第57話 足の小指
「ただいま〜」
おおっ、舞が帰ってきた!
俺は玄関に向かって走り出す。
「痛っ!」
家具に足の小指をぶつけてしまった。
「ぐうう〜……」
痛みにのたうち回る俺。
どうして俺はこんなに広い家でわざわざ足の小指ぶつけるんだ。自分が情けない……。
「公介、どうしたの? 大丈夫?」
舞が心配して駆け寄ってくる。
「大丈夫、ちょっと足の小指ぶつけただけだから……」
「もう、私が帰ってきたからって、慌てて走ってこなくてもいいのよ」
俺は痛みに耐えながら椅子に座る。
「だって……舞が帰ってくるとテンション上がっちゃって。舞の顔も早く見たいし」
「もう、本当にワンちゃんみたいになってきたわね。でも、それもこれも公介に寂しい思いをさせている私のせいね」
「いや、舞のせいじゃないよ」
「痛かったわね、かわいそうに……」
舞は俺の足をいたわるようにさすると、ぶつけた足の小指にチュッとキスしてくれる。
国民的アイドルを跪かせて足にキスをさせていると、まるで王様になった気分だ。
「ふふ、いい匂いがするわ。お風呂から上がったばかりなの?」
「う、うん……」
「うふふ、どうしたの? 足にキスされただけなのに興奮しちゃったの?」
「そ、そんなこと……」
「違うの? 私は公介の足にキスをして興奮しちゃったけど」
「そ、そうなの?」
「そうだ、ちょっと待ってて」
「うん……」
「わんわーん!」
「お、おおっ!」
舞が犬のコスプレをして戻ってきた。露出度の高いとってもセクシーなワンちゃんだ!
「ま、舞、急にどうしたんだ?」
「ふふ、せっかく足を舐めるなら、犬のコスプレしてあげようと思って」
「なるほど。でも、もう痛くないけどな」
「あらそう。じゃあ舐めなくてもいいわね」
「あ、うそうそ、めちゃくちゃ痛い、折れてるかも」
「うふふ、かわいそうに。それじゃあ、足を舐めて癒してあげるわん!」
「お願いしま〜す!」
舞が犬のように俺の足をぺろぺろ舐めてくれる。
また俺の犬になってくれた国民的アイドルに、足を舐めてもらった……。




