第274話 口移し12
夜。
舞が帰ってくる。
「わ〜い、舞、おかえり〜!」
「うふふ、ただいま、公介」
「舞〜、舞〜」
俺は舞に甘える。
「あん、よしよし、公介、お土産買ってきたわよ」
「え、なになに〜?」
「モンブランよ」
「やったー!」
というわけで、舞が買ってきてくれた高級なモンブランを食べる。
「美味い、美味いぞ、舞!」
「ふふ、よかったわ。ほら、これ見て公介」
「ん?」
舞が自分の分のモンブランをナイフで半分に切る。
モンブランの断面図が見える。
「おー、これは美しい断面図だな」
「ふふ、そうね」
舞が切ったモンブランの半分を食べる。
「うん、本当に美味しいわね」
「そうだろ」
「さて、公介、残った半分なんですけど……」
「くれるのか? サンキュー」
「えっ! ええ、いいわよ……もちろん」
「はは、冗談だよ、口移し、してほしいんだろ?」
「こ、公介……その通りです、お願いします!」
「少し待ってなさい」
俺は残ったモンブランの半分を口に入れる。
咀嚼する。
舞にキスをする。
口移しで、舞にモンブランを食べさせてあげる。
「もぐもぐ……うう、う、美味ーい!」
国民的アイドルに、口移しでモンブランを食べさせてあげた……。




