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第124話 チャンピオン

 俺は仕事から帰ってきた舞と、ボクシングの試合を観ていた。


「そうだわ、公介、今日はチャンピオンを目指すボクサーごっこしない?」


「なんだよそれ、すごくおもしろそうじゃないか」


「ふふ、じゃあやるのね?」


「もちろん!」




 というわけで、チャンピオンを目指すボクサーごっこ。


「私は公介の恋人役ね」


「わかった」


「公介……もうすぐ試合ね」


「ああ、必ずチャンピオンになるから応援に来てくれよな」


「……」


「どうしたんだ、舞?」


「チャンピオンってすごく強い人なんでしょ?」


「ああ、強いよ」


「私、怖いの……」


「大丈夫だよ、俺は絶対に勝つ」


「勝ち負けなんてどうでもいいの。あなたが無事に帰ってきてくれたら、それでいいの」


「舞……そんなに心配することないよ。とにかく俺は全力で戦う。舞に応援に来てもらえたら、嬉しい」


「わかったわ、約束はできないけど……」


「それでいいよ」


 すごいシリアスな雰囲気だ。


 なんか本当に試合を控えるボクサーの気分になってきたぜ。


「おら公介、練習に集中しろ!」


「えっ? どうした、舞?」


「俺は舞じゃねえ、お前のセコンドだ!」


 舞はいつの間にか、セコンド役に変わっていた。


「おら、シャドー始めろ!」


「は、はい!」


「そんなパンチじゃチャンピオンにかすりもしねーぞ!」


「はい!」




 そして、試合当日。


「リラックスしろよ。お前なら絶対勝てるからな!」


 セコンド役の舞が気合いを入れてくれる。


「はい……」


「どうした、公介?」


「いえ……彼女が客席にいないかなって」


「気持ちはわかるが、今は試合に集中しろ!」


「はい!」


 舞が俺の前に立ちはだかる。


「今日はお前をぶっ殺してやるからな。覚悟しとけよ」


「えっ? 舞、急にどうした?」


「私は今からお前と試合するチャンピオンだ!」


 チャンピオン役も舞だった。


 一人三役だ。大変だな。




 というわけで、試合開始。


 もちろんパンチはあてない。戦ってるふりだけだ。


 チャンピオン役の舞がスピードで試合をリードする。


「おい、このままだと負けるぞ!」


 セコンドの舞が叫ぶ。


「く……」


「公介〜!」


「こ、この声は……」


 恋人役の舞が叫んでいた。


「頑張って、負けないで、公介〜!」


「舞、来てくれたんだな」


「公介、右ストレートだ!」


 セコンド役の舞も叫ぶ。


「うお〜!」


 俺はチャンピオン役の舞を殴るふりをした。


「ぐあっ」


 舞が本当に殴られたように倒れる。


 さすが女優。素晴らしい演技力だ。


「よくやったぞ、公介! お前がチャンピオンだ!」


 セコンド役の舞が喜んでくれる。


「ま、舞、舞〜!」


 俺は舞を呼ぶ。


 もちろん、恋人役の舞を。


「公介〜!」


「舞〜!」


 恋人役の舞と抱き合う。


「おめでとう、公介」


「舞、応援に来てくれてありがとう」


「負けたよ、このチャンピオンベルトは君のものだ」


 チャンピオン役の舞が話に入ってくる。


「いや、もうチャンピオン役もセコンド役も出てこなくていいから、ややこしいから」


「ふふ、わかったわ」


「舞……チャンピオンになった俺と結婚してくれ!」


「あなたがチャンピオンでもチャンピオンじゃなくても、私はあなたとずっと一緒にいたいわ」


「じゃあ、結婚してくれるんだね?」


「ええ!」


「舞〜!」


「公介〜!」


 チャンピオンになった俺は、国民的アイドルと愛し合った……。

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