第3話 犬
早朝。
舞が仕事に行く前に、ハグと行ってらっしゃいのキスをして見送る。
舞を見送ったあとは、いつも通り、掃除、洗濯、トレーニング。
夜になり、夕飯を食べながらテレビを観る。
今日は動物番組に舞が出演する。
可愛い動物たちの動画がたくさん紹介される。
「うわ〜、やっぱり猫も犬も可愛いな」
スタジオに子犬が登場し、舞が抱っこしてあげている。
「美しい舞と、可愛い子犬のコラボレーション、最強の絵面だな……」
きっと視聴率も高くなるはずだ。
番組が終わり、しばらくすると舞が帰ってきた。
「舞、おかえり〜」
俺はさっそく舞にじゃれつく。
「ふふ、公介、ワンちゃんみたいで可愛い」
たしかに、舞が帰ってきてはしゃぐ俺は飼い犬っぽいな。
「わんわん!」
俺はふざけて舞の頬をペロペロ舐める。
「あははっ、くすぐったいわ」
「はは……あ、犬といえば、さっきの舞の出ていた動物番組を観たよ」
「え? ああ、あの番組、今日放送だったのね。ワンちゃんも猫ちゃんも可愛かったわ」
そう言いながら、俺の体をわしゃわしゃと撫で回す。
「あ〜、気持ちいい……」
「うふふ……あ、そうだ! いいものがあるから、ちょっと待っていて」
「うん、わかった」
舞が寝室に行く。
これはまさか……またコスプレしてくれるのか? メイド服のほかにもたくさん用意してくれているらしいからな。
次はどんなコスプレをしてくれるんだろう? ドキドキ……。
「はーい、お待たせ〜、わんわん!」
「おおっ!」
舞が犬のコスプレをしてきた。それも、また露出度の高いセクシーなコスプレだ。
「次は何を着てあげようかなって思っていたんだけど、犬の話になったから、今夜は公介の犬になってあげようかなって……どう?」
「さ、最高です!」
「うふふ、よかった。じゃあ、さっそくお散歩に連れて行ってちょうだい」
舞が首輪についたリードを俺に渡すと、犬のようにお座りする。か、可愛い〜!
「舞っ、舞ぃ〜!」
俺はたまらず舞の身体中を撫で回す。
「ああん……く〜ん」
舞が気持ちよさそうに鳴く。
「はは、よしよし、いい子だな〜。それじゃあ、お散歩に行くぞ」
「わん!」
舞が犬になりきって、よつんばいで歩く。さすがは何本も映画やドラマの主演をつとめた女優。もう立派なメス犬だ。
散歩とはいっても、家の中を歩くだけだ。それでも家が広いから楽しい。
「わんわん!」
天下のトップアイドルが、犬になってお散歩していると知ったら、世間の人は驚くだろうな。
「舞、お手!」
「わぅん」
俺の差し出した手に、舞がちょこんとお手をする。
「よーし、偉いぞ。ご褒美はどうしようかな? そうだミルクでも飲むか?」
「わん!」
「よし、待っていてくれ」
俺は皿を床に置いて、ミルクを少しだけ注ぐ。
舞はちゃんと犬のように皿をペロペロする。
「わんわん!」
「はは、偉いぞ〜。ちゃんと飲めたな」
しかし、舞の顔がミルクまみれになってしまった。
「ほら、顔を拭いてあげる」
「く〜ん」
タオルで舞の顔を拭いてあげる。
「わぅん……」
舞はお返しに、俺の顔を犬のようにペロペロ舐め回す。
「あはは、くすぐったいよ」
「わぅん、わぅん……ペロペロ」
「ああ、舞……」
俺はたまらなくなり、舞にキスをした。
「んっ……公介」
「舞、散歩の続きだ。こっちにおいで」
「わん……」
俺はリードをひいて、寝室へ向かう。
「わおーん」
寝室につくと舞はベッドに上がり、犬がするようにお腹をこちらに向けて寝そべると、甘えるように鳴く。
「く〜ん……」
「あ、ああ……舞、可愛いすぎるよ、舞ぃっ!」
「わんわんっ!」
俺の飼い犬となった国民的アイドルを、可愛がってあげた……。
朝、いつものように、行ってらっしゃいのキスで舞を送り出す。
「行ってらっしゃい、チュッ」
「ん……行ってきます、わん!」
舞はまだ少し犬のままだった……。