第185話 実家
今日は舞が実家に行ってきた。
俺の実家にも寄ってくれた。
バックパッカーで世界を旅している、という設定の俺が、元気で旅を続けていると、母さんに伝えてくれたらしい。
親には、俺と舞は今でもたまに連絡を取り合っている、という設定にしている。
これで俺の両親も心配せずに済むだろう。
「おばさんたちも、みんな元気よ」
「それはよかった」
「公介もお母さんに会いたいでしょ?」
「俺のママはここにいるよ〜」
俺はふざけて舞に甘える。
「ママ〜!」
「あん、うふふ、いい子ね、公介ちゃん」
「ママ、ママ、あれ買って〜」
俺はテーブルに置いてあったお菓子を指差す。
買い物でおねだりする子供ごっこだ。
「ダメよ、公介ちゃん、お菓子はさっきも買ってあげたじゃない」
「え〜、いいじゃん、買ってよ〜」
「わがまま言っちゃダメよ、公介ちゃん」
「やだやだ〜、買って買って〜!」
俺は床に寝転んでだだをこねる。
「もう、しょうがないわね。家に帰ったらちゃんと勉強するのよ」
「うん、わかった〜」
俺はソファーに座ってお菓子を食べる。
隣に座った舞が、頭を撫でてくれる。
「美味しい、公介ちゃん?」
「うん、美味しい!」
「そう、よかったわ」
「ママ……さっきはわがまま言って、困らせてごめんなさい」
「ふふ、いいのよ。ママは大好きな公介ちゃんにわがまま言われるのが好きだから」
「ママ……じゃあ、もっとわがまま言っていい?」
「いいわよ、何?」
「お家に帰ったら、ママにいっぱい甘えたいな〜!」
「うふふ、もちろんいいわよ。さあ、手をつないで帰りましょう」
「わ〜い!」
俺と舞は、手をつないで寝室に行った。
ママになってくれた国民的アイドルと、愛し合った……。