第117話 ハロウィン
今日はハロウィンだ。
舞は今日はどんなコスプレをしてくれるんだろう?
まあ、舞はハロウィンじゃなくても、俺のためにいつもコスプレしてくれるんだけどな。
「お待たせ、公介。トリックオアトリート!」
「うわっ!」
そこには信じられないほど美しいゾンビがいた。
と思ったら舞だった。
「今日はゾンビか。前も見たけど、やっぱりリアルでびっくりするな」
「ふふ、そうでしょ」
服はボロボロで血だらけで、傷口のメイクもリアルで痛々しい。
「だけど、やっぱり舞はゾンビでも綺麗だな〜」
「ふふ、ありがと。じゃ、あらためてトリックオアトリート!」
「俺はいたずらされるのを選ぶよ。さあ、いたずらしてくれ!」
「じゃあ、それそれ〜」
舞に身体をくすぐられる。
「うひゃっ、ははっ」
「はい、いたずらしたわよ」
「え、これで終わり? もっといたずらして、もっとイチャイチャしようよ〜」
「それじゃあゾンビとイチャイチャできるように頑張ってください」
「いいぜ、前にも成功してるしな。すぐにイチャイチャしてやるぜ!」
というわけで、ゾンビとイチャイチャするために頑張る。
「う〜……」
哀れなゾンビとなって部屋をさまよう舞。
さすがは女優だ。
さっきまで普通に話していたのに、今はちゃんと怖い。
前に舞がゾンビになった時は、普通に気持ちを伝えてイチャイチャしたんだよな。
よし、とりあえず同じことしてみるか。
「あの、ゾンビさん?」
「うが〜っ」
「あ、ちょっと待って、話したいことがあるんです!」
「う〜……?」
「女ゾンビさん、あなたは美しい」
「う〜……」
「ゾンビでもかまわない、俺と付き合ってくれ!」
俺は舞を抱きしめる。
どうだ?
「うが〜っ!」
「うわ〜っ!」
ゾンビに襲われて腕を甘噛みされてしまった……。
「はい、これで公介もウイルスに感染してゾンビになりました」
「くそ〜、もう一回チャレンジさせてくれ。早く舞とイチャイチャしたいよ〜」
「ふふ、頑張って」
というわけで再チャレンジ。
前と同じはダメか。
じゃあ、どうしようかな。
そうだ。ウイルスを治すワクチンがあればいいんだ。
俺はキッチンに行く。
「う〜……」
やばい、舞も追いかけてくる。
俺は冷蔵庫からジュースを取り出す。
「これ、これワクチンな。ワクチンの設定ね!」
よし、あとはこのワクチンという設定のジュースを舞に飲ませるんだ。
「うが〜」
「おわっ」
襲ってくる舞をかわす。
どうやって襲ってくる舞にワクチンを飲ませればいいんだ?
そ、そうだ、いいアイデアがあるぞ。
俺はジュースを自分の口に含む。
「うが〜」
俺は襲いかかってきた舞を抱きしめてキスをした。
「あむ」
「んんっ!」
舞に口移しでワクチンという設定のジュースをゆっくり飲ませる。
「……ぷはっ」
口を離す。
どうだ? 人間に戻ったか?
「あ、あれ……わ、私、いったい何を?」
舞が人間に戻った演技をする。
「も、戻ったー!」
「ああ、公介、あなたがワクチンを飲ませてくれたのね」
「そうだよ、舞、本当によかった」
「ありがとう……でも、まだ身体はゾンビのままだわ」
「大丈夫だよ、舞はゾンビでも綺麗だから」
「公介……身体がゾンビのままでも愛してくれる?」
「ああ、いっぱい愛してあげるよ!」
「公介〜!」
「舞〜!」
ハロウィンの夜にゾンビになってくれた国民的アイドルと、愛し合った……。