第108話 コロッケ
舞がアイドルになる前の日常。中学生の頃の話。
学校からの帰り道。
「公介、どこかに寄ってく?」
「う〜ん、ちょっと小腹すいたかも」
「夜ご飯まで我慢できない?」
「我慢できないかも……」
俺は舞に抱きついて甘える。
「舞〜、お腹すいたよ〜」
「うふふ、かわいそうな公介。そんな声出されたら、私までつらくなっちゃうわ」
舞が俺を慰めるようによしよししてくれる。
「それじゃあ何か買って食べましょうか」
「やったー! 何食べる?」
「私にいい考えがあるわ」
まず肉屋さんで、揚げたてのコロッケを買う。
「美味しそうなコロッケだな」
「まだ食べないでね」
「え〜、なんで?」
「ふふ、こっちに来て」
次にパン屋で、食パンを買う。
「なるほど、舞の考えがわかったぞ」
「さあ、公園で食べましょう」
公園に行く。
二人でベンチに座る。
「はい、どうぞ、コロッケパンです」
舞が熱々のコロッケをパンに挟んで渡してくれる。
「ナイスアイデアだぞ、舞。いただきまーす!」
コロッケパンにかじりつく。
「めちゃくちゃ美味しいぞ、これ」
「ふふ、じゃあ私も、いただきま〜す」
二人で公園のベンチに座り、夕陽を眺めながら食べるコロッケパンは最高だった。
「ふう、美味しかった〜」
「公介、何か飲む?」
「そうだな、コーヒーでも飲むか」
近くの自販機でコーヒーを買う。
「舞は?」
「私はいいわ」
「じゃあ、俺のをちょっとあげよう」
「ふふ、ありがと」
二人で缶コーヒーを飲む。
美しすぎる幼馴染と、コロッケパンを食べた……。