第6話 ファーストキス
テレビのトーク番組で、芸能人たちがファーストキスの話をしていた。
俺のファーストキスの相手は、もちろん舞だ。
だけど子供の頃からキスしまくっていたから、どれがファーストキスか覚えていない。
映画やドラマでキスシーンがあると、二人で真似してキスしていた。
中学生くらいになると、無邪気な子供のキスから、男と女のキスになっていった。
甘いキスに夢中になり、気づいたら3時間たっていたこともあった。
高校生になると、さらに濃厚な大人のキスになる。
お互いに唾を飲ませあったり、いろんなフルーツを口移しで食べさせあったり、ちょっと変態っぽいキスも楽しんだ。
「ただいま〜」
「あ、舞! おかえり〜」
帰ってきた舞に可愛がってもらう俺……あ〜、幸せ〜。
「ほーらほら、気持ちいい?」
「ああ〜、気持ちいいよ、舞」
「ふふっ、可愛いわ、公介」
「はふう……あ、そうだ、さっきテレビでファーストキスの話をしていたんだけどさ、舞は俺たちのファーストキスって覚えてる?」
「う〜ん、覚えてないわ。気づいたらキスするのが当たり前になっていたもの」
「やっぱりそうだよな」
「そうだ! それなら今からファーストキスをしましょう!」
「え、どういうこと?」
「付き合いたての恋人って設定で、キスをするの」
「なるほど、ファーストキスごっこだな」
「そういうこと。ファーストキスは公介がリードしてくれる?」
「わかった。まかせてくれ」
舞とファーストキスごっこをすることになった。
遊園地でデートという設定だ。
「公介さん。今日はデートに誘ってくれてありがとうございました。とっても楽しかったです」
「あ、ああ……喜んでもらえてよかったよ、舞……ちゃん」
「あ、私、最後に観覧車に乗りたいです」
「わかった。行こう」
二人でソファーに並んで座る。
「うわ〜、夜景が綺麗ですね」
「そうだね……」
夜の観覧車か、ロマンチックなシチュエーションだな。これは、ファーストキスのチャンスなんじゃないか?
「ねえ、舞ちゃん」
「なんですか?」
俺は舞の肩を抱き寄せる。
「あっ……」
「舞ちゃん……キスしていい?」
「えっと、その、急に言われても、私……っ」
「いやかな?」
「いやじゃ……ないです」
「ほ、本当に! いいの?」
「はい……」
舞がこちらを向き、そっと目を閉じる。
うわ〜、なんか本当にファーストキスするみたいで、めちゃくちゃ緊張してきた。
「それじゃ、いくよ……」
舞に優しくキスをする。
「ん……」
唇を離して見つめ合う。
「嬉しい……公介さん」
「ま、舞ちゃん……もう一回、いい?」
「え……は、はい、どうぞ」
「ありがとう、チュッ」
「んんっ……」
興奮した俺は、舞を強く抱きしめて、深いキスをしてしまう。
「んむっ……ぷはっ、ダ、ダメです、私、初めてなのに、こんな激しいキスをされたら……っ」
「ご、ごめん……俺、もう止まれないよっ!」
「いやっ、服を脱がさないで、ダメです、初めてなのに、観覧車の中でだなんて……恥ずかしいっ」
「大丈夫だよ……この観覧車は一周がすご〜く長いんだ」
国民的アイドルと、ファーストキスごっこを楽しんだ……。