第17話 告白
舞がアイドルになる前の日常。中学生の頃の話。
俺と舞は、どちらかが告白したわけではなく、自然と恋人関係になっていた。
子供の頃からとにかくお互いのことが大好きで、そのまま成長したので、告白するタイミングもなかった。
ある日、一緒にドラマを観ていたら、告白のシーンになった。
「公介は告白したい? されたい?」
「う〜ん……されたい、かな」
「どうして?」
「だって、自分から告白するなんて、めちゃくちゃ緊張しそうじゃん」
「たしかにね」
「舞はどっち?」
「私は……公介に告白したいし、されてもみたいかな」
「そ、そうですか……そういえば、俺たちはどっちも告白してないもんな。当然のように恋人になっていたし」
「まあ、そのほうが私たちらしいんじゃない」
「はは、そうだな」
次の日。放課後。
舞に校舎の裏で待っていてちょうだい、と言われた。
なんだろう?
「あ、来た。舞、どうしたんだ?」
「公介……急に呼び出してごめんね」
「え?」
「実は今日……公介に伝えたいことがあって」
「えっと……なに?」
「ず、ずっと前から、好きでした! 私と付き合ってください!」
「は?」
どういうことだ? 俺と舞はすでに恋人で、キスだって、あんなことやこんなことだって、もうしているのに……。
なんでこんな告白みたいなことを……あっ! そうか、告白か! 昨日俺が告白されたいって言ったから、それを叶えてくれてるんだな。
「あの……返事は?」
「もちろん、返事はオーケーだよ。俺も、舞がずっと好きだったんだ」
「本当に! 嬉しい……っ!」
舞が目に涙を浮かべながら感激している。本当に告白に成功したみたいだ。
「ありがとう、舞。告白されるのって、すごいドキドキするな」
「あはっ、そうでしょう。私もなんか緊張しちゃったわ」
普通に戻った舞は涙を拭う。
「舞の演技がすごかったから、本当にドキドキしたよ。最後なんて涙まで浮かべてさ」
「あれは演技じゃないわよ。なんか公介に告白が成功したって思ったら、本当にジーンときちゃったのよ」
「舞……」
「よし、やりたいことができて満足! それじゃあ、早く帰ってゲームしましょう」
「うん……」
舞と帰宅。
俺は家の前で立ち止まる。
「公介、どうしたの?」
「舞……ちょっと先に俺の部屋で待っていてくれないか?」
「どうして?」
「秘密」
「ふふ、わかったわ」
舞は俺に、告白したいし、されたいって言っていたな。よし、告白返しだ!
舞が俺の部屋に着くのを確認してから、少し間を空けて、俺も部屋に入る。
「舞……き、今日は、急に家に来てもらって、ごめんな」
「どうしたの? 大事な話があるって言っていたけど……」
「え……」
舞は戸惑うことなく、すぐに設定に合わせてくれる。俺の考えは読まれていたのだろう。まあいいや、このまま告白しちゃおう。
「そ、そうなんだ……どうしても、舞に伝えたいことがあって……」
「……な、なに?」
顔を赤くして、モジモジする舞。
俺も本当に告白するみたいに緊張してきた。
「俺、もう仲のいい幼馴染の関係を、卒業したいんだ」
「そ、それって……」
「舞のことが……好きなんだ、大好きなんだ! だから、俺と付き合ってください!」
「公介……嬉しい、私も好きよ。ずっと前から公介のこと、大好きだったの!」
「ま、舞ーっ!」
「公介ーっ!」
俺たちは強く抱き合い、さっきは学校だったのでできなかったキスをした……。
「いやー、やっぱり告白っていいな。するのも、されるのも」
「そうね、たまにやりましょう」
「いや、告白って一回だけだろう」
「えー、こんなに楽しいのに、一回だけはもったいないわよ」
「まあ、別にいいけど……」
それからも、たまに告白ごっこをして楽しんだ……。