第56話 キャッチボール
今日はまた舞がコスプレでサービスしてくれる。
何のコスプレだろな〜、楽しみだな〜。
とにかく舞と早くイチャイチャしたいよ〜!
「公介、プレイボール!」
「え? おおっ!」
今日のコスプレは野球選手だった。もちろん普通のユニフォームではなく、セクシーにアレンジされたユニフォームだった。
「いいね〜、そのユニフォーム見て思い出したよ。始球式、前にやったことあるよな」
「ええ、高校生の時にね」
「アイドルなのに、ノーバウンドでけっこういい球を投げて話題になったんだよな」
「あれは公介と練習していたおかげよ」
「ははっ、たまにキャッチボールして遊んでたもんな」
中学生の頃……。
「公介、キャッチボールやらない?」
「なんで? 野球部でもないのに……」
「なんか青春っぽくていいじゃない」
「ま、別にいいけど。グローブとボールっていくらするんだろう?」
「明日お店に行ってみましょう」
というわけで、学校帰りに安めのグローブと軟式のボールを買ってきた。
家の庭。
制服でキャッチボール。
「公介、最初に言っておくけど、私のパンツに気を取られていたらケガするわよ」
「わ、わかってるよ」
「じゃあ、いくわよ。それっ」
舞がボールを投げる。スカートがひらりと揺れてパンツが見える。
「うわっ!」
舞のパンツの方を見てしまって、ボールをとりそこねてしまった。
「もう、だから言ったじゃない」
「う……次から気をつけます」
パンツを見過ぎないように気をつけながら、キャッチボールを続ける。
「たしかに、なぜか青春を感じるな」
「ふふ、そうでしょう。もっと速い球投げても大丈夫よ」
「オーケー」
なんだか妙に楽しくて、そのまま暗くなるまでキャッチボールを続けた。
それからもたまに、舞とキャッチボールをした。
それがアイドルになってから、始球式で役立つとはな。
そして同棲している現在。
「久しぶりにキャッチボールしましょう」
「たしかに、この広い家なら余裕を持ってキャッチボールできるな」
「そうでしょ。はい、グローブ」
「おう」
広い部屋で距離をとる。
「それじゃ、いくわよ。それっ」
「ナイスボール! こっちもいくぞ。ほいっ」
「おっと! 公介、コントロール悪いわよ」
「いや、なんか周りに高級な家具とかがいっぱいあるって意識したら、急に緊張してきちゃって……」
「あははっ、大丈夫よ。普通にやればあたらないわよ。それっ」
「ああっ、しまった!」
ボールをとりそこねて床に落としてしまう。
「ふう、よかった。床に傷はついてない」
「リラックスよ、公介。青春を感じるのよ」
「わ、わかった……よし、キャッチボールは青春!」
その後は落ち着いてキャッチボールができた。
「やっぱり楽しいな、舞とキャッチボールをするの」
「ふふ、私も楽しいわ」
「キャッチボールといえばさ、よく父親が息子とキャッチボールするのが夢とか言うよな」
「ふふ、公介も息子とキャッチボールしたい?」
「えっ! あ、ああ、息子ができたら……いや、娘でも、とにかく子供ができたらキャッチボールしたいな」
「いいわね。子供ができたらキャッチボールしてあげましょうね、パパ」
「わ、わかったよ、ママ。ところで、もうキャッチボールはやめにしないか、その……」
「どうしたの?」
「わかってるだろ。セクシーなユニフォームを着た舞と、イチャイチャしたいんだよ!」
「うふふ、はい、わかりました」
野球のユニフォームを着た国民的アイドルと、キャッチボールをした……。




