いや、もはや痛いなんて次元じゃなくて、もうあと数秒足らずで"私"の命は終わりを迎えそうだった。

 なぜそう感じているのか自分でもよく分からないが、まるで全身が砕けた石像のようだと感じた。

「ハルカ! ハルカ! ハルカぁ!」

 そして目の前に誰かが現れて、"私"に一心不乱になって呼びかけている。

「いやだ! なんで飛び降りなんかするのおおぉぉぉ!? いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 目が覚めると、朝。

 私はとっさに後頭部を触ってみた。

 しかしやはり、私の身体はどこも怪我なんかしていない。

「ま、まさか、またなの?」

 再びすさまじい寒気を覚えた。


 私が学校にたどり着くと、教室には既に仁美と京子がいておしゃべりをしていた。

 そして京子が気付いて私に手を振ってくる。

「おーす、一花ー」

「一花ちゃん、おはよう♪」

「う、うん。おはよう」

 二人に挨拶をし返すと、京子がそのまま口を開いた。

「あのさー、睦月だけどさー」

 ドキッとする。

 そうだ、何一つ考えていなかったが、結局私は睦月に会えてない。

 この二人にもその話をすべきだろうか?

「なんか親の都合でしばらく親戚のうちに行くことになったらしいじゃん」

 え?

 京子の話に、私はきょとんとしてしまった。

「な、なにそれ」

「え? 一花知らないの? 聞いてない?」

「う、ううん。知らないけど」

「まぁ私も良く知らないんだけど、とにかく親の都合で急に出かけたって。それで連絡が遅れたとか聞いたよ。ね、仁美」

「うん、グループチャットで回ってきたね」

「そ、そうなの」

 ごく自然とふたりはそんな話をしている。

 だが昨日の睦月の家での異常な光景を見た私としては、そんな話は信じられない。

 もちろん、私が見たのはただの夢だ。

 だが私には、水野睦月の"最期"が、なにか不可解な力で隠蔽されているようにしか感じられなかった。

 もしも仁美が妖魔で、これがみくりの話していた「妖魔の呪い」なのだとしたら?

(やっぱり、そういうことなの?)

「一花ちゃん、大丈夫?」

「え? えっと、なにが?」

「一花ちゃん、なんだかつらそうな顔してる」

 そういう仁美の眼差しは、私の心を見透かそうとしているように感じられた。

「そういえば、しばらくパパもママもお仕事の都合でいないんだよね? もしかしてお家で一人きりなの、寂しい?」

「まぁそうね。私の家、結構広いから、なんか一人でいると寂しくなっちゃって」

 私は適当に話を合わせる。

「そうなんだ。でも大丈夫。一花ちゃんは寂しくないよ。私が一緒にいて上げるからね♪」


「蓼原」


 私たちはぎょっとして、声の主の方を見る。

 綾瀬七緒だった。

 七緒はものすごい形相で仁美を見ている。

「アンタだ、アンタがやったんだ!」

「やったって、何が?」

「アンタだろ! 睦月も、ハルカも、アンタが手にかけたんでしょ! 今度は私!? 私の命も奪うつもりなんでしょ!? 蓼原! あんだが! あんたがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 七緒は半狂乱になって仁美につかみかかる。

「ちょっと、七緒ちゃん!」

「七緒、やめなよ!」

 仁美につかみかかった七緒を、私と京子の二人がかりで制止する。

「睦月もハルカも見ているんだ! アンタが二人をつけていたのを! どうせ昔の事でも根に持ってるんでしょ!? アンタなんかに命を奪われてたまるか! 私は、絶対――――ッ!」

「――――ッ!」

 七緒の言葉に、私は眼を見開く。

「ちょっと七緒、なに言ってるんだよ、睦月は親戚の家に出かけてるだけだろ?」

「そんなんじゃない! ぜんぶこいつが――」

「七緒ちゃん、やめて!」

「一花、あんたまで! そうやって仁美の事ばかりかばって! 私は、私は――!」

「七緒ちゃん」

 私は七緒を仁美から離しつつ、彼女に耳打ちする。

「あなたの事は、私が助ける。あとでメッセージするから、だから今は耐えて」

「………………………………」

 七緒はしばらく物凄い目でこちらを見ていたが、そのままその場を後にした。

「七緒のやつ急にどうしたんだ?」

 京子は困惑した表情で、頭をバリバリと掻く。

「仁美、気にしちゃダメだからなー」

「うん、私は大丈夫だよ」

 仁美は京子に笑顔を向け、そして七緒が立ち去ったその先を冷たい眼差しで見つめていた。


 私は「先生から用事を頼まれた」と嘘をついて、教会に一人で来ていた。

 しばらくそうして待っていると、教会の扉があいた。

「一花……」

「うん」

 七緒がやってきた。

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