第64話 人魚
今日は舞がコスプレしてサービスしてくれる日〜。
ああ、もう興奮しちゃってるよ。何のコスプレで今日はイチャイチャできるんだろう。
く〜、待ちきれないよ〜。
「お待たせ〜」
「ん?」
声はするが、まだ姿は見えない。
何かを引きずっているような音だけする。
「どうしたんだ、舞? お、おおっ!」
廊下には美しい人魚がいた。
「ふふ、どう? 今日のコスプレは人魚よ」
人魚のコスプレをした舞が廊下を這っていた。
国民的アイドルのマーメイドだ〜!
「すごいな、本物の人魚みたいだよ。でも、地上を移動するのは時間がかかるみたいだな」
「そうなのよね」
「よし、俺にまかせとけ」
俺は人魚をお姫様抱っこする。
「ふふ、ありがと」
「どういたしまして」
ソファーに人魚を運んだ。
「う〜ん、いいね。なんて美しい人魚なんだ」
俺はソファーの周りを歩いて人魚を眺める。
「今日は人魚の舞とイチャイチャできるんだな」
「そうよ。公介は人魚ハンターになるのよ」
「何? その仕事」
「人魚を捕まえて、売る人」
「悪いやつじゃん、人魚の敵じゃん、イチャイチャできないじゃん」
「そこは公介がアドリブでイチャイチャする方向に持っていって。じゃあ、スタート!」
「わ、わかった」
舞が日光浴をする人魚の演技をする。人魚って日光浴するのかな?
「いたぞ! 人魚だ〜!」
「ええっ!」
舞が床を這って逃げようとするが、遅いのですぐに捕まえる。
「へへへっ、地上で人魚を捕まえるのは簡単だな」
「ああ、許してください」
「悪いが、そうはいかない」
俺は舞をまたお姫様抱っこする。
「お願いします。どうか、海に逃してください」
「もう黙ってな」
「うう……そんな」
しくしく泣き始めた人魚を運ぶ。
俺は寝室のベッドに人魚をそっと寝かせた。
「さあ、海に帰りな」
「あ、あの……どうして?」
「ふっ……あんたが綺麗すぎるからさ」
「ええっ……それって」
「あんたに惚れちまったってことさ」
「っ!」
「さあ、早く行きな。人魚を狙っているのは俺だけじゃないんだ」
「待ってください。命の恩人であるあなたにお礼をさせてください」
「そんなもんいらねーよ」
「いいえ、私を……私をもらってください!」
よし! イチャイチャする方向に持っていけたぞ!
「でも、人魚とどうやって愛し合うんだ? その、下半身が魚じゃあな……」
「この下半身は……愛し合う時だけ、人間の足に変身できるんです」
「そ、そうなんですか……人魚の足ってけっこう便利なんですね」
「さあ、こちらに来てください……」
「あ、ああ、わかった……」
人魚になった国民的アイドルと、愛し合った……。
愛し合った後、一緒にお風呂で。
舞は再び人魚になってお風呂に入っていた。
「それ気に入ってるな、舞」
「ふふ、これで広い海を泳いでみたいわ。そうだ、人魚が主人公のミュージックビデオを作ってみようかしら」
「ははっ、それはいいアイデアだ」




