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12 帰還

今回のアトキ防衛戦はまずまずの出来であった。

討伐した“ディ・ガッソ”が2頭、“ガッソ”22頭、逃した”ガッソ“が1頭。

一方、こちらの損害は皆軽度の怪我はあるものの冒険者死亡0名、軽傷者4名にとどまった。

その他、逃げ惑う”モレイラ“に激突され、村人にも数名の怪我人が出たが、それだけで済めば上出来といえるだろう。

村では討伐が終わって引き上げてきたモデナが、結果をディバレンスに報告しているところであった。


「さすがに今回は5年前のようにはならなかったな」


モデナの報告にディバレンスが満足げに応える。


「はい、別働隊が後方分断していなければ、私たちも押されていました」


これはモデナの本心からの言葉であった。

思った以上に湿地での戦いは足を取られて動きにくい為、戸惑ったものであった。

そのため、あれ以上後続から”ガッソ“が加わってくることとなれば、かなりの苦戦を強いられたであろう。

そんなこともモデナは付け加えた。


「なに、それならケイバンとソルに礼を言ってやってくれ。“ディ・ガッソ”も二人であろう?」

「はい、二人で“ディ・ガッソ”を2匹もです・・・」


2匹の“ディ・ガッソ”がいることは前もって聞いていたモデナであったが、戦いの最中にはそのようなことは何処かに吹き飛んでいた。

自分たちの戦いの終了後、状況確認のためにケイバン達のところまで向かい、数匹の“ガッソ”の骸を所々で見つけた。

その中に最初の“ディ・ガッソ”を見つけ、次いでケイバン達と共にもう1匹の“ディ・ガッソ”を見つけたのだった。

その時、モデナは思ったのだ。

果たして自分であれば、あの混戦の中で“ディ・ガッソ”を相手にできるだろうかと。

剣技だけならば自身はあるが体力、いや精神力が持つのだろうかと。

その時モデナに込み上げてくる思いは、驚きでもあり嫉妬でもあった。

また自分の幼さへの怒りでもあった。

そのような思いからだろう。


「ケイバン様なら分かりますが、ソルとかいうニヤけた男もですか」


尊敬に値するケイバン以外を認める気にはなれないらしい。

確かにモデナにしてみれば侮っていた相手である。

想像以上の働きをすれば、反対に認めたくは無いものであろう。


「ふふふ、まあ確かに締りの無い顔の上に女好きだがな……。相手の力量を見定めることも冒険者には大事なことだ。見誤るなよモデナ」


そういってディバレンスは椅子に腰掛ける。

モデナは無言であった。

見たくないものでもあるかのようにうつむいて視線を落とす。


「モデナよ、さすがのお前も見誤っているようだな。剣技だけではないぞ、強さというものはな……」

「剣技でない強さ……」


椅子に座り、再び口を開いたディバレンスを不思議そうな顔でモデナが顔を上げた。


「まあ、そのうちに分かる。経験が教えてくれるだろう。・・・ところで二人は?」


ディバレンスはモデナへのアドバイスを切り上げ、ケイバン達の行方を聞いた。

モデナはケイバン達と遭遇したときに、ケイバンはクリスを迎えにいくことを聞いていた。


「ソル殿は一緒に戻りましたが、ケイバン様はクリスを迎えにユニ・オ・ロンガ(ロンガの鼻)へお向かいになりましたが」


その時である。外の様子が騒がしいことに二人は気付いた。


「おい、ありゃなんだ」

「何だ、あの煙は」

「ユニ・オ・ロンガ(ロンガの鼻)のほうだな」


人々が口々に言い、その異変に目を向けていた。

ディバレンスも急いで椅子から立ち上がりモデナと二人で外へ飛び出す。

皆と同じように西へと視線を向けると、ユニ・オ・ロンガ(ロンガの鼻)の中腹あたりから赤いけむりが立ち上っていた。

モデナにも一瞬理解はできなかった。

当然ディバレンスにもである。

ただ黙して見つめるだけであった。

赤い煙は信号玉であることは分かる。

だが信号玉はあらかじめ、どんな色にどんな意味があるのかを取り決めておくことが一般で、この討伐では決められてはいなかった。

その為、あの信号玉にどのような意味が込められているかは見当がつかなかった。

しかし、ディバレンスはすぐに指示を出す。


「ヘクティール。俺が戻るまで、残りを集めて村を中心に警戒させろ。」


少し離れて同じように眺めていた“ファキナドウ”のヘクティールを呼び、指示を出す。


「ケイバン様がいらっしゃるはずですが、何事でしょうか」

「わからん、“ガッソ”がいるとも思えんが・・・」


モデナの心配な様子にもはっきりとは答えられず、歯痒い表情で指示を出す。


「モデナ、ソルと“シスレィ”を連れて俺と来い」


ディバレンスは急いだ様子で部屋のほうへと向きを変え、そう言った。

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