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9 決戦

「放て!」


モデナ達先陣の戦いは掛け声とともに始まった。

すでに“モレイラ”を追って、“ガッソ”も川に差し掛かろうとしていた時だった。

中央部から3方向に火球が放たれ、その軌跡が弧を描く。

火球の軌跡は、集団から突出していた“ガッソ”の鼻先に伸びていく。

それと同時に残りの冒険者が掛け声とともに走り出す。

彼らは土手を駆け降り、水しぶきを上げながら川を渡っていった。

“ガッソ”に打ち込まれた火球はその先頭に見事に落下し、炎を上げる。

先頭にいた“ガッソ”は被弾し、横に吹き飛ばされるほどの威力だった。

その近くにいた“ガッソ”も吹き飛ぶほどではなかったが倒れてもがいていた。

冒険者達は逃げ惑う“モレイラ”の間をすり抜け、“ガッソ”に踊りかかる。

倒れてもがいていた“ガッソ”もマリーゼによって止めを刺された。

思いのほかその効果はあったようだ。

さすがの“ガッソ”も出鼻をくじかれたらしく混乱して足を止めていた。

先頭が崩れたことにより一時集団の勢いは止まり、先制しやすい形となる。

そのままの勢いで真紅の鎧を身に纏った“シスレィ”のモデナと、黒い鎧を纏った“モンテ・リーザ”のヘクティールが真っ直ぐに飛び込む。

そのまま後続の“ガッソ”を叩き伏せる。

残った冒険者達も残りの“ガッソ”を打ち倒さんとするべく飛び込み、一気に乱戦となっていった。

しばらく遅れて、先ほどの射手達も続いて飛び込んでいく。

モデナも始めの1匹目では見事しのいだが、迫りくる2匹目の時に横から突き飛ばされてしまった。

だがそこはモデナ、パーティーのリーダーともいうべきか、何とか転ばずに耐え忍ぶ。


「やられるかあぁ」


飛ばされても掴んだままだった愛剣、“魔剣ゼオラストジー”を炎の軌跡をもって斬り上げる。

炎を纏った剣先は“ガッソ”の鼻先を切り落し、体勢を立て直す。

ここぞとばかりに真紅の鎧が乱舞する。

“魔剣ゼオラストジー”は、上位魔獣の一種「ネセタ・マリウス」の骨と鱗からできた剣であり、火属性をまとっている。

しかし“ガッソ”の鼻先を切っただけでは勢いを止めることはできず、再び体勢を立て直し襲い掛かろうとしていた。

だが焦らずモデナは突進し、その懐に飛び込む。

今までの経験上、弱点は首の後ろと腹部であり、“ガッソ”などの二足歩行型はこの立ち上がりの瞬間に腹に潜り込み、仕留めるのが有効だということを知っていた。

懐に飛び込んだモデナは、“ガッソ”が立ち上がりかけた瞬間に“魔剣ゼオラストジー”を腹に突き立てる。


「いやあぁ」


掛け声とともに愛剣に炎の軌跡を描かせて、一気に振り抜く。

瞬間、焦げた匂いとともに断末の声を上げて、“ガッソ”が仰け反り倒れる。

しかし、息をつく暇はない。

すぐに後ろの方から“ガッソ”の気配に反応して左に飛びのき、振り返る。

同時に差し出した盾が“ガッソ”の牙を防いだ。

だが盾とはいえ小型の盾では弾かれた。

多少後ろに弾き飛ばされたが、モデナが体勢を立て直すには十分な時間だった。

“ガッソ”はさらに牙を剥き出し、威嚇してくる。

その時、横から一つの影が飛び出し、“ガッソ”の首の後ろを斬りつけ、仰け反らせる。

割って入ったのは双剣を携え、黒色の鎧を纏ったったマリーゼだった。

斬り方が浅かったのか、“ガッソ”は倒れることなくマリーゼに向き直る。

しかし、これも“ガッソ”が仰け反った瞬間にモデナが一気に間合いを詰め、足元まで寄っていた。

次の瞬間には“ガッソ”の膝を足場に首に飛びつき、愛剣を突き立てる。

モデナはそのままぶら下がり、斬り落とす。

“ガッソ”はまたも断末の声を上げる暇もなく崩れ去る。


「モデナ、助かりました」


崩れ去る“ガッソ”を横目に大きく息をつくモデナに、マリーゼが手を差し出しながら声を掛けた。

だがモデナはマリーゼの手を断りながら、自分に言い聞かせるようマリーゼに促す。


「こっちのセリフよ。だけどまだよ。」


そしてすぐに最も心配している仲間のことを口にする。


「チェシャは?」


マリーゼ自身もこのように規模の大きい狩りはあまり経験はない。

最も経験も浅く不安であったのがチェシャであった。

チェシャ自身が乗り気だったので許したが、ただでさえ普段の狩りでもまだまだ経験不足であり、やはり今でも不安であった。

それでもリスクを減らそうとメルモと一緒に突入するように指示したが、無事に突入できたのか心配であった。

そんなモデナの心を読むかのようにモデナがフォローする。


「大丈夫よ、チェシャはちゃんとメルモについていったわ」


モデナは手負いの“ガッソ”を仕留めた後は、次の獲物にありつけなかったのである。

その為、次の獲物を探している時にチェシャとメルモの姿が目に入っており、その時の無事は確認していたのだった。


「もっともあとはあの子の運次第ね」


モデナは剣を強く握り締めてそう言い放ち、まだ始まったばかりの戦場へと目を向ける。


「腕もね」


マリーゼはかすかに微笑んで付け加えた。

その時、はるか前方に爆炎のようなものがあがった。

その後、一陣の風が駆け抜け、二人の髪を揺らした。

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