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1 モデナとチェシャ

「チェシャ?」


自身が止めを刺した“デトニクス・カッツェ(荒ぶる飛べない鳥)”から剣を引き抜きながら同僚の名を呼んだ。

全身を包み込むその鎧は、返り血を全身に浴びているかのように真紅であり、荒涼とした草原の風景には場違いなのもにも見える。

およそ20m離れた場所でその仲間と思われる者の声が上がる。


「こっち、こっちぃ!モデナ」


その声はどこか幼げで、声を上げた本人、チェシャはちょうど“デトニクス・カッツェ”と呼ばれる大きなニークスと対峙ていた。

手にはその姿とはバランスを欠く重そうな槍と盾が握られていた。

そして対峙する“デトニクス・カッツェ”は、鳥と呼ぶには似つかわしくない姿をしている。

そのシルエットは、鳥の姿に長い足と長い首を加えたものである。

人を自分から襲うことはないが、外敵にはその強靭な足とくちばしによって激しく抵抗をする。

チェシャは右手の槍を腰の辺りで構え、左手に持った盾をかざしている。

息が上がっているのか、着込んだ青銅色の鎧がわずかに上下に揺れている。

その上下に揺れた鎧が不意にリズムを崩し、意を決したように大きく揺れる。


「ハァッ」


掛け声と共に槍を引いたまま、一気にチェシャ突進する。

“デトニクス・カッツェ”もそれに呼応するかのように大きく飛べない羽を広げ、鎌首をもたげて突進してきた。


「チェシャ!」


モデナと呼ばれた真紅の鎧も悲鳴に似た高い声を発し、飛び出す。

しかしすでにチェシャたちのシルエットは交錯寸前である。

“デトニクス・カッツェ”はその強靭な足で大きくジャンプし、落下と同時に凶悪な足爪でチェシャに襲い掛かる。

チェシャは反射的に突進のリズムを変え、盾を前に掲げ、力を溜めるかのように槍を引く。

そして交錯する寸前、チェシャは溜めた力を一気に吐き出し、腕を伸ばして強引に敵の両足をすり抜け、腹部を目指す。

このままでは敵に槍が届く前に、その爪にえぐられ、体重に押しつぶされてしまうかに見えた。


「ヤッァァ」


“カチリ”


チェシャの掛け声と共に槍を持つ手元で小さな金属音が鳴る。

それと同時に爆裂音が響き渡り、伸びきった槍の先3分の2がさらに1ラン(1m)ほど伸びる。

伸びた槍は見事に敵の足の付け根に突き刺さり、その勢いで“デトニクス・カッツェ”を打ち落とす。

武技である“ゲイル・バンカー(雷槌)”を決めた瞬間だった。

槍の主は片膝をついて大きく息をしている。


「まったく、“ニークス(鳥)“相手に“ゲイル・バンカー”なんて・・・」


駆け寄ってきたモデナは、兜を外しながらあきれたように口を開く。

その容姿は黒髪で、切れ長の目をした女性であった。どちらかというと“美しい女性“の部類に入るだろう。


「ふう・・・、だって、試しておきたかったんだもの」


そう答え、兜を脱いだ青銅色の鎧もまた女性であった。

その声と同じく幼さが残る顔立ちで、髪の毛はくせのある赤毛でボーイッシュな容姿である。


「まったく……無茶して。ヒヤヒヤよ」

「えへへ」


モデナと呼ばれた真紅の冒険者は手を差し出し、チェシャと呼ばれた青銅の冒険者を助け起こす。


この冒険者二人の能力は、人の中でもその身体能力が高い部類に入るだろう。

この“アベル”にも歴史上様々な国が生まれてきているが、どの国においてもこのような戦闘能力を高めた冒険者が、“デトニクス・カッツェ”のような魔獣の討伐を行う。

また、このような戦闘能力の高い者を傭兵として軍に組み込み、戦争に利用してきたのである。

この冒険者二人の能力は、人の中でもその身体能力が高い部類に入るだろう。

本来なら冒険者は狩りを生業とする者を指すが、現在のこの“アベル”の状況下では少し違った意味を持っていた。

アベル”は幾多の大戦を経て現在の数か国に別れ、その勢力図は刻々と変化している。

そのため軍事力の強化に余念が無く、また経済面や資源開発面といったことから冒険者や資源の確保が必要であった。

そのため狩りを奨励し、その確保を図った。

結果それは組織化され、狩り”を取り仕切る“ギルド”という組織が生み出され、その管理化の下に冒険者や資源の確保が進んでいた。


「それじゃあ、持てるだけでいいから剥いでおいてね。マリーゼ達を見てくるから」

「はぁい、わっかりましたあ」

「まったく、調子いいんだから」

「えへへ、いってらあ」


チェシャの屈託ない笑顔での返答にモデナもあきらめ顔で、残る仲間のマリーゼ、メルモのいる方へと駆け出していった。

元々書いてあった作品を手直しして、アップしていきます。


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