第29話 おんぶ
舞がアイドルになる前の日常。中学生の頃の話。
舞と一緒に学校から帰っている時。
俺は大きなあくびをする。
「ふわ〜あっと、眠い……」
「昨日も遅くまでゲームしたもんね」
「ああ、あんなに盛り上がってるところで、寝られるわけないぜ……ふわ〜」
「大丈夫?」
「ああ……」
「私もけっこう眠いし、帰ったら夕飯の時間まで一緒に寝ましょう」
「ああ、そうします……」
ふらふら歩く俺を、舞が手で支えてくれる。
「公介、歩きながら寝ないでよ」
「大丈夫だって……ん?」
子供をおんぶした女性とすれ違う。
「今のいいわね。私も公介のことおんぶしてあげる」
「ええっ……恥ずかしいよ」
「いいから、かわりばんこでお互いをおんぶしましょう」
「かわりばんこならいいか……」
「はい、どうぞ」
舞がしゃがむ。
「乗るぞ」
「よいしょっと」
舞におんぶしてもらう。
「大丈夫か?」
「大丈夫よ」
舞が歩き始める。その振動が心地いい。
「舞、そろそろ交代するぞ」
「まだ大丈夫よ」
やばい……寝ちゃいそう……。
「舞……こ、交代……」
「もうちょっとだけ」
うう……ねむ………。
「く〜っ……」
「ふふ……よいしょっと」
「……はっ!」
やばい、一瞬寝ていたような?
「公介、起きた?」
「あ、ああ……って、家に着いてる!」
「ふふ、公介、よく寝てたから」
「だからって、家までおんぶすることないだろ」
舞におろしてもらう。
「疲れただろ? こんなに汗もかいて……」
「ふふ、公介のお母さんの気分が味わえて楽しかったわ」
「今度は俺にもおんぶさせろよ」
「いいわよ。じゃあ私は帰ってシャワー浴びるから」
「ああ、夜に俺の部屋でマッサージしてやるからな〜」
「ふふ、お願いするわ」
美しすぎる幼馴染に、おんぶしてもらった……。




