第33話 台本
夜。
舞が帰って来たぞ〜!
「舞、舞っ、おかえり舞〜!」
「ただいま、公介、おー、よしよし、いい子だね〜、可愛いね〜」
舞に可愛いがってもらうこの瞬間、幸せすぎる〜!
「舞、今日はさ、俺、また舞に犬になってほしいんだけど……」
「ごめんなさい、今日はどうしても覚えておかないといけない台本があるの……」
「え、ああ、そうなんだ。いいよいいよ、俺のことは気にしないで、仕事を優先させてくれ」
「悪いわね、そうさせてもらうわ。でも公介は好きに甘えていいからね」
「え……わ、わかった」
舞はリビングのソファーに座ると、集中した顔で台本を読み始める。
俺は言われた通り好きに甘えさせてもらう。
台本を読む舞の邪魔をしないように、横からそっと抱きつく。
「……」
舞は気にせず、台本に集中している。
俺はそのまま無言で舞の身体に甘えまくった。
「……ふふ」
舞は台本を読みながら、たまに俺の頭を撫でてくれた。
俺はまるで飼い主がかまってくれるのを待っている犬のようだ。
「よし! 終わったわ、公介」
舞が立ち上がって、んーっと身体を伸ばす。
「お疲れさま。じゃあ一緒にお風呂に入って、今日はもう休むか?」
「なに言ってるのよ。今日は私に犬になってほしいんでしょ?」
「そうだけど……今日はもういいよ、疲れただろ?」
「大丈夫よ。ちょうど私も今日は公介の犬になりたいな〜って思ってたところだったのよ」
「俺の犬になりたい日なんてあるの?」
「あるのよ。待ってて、着替えてくるから!」
「じ、じゃあ、お願いしまーす」
「わん!」
国民的アイドルに、また俺の飼い犬になってもらった……。




