第36話 総合格闘技
俺と舞は格闘技を観るのが好きだ。よく二人でどっちが勝つか予想しながら観たな。
今日はアメリカで、ずっと楽しみにしていた総合格闘技の試合がある。時差があるので日本では昼間に生中継される。
舞も楽しみにしていたが、仕事があるので帰ってきてから観ると言っていた。
「お、そろそろ始まるな」
前座の試合がすべて終わり、いよいよメインイベントだ。
選手が入場してくる。絶対的な強さのチャンピオンと、勢いのある挑戦者。二人ともアメリカ人だ。
試合前の予想では、チャンピオンが勝つという声が多い。俺もチャンピオンが勝つと思う。
「えーっ!」
試合の序盤でチャンピオンが挑戦者の強烈なカウンターパンチで倒されてしまった。チャンピオンは失神しているようだ。
予想外の結果に会場も大騒ぎになっている。
これは舞も驚くだろうな〜。
夜。舞が帰宅。
「公介、試合観た?」
「うん。舞はもうどっちが勝ったか知ってる?」
「いいえ。スポーツニュースも見ないようにして帰ってきたから」
「そうか、じゃあ楽しんで観てくれ」
はは、舞が衝撃の試合結果に驚くのが楽しみだな〜。
お菓子と飲み物を用意して、試合を一緒に観る。
「どっちも調子よさそうね」
「ああ、そうだろ」
よし、くるぞ、衝撃のシーンが……。俺は舞の顔を見る。
チャンピオンが強烈なパンチをもらって派手に倒れる。
「おー……」
舞はあまり驚かなかった。
「いや、もっと驚くところだろ!」
「驚いてるわよ。すごいパンチだったわね」
「さては舞、本当は結果を知っていたな?」
「本当に知らなかったけど、だいたいわかっていたというか……」
「どういうことだよ?」
「だって、公介がそわそわしながら私の顔ばっかり見るから、きっと驚く試合結果なんだろうなって。それで公介は私の反応が見たかったんでしょ?」
「う……その通りです」
「だから、試合予想で有利とされていたチャンピオンが負けるんだろうなって思ったのよ」
「くっ……俺のせいでバレていたのか」
「うふふ、そわそわしてる公介が可愛くて試合に集中できなかったわ。もう一回、最初から観ていい?」
「ああ、もちろんいいよ」
国民的アイドルと楽しく格闘技の試合を観て、感想を言い合った……。




