第38話 ゾンビ
今日も舞が俺のためにコスプレしてくれる。
だが、いつもより準備に時間がかかっているようだ。
いったいどんなコスプレをしているんだ?
「公介、お待たせ〜」
「うわっ!」
「ふふ、びっくりした?」
「う、うん……」
今日のコスプレはゾンビだった……。しかもかなりリアルでグロテスクなゾンビだ。服もボロボロで血だらけになっている。
「そ、そのメイクも、自分でやったの?」
「そうよ」
「すごいな……本当にリアルで痛々しいよ」
「ふふ、そうでしょ」
「でも、そんなコスプレされてもな……どう楽しめばいいんだ?」
「え……嬉しくないの?」
「いや、すごいとは思うけどさ……やっぱりエッチなやつとかセクシーなやつを期待しちゃってるからさ」
「女ゾンビだって、よく見ればセクシーよ。服だってボロボロだし……」
「う〜ん……」
たしかに最初は驚いたけど、美しい舞のゾンビはやはり美しい。世界一美しいセクシーゾンビだ!
「たしかに、ちょっと興奮してきたかも……」
「そうでしょう。じゃあ、女ゾンビとの危険なラブロマンスという設定で、イチャイチャしましょう!」
「おー!」
「とは言ったものの……どうすればいいんだ?」
「う〜……」
舞はゾンビのようにうなって部屋をさまようばかりだ。
ちょっと近づいてみる。
「うが〜っ」
「うわっ!」
襲われかけてしまった……。
女ゾンビとはどうやって愛し合えばいいんだ?
「う〜……」
そしてまた部屋をさまよう女ゾンビ……。
う〜ん、どうしようかな?
まあ、とりあえず告白してみるか。
たとえ相手がゾンビだろうと、恋をするなら自分の気持ちをちゃんと言葉で伝えないとな。
俺は女ゾンビに呼びかける。
「おーい、そこの綺麗な女ゾンビさん」
「う〜……?」
「ちょっといいかな?」
「うが〜っ」
「ま、まってくれ、聞いてほしいことがあるんだ」
「う〜……?」
「その……最初はゾンビだ〜って驚いちゃったけど、ちゃんと見たら君はとても綺麗だ……」
「う、う〜……」
お、ちょっと照れてるのか? 顔色はゾンビだからわからないが。
「本当だよ、君のように綺麗な女ゾンビは見たことない。世界一美しい女ゾンビだ!」
「う〜……!」
女ゾンビはときめいた顔をしている。
「ゾンビでもかまわない……俺の、そばにいてくれないか?」
「う〜……うん」
おおっ、女ゾンビが頷いた! なんでも言ってみるもんだな。
「やった〜!」
俺は女ゾンビを抱きしめた。
ゾンビになってしまった国民的アイドルと、愛し合った……。
愛し合ったあと、一緒にお風呂に入る。
「ゾンビと愛し合うのはどうだった? 公介」
「いや、さすがにマニアックすぎるだろ」
「でも、公介、最後はちゃんと興奮してたじゃない」
「それは……ゾンビになっても綺麗すぎる舞のせいだよ」




