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始めました、JK家政婦!?


 改めて家事をする契約だが、何をすればいいのだろうか?

 初となる桜華さん宅への出勤日を迎え、ぼんやりと考え事をしながら帰路についていた。数日前に大掃除をしたばかりで、さすがに前のように散らかっていないと思う。

 そうなってくると必然的にやることは一つ、夕食作りの料理だ。


「桜華さんって、嫌いな物とかってあるのかな」


 食生活からしてコンビニや総菜が多く、勝手に好き嫌いがないかと思い食材を買ってきた。レシピだってネットで調べながら作る予定で、塩と砂糖さえ間違えなければいけそうな気がする。

 今日作るのは、肉じゃがだ。

 いつもだったら家の部屋番号を押すが、今日は桜華さん宅に行く。

 ちょっと違和感がありながらも桜華さんを呼びだす。


「……まだ帰ってないのかな?」


 だが、いくらボタンを押してもでる気配もない。

 だからトーク画面を開いて一文を打ち込む。


《仕事中ですか?》


 すぐには返ってこないと思ったが、既読は秒でついた。

 かと思えば、通話画面に切り替わる。


『ごめ~ん、カギ渡してなかったよね』


「それは大丈夫ですけど、どうしましょうか?」


『今駅前だから、あと五分で着くと思うから待ってて』


「……待ってって言われても、どこにいよう」


 元よりここの住人だし、オートロックを解除して中には入れてしまう。それにここで桜華さんを待ってもいいが、近所の住人と顔を合わせる可能性がある。警備の人にだって不審がられてしまう。

 一方的に切られた画面を見つめ、私は家の鍵を取りだした。


「家の前で待とう」


 いつものようにロックを解除して、エレベーターに乗り込んで七階のボタンを押した。

 駅からこのマンションまで、歩いて十五分ほどはかかる。それにどれだけ走ったとしても駅前の横断歩道で足止めされると、もう少しはかかってしまう。

 だから無難に家の前で待たせてもらうことにする。


「ご、ごめん……寒かったよね」

「そんなことはなかったですよ?」


 予想していた通り、肩で息をする桜華さんは二〇分ほどかけて到着した。

 朝晩は肌寒かったりするが、今日は比較的に温かい方な気がする。それに私が勝手に待っていたので、桜華さんが謝ることじゃない。


「ど、どうぞ……」

「お邪魔します」


 息絶え絶えの桜華さんに招かれ、二度目となる訪問。見知った間取りだから新鮮味もなければ、こう改まるのも変な気がした。


「……」


 それでも別の生活を送っているからか、空気が……いや、匂いが違う気がした。


「……どうかした?」

「あ、いえ、キレイにしてるなぁ~思って」

「あはははは~それはそうだよぉ~」


 つい数日前までは山の段ボールとゴミ袋が散らかっていたのを忘れたのか、桜華さんは笑いながらリビングへと消えていく。

 その後を追うように、私もリビングへと足を踏み入れた。


「……ですよねぇ~」


 キッチンを覗き込むと洗われていないグラスが数個。食卓には総菜の空きパックやお湯を入れるだけで食べれるカップスープ、その際に使った割り箸やスプーンが放置されていた。

 私がいなかった間の食事だというのは目にみえる。


「子供じゃないんですから、まったく……」


 このだらしなさが惨状を生み、こうして私が来ることになった。前まではどうやって生活をしていたのかが不思議でしょうがない。

 食卓に広がったゴミをコンビニの袋に入れ、さっそく洗い物を済ませる。


「なぁ~にしてるの?」

「桜華さんがやらない家事ですよ」


 リビングに姿がないと思えば、桜華さんは寝室に入ってスーツから着替えていたようだ。

首もとがよれたロンTにホットパンツと、ラフで動きやすい恰好でキッチンを覗き込んできた。

 まるで夕食を楽しみにする子供のようだ。


「やっぱり待たせたの怒ってる?」

「怒ってないですよ」

「……本当に?」


 やけにしつこいので、私は強引に話題を切り替えた。


「それより桜華さんって、何か食べられない物とかってあるんですか」

「だいたいは食べれると思うけど……それがどうかしたの?」


 私がここにいる理由を忘れたのか、桜華さんは不思議そうに首を傾げた。

 ……あれ? 何か噛み合わないぞ?

 学校が終わって立ち寄ったスーパー、そこで夕食の材料を買ってきてしまった。

 噛み合わない疑問を解消するため、私は手にしている袋を掲げる。


「普段はあんまり料理しないんですけど、夕食に肉じゃがでも作ろうかなって買ってきたんです。……迷惑でしたか?」


 何か不思議なモノを見る桜華さんは瞳を丸くさせ、しばらく黙り込んだまま瞬きを繰り返す。


「え、本当に作ってくれるの」

「その、迷惑だったら申しません」

「むしろ大歓迎だよ! 今どきの女子高生って料理もできるんだね。いやぁ~これが女子力っていうのかなぁ~」


 顎に手を当ててしみじみと頷く桜華さんは、興奮冷めやらない様子ではしゃぎだす。

 そ、そんなに喜んでくれるとプレッシャーだな。

 制服の上着を椅子の背もたれにかけ、ワイシャツの袖を捲ってキッチンに立つ。スマホで調べたレシピサイトを開きながら食材を広げ、必要なキッチン道具を探した。

 とりあえずまな板と包丁、それとお鍋か。我が家だったらここにあるけど……ああ、ある。あとは調味料系だけど……あるのかな?

 どんな私生活を送っているかわからずとも、惨状を目の当たりにしている。

 だから料理すらしないものかと思っていたが、キッチン道具の一式が揃っている。むしろ、家にはない道具もあった。

 炊飯器のようで見た目は鍋に近く、押すボタンもいくつもある。

 ……どう使うんだろう?

 ちょっとした興味を抱きつつも、戸棚の下から食器棚に視線を向ける。


「桜華さん、調味料ってどこかに無いですか」

「ん~あったようなぁ~なかったようなぁ~どうだったかなぁ~」


 気の抜ける間延びした声にリビングを覗くと、桜華さんはソファの上で寝そべっていた。枕に顔を埋めたうつ伏せの状態で両足をパタパタとさせ、観るでもないテレビからはニュースを流している。

 明らかに仕事終わりの疲れた様子で、起き上がる気配すらなかった。


「夕飯できるまで時間ありますし、部屋で寝ててもいいですよ」

「眠いわけじゃないんだけどねぇ~こうしてると落ち着くんだよぉ~」

「はぁ……」


 私にはよくわからない考えで、同じ動作を繰り返す桜華さん。

 かといって私が口を挟む理由もなければ、桜華さんが家でどう過ごそうが自由だ。それ以上は特に会話をするでもなく、残り僅かの調味料を発見して料理に取りかかった。

 まずは野菜の皮むきからか。

 ネットで調べた浅い知識と、調理自習の数少ない経験から真剣に取り組む。恐らくどの授業よりも真面目で、今までにないくらいの緊張感で進めていった。



「よし」


 それからどのくらい経ったのか、ようやく夕飯の肉じゃがが出来上がった。

 個人的には少し味が薄い気がするけど、なにぶん調味料の残りが限られた状況。今度買い足しておかないと。


「って、ご飯炊き忘れた!?」


 ようやくひと段落ついて気づく、主食がない事実。

 今から炊くにも最短で三〇分はかかるし、出来立てを前にすぐに食べられない私の準備不足。

 ……お母さん、よく毎日やってるな。

 家では当たり前だったけど、自分でやってみて改めて気づかされた。


「どうかしたのソラちゃん?」

「あ、その……夕飯できたんですけど、ご飯を炊くの忘れちゃって」


 どこか不思議そうな顔で覗き込む桜華さん、頬にはくっきりとクッションの跡が残っている。私が叫んでしまったからか、寝ていたところを起こしてしまったかもしれない。


「ん? それならチンするご飯があるし、お味噌汁もインスタントがここに」


 戸棚の上。桜華さんはどこか手慣れた感じで漁り、スーパーで見慣れたパックを二つ。お湯で溶かすタイプの味噌汁を引っ張りだしてきた。

 非常時の印象が強かったが、こうした場面で役に立つとは。


「ん~美味しそうな匂い」

「自信はないですけど、残りはタッパーに入れて明日にでも食べてください」

「……あれ、ソラちゃんは食べてかないの?」


 まるでさも当然のように言われ、私は言葉を詰まらせてしまった。

 だって、家に帰ればお母さんが夕飯を用意してくれている。こうしてキッチンに立ったのはあくまで仕事としてで、私の分は用意していない。

 桜華さんが一人で食べるにしては多すぎるくらい作り、明日の分を想定していた。

 だから予想外の申し出。


「ほら、この前のケーキが残ったままだし」


 冷蔵庫から取りだされたケーキの箱を見せられ、悩む間もなく首を縦に振ってしまった。


「賞味期限、今日まででしたよね」

「肉じゃがは私が食べるとして、ソラちゃんはこっち」


 夕食の光景としては不思議だったが、私と桜華さんは一緒に食事を摂った。

 何度も味見をした肉じゃがを、桜華さんは一口頬張るたびに美味しいと言ってくれる。最初は不安だったけど、その姿を見ているだけで嬉しい気持ちでいっぱいだった。


「ソラちゃんは料理上手だね」

「そんな大げさですってば」


 満足げに食べ続ける桜華さんはおかわりまでしてくれて、最後にはリクエストまでしてきた。

 ……これは、本格的に料理を勉強しよう。

 ちょっとした私へのご褒美的なケーキを頬張りながら、そんな決意を胸に抱いた。


「あ、お風呂も沸いたみたいですね」

「そんなことまで……いや~至れり尽くせりだぁ~」


 とはいえ、ただボタンを押しただけだ。

 驚いたかと思えば、臆面もなくだらしない笑顔の桜華さん。さっきまで疲れてソファに横になっていた姿はどこへやら。

 そんな無邪気な桜華さんを前に、私も笑い返す。


「少しは自分でやるクセをつけてくださいね」

 唇を尖らせてどこか子供っぽく拗ねる桜華さんだったが、食べる手を一切止めずに肉じゃがを平らげてくれた。

 初日としては無事に終え、私は帰路に就く。

 とはいえ、上の階に行くだけで苦はない。


「ふぅ~ちょっと疲れた」


 制服からルームウェアに着替えないままベッドに倒れ、見慣れた天井を眺めた。

 誰かに何かをしてあげる。

 改めて振り返ってみると、不思議な感覚だ。


「ん?」


 唐突に鳴ったスマホの通知音に、私はどうにか気力で起き上がる。鞄の脇ポケットからスマホを取りだすと、桜華さんからの通知が届いていた。


《次は日曜日ねぇ~》


 その一文に添えられ、元気よく動く犬のスタンプが送られてきた。

 ……不思議な人だな。

 学校の友達、楓や夢凪とは違う関係。

 だけど自然と嫌じゃないというか、心が落ち着ける場所だ。


《肉じゃが、早めに食べてくださいね》


 だから私も、年上というのを抜きに気さくな文面で返した。

 こういう時、夢凪に素っ気ないと言われる。既存の絵文字すら使わず、スタンプだって買ったことがない。

 いつも私なりに考えた文面だが、桜華さんはどう感じるのだろうか。

 どんな返信が来るかつい待ってしまい、暗くなる画面を点けてと繰り返す。


《ソラちゃんらしい文面だねw》


「わ、笑われた?」


 どこが私らしいのか、むしろ笑われる要素がどこにあるのか疑問だった。

 それを桜華さんに訊いてもいいかとスマホを握りしめ、フリップ画面を何度もスライドさせて打っては消すの繰り返し。

 結局送ることはせず、私は再びベッドに倒れ込む。


「私って、どんな風に見られてるんだろう」


 誰かにどう見られているかなんて、桜華さんと知り合う前まで気にしたことがなかった。楓や夢凪と一緒にいる時は着飾るどころか自然体な気がするが、桜華さん相手にはどこか背伸びした感覚はある。

 年上相手に肩を並べたいとか……変なの。

 私以上に家事が出来ないどころか、生活力が欠けている桜華さん。まだ高校生の私に面倒をみてもらうのに必死で、今までどんな生活をしてきたのか不思議でしょうがない。

 ちょっと前まで進路のことで悩み、解消したかと思えば別なことで頭を抱えている。


「次は何を作ろうかな……」


 ダウンロードした料理アプリを開き、ベッドにうつ伏せになりながら検索していく。


◇    ◇     ◇


 迎えた日曜日。


「桜華さん! どうしてこんなに洗い物ためてるんですか!?」

「いやぁ~忙しくてさぁ~」

「だとしても! せめてネットに入れるとかしてくださいよ!!」


 特に時間を決めていたわけでもなく、私はお昼前くらいに桜華さんの家を訪ねた。

 まあ、想定内といわんばかり洗い物はされておらず。食べたゴミもまとめられていなかった。

 そして今回、新たな事実に驚きを隠せないでいる。

 桜華さん、ここまで何にもできないなんて……。

 家事をする条件として、日曜日は桜華さんと一緒に家事をする日。

 その第一歩として洗濯を教えていた。


「はい、ワイシャツはこれに入れてください」


 こうも大・中・小に始まり、ネットの網も用途に応じた種類で用意されている。にもかかわらず、桜華さんは使うどころか一緒くたにしていた。しかも洗濯機に無造作に放り込み、まとめて洗っていたらしい。

 日常的に私も着るワイシャツ、下着は当たり前のようにネットに入れている。家庭的にも女性比率が高いから、普通のことだと思っていた。


「へぇ~こう使うんだね」

「感心してないで手を動かしてください」


 脱衣所に引っ張りだした衣類を床に広げ、丁寧にネットへと入れる仕分けをしていく。

 現に今、ため込まれた一週間分の量が多いため第一弾が回っている。


「ソラちゃんってマメだよね」

「……いや、普通じゃないですか」


 キッチンの洗い物をしたい気持ちもあるが、今日は一緒にする条件だ。それに目を離したら何をしでかすかわからない。

 どっちにしても不安なのだ。

 それからしばらく手を動かし、第一弾が終わったら干す。第二弾を回しながらキッチンへと移動した。


「それにしてもお腹空いたよね」

「……そういえばお昼過ぎてますね」


 時計を見ると、お昼は当たり前のように過ぎていた。

 学校がないから普段より遅めに起きて、朝食もつい数時間前に食べた感覚だ。けど桜華さんの言う通り、私も少しお腹が空いていた。

 ……かといって食材があるわけでもないし、今から買いに行って作ると時間かかるよな。

 冷蔵庫の中が空っぽなのは把握済み、最寄りのスーパーに行ったとしても買いそろえておきたい物が多すぎる。

 気がついたら夕方になってしまいかねない。


「ねえねえソラちゃん、何食べたい」

「……え?」


 スマホの画面をみせてきた桜華さん。どうやらデリバリーで済ませるつもりのようだ。使わないサービスだけど、お店で食べるより割高なのは知っている。それをわざわざ私の分まで注文してもらうのが申し訳ない。

 どうにか断ろうと言葉を探していると、桜華さんは笑いかけてきた。


「そんなに気を遣わないでよ。ソラちゃんには家事やってもらってるし、私なりの恩返しってわけじゃないけど……甘えてくれない?」


 柔らかな表情で真っすぐと見つめられ、戸惑いを隠せなかった。

 どうしてそこまでしてくれるんだろう。

 不思議な感覚に桜華さんの顔が直視できず、私なりに妥協できる案を提示した。


「バイト代から差し引いておいてください。だったらその、一緒に食べます」

「もぉ~そういうマジメなところがカワイイなぁ~」

「ちょ、抱き着く必要あります!?」

「で、で、何食べたい? 実はソラちゃんが好きな物とか知っておきたかったんだぁ~」


 喜びを行動で示され、桜華さんに抱きしめられる私。必死に抵抗して逃れようにも力強く、まったく耳すら貸してくれない。

 人目もないからと抱き着かれ、同性的にも負けた気分が否めなかった。

 ……はぁ、桜華さんといると調子が狂うんだよな。

 あれこれとデリバリー対応店をみせられ、色々と興味が惹かれて決められない私を桜華さんは責めない。

 どころか、抱き着いたまま離れないでいる。


「あ、このお店とかもおススメだよ」

「桜華さん……苦しいですってば」


 かなりの距離感で詰め寄られながら、桜華さんが勧めてくる物を注文した。

 それから料理が届くまで洗濯物の第二弾を干し、キッチンの洗い物を済ませておく。


「……て、桜華さんいないし」


 気づいたら私が全部やってしまい、本来の目的を果たせていなかった。部屋中を探し回るも見当たらず、足を踏み入れていいのかわからない二部屋を目の前にする。

 隠れる場所としてはここか、寝室くらいしかない。だけど最初、桜華さんは物置で使っていないと言っていた。

 けど、気にはなる。


「桜華さん、どこにいるんですか」


 あえて声を大きく張り、ゆっくりと扉の方へと近づく。


「ソラちゃん? 何か用だった」

「お、桜華さん!?」


 すると玄関が開く音に続き、桜華さんの声が聞こえてきた。

 そ、外に行ってたのか。

 悪いことをしたわけでもないのに鼓動が早くなり、咄嗟にその場から離れた。

 不思議そうな顔で首を傾げる桜華さんの手には、近くのコンビニ袋が揺れている。


「ど、どこ行ってたんですか」

「ん? 近くのコンビニだよ。最近出た新しいスイーツ、食後にどうかなぁ~って」


 一目見ればわかりそうなことを訊いてしまったが、桜華さんは気にした様子もなく袋を顔の前で掲げる。

 しかもそのタイミングを見計らったかのようにデリバリーも届く。

 普段は駅前で目にするだけで、一人で入るにもどこか敬遠しがちだったチェーン店。こうも簡単に注文できて、食べれるとは思ってもみなかった。


「さぁ~て食べよ」


 ガサゴソと袋を広げる桜華さんと向かい合い、少し遅めの昼食を摂った。

 勝手に他の部屋に入ろうとしたことは咎められず、コンビニで買ったというスイーツを色々と勧めてくる。甘い物は嫌いじゃないどころか、むしろ好きすぎてお小遣いが足りなくて断念する時があった。

 まるでそれを察したかのように、テーブルには我慢して手がでなかった物が並んでいる。


「ソラちゃんが好きなの食べていいよ」

「い、良いんですか」

「そのために買ってきたんだもん、遠慮しないで」


 そんなことを言われると、つい悩んでしまう。

 けど桜華さんは、そんな私を見てただ笑みを浮かべている。

 ……うぅ、恥ずかしい。

 結局欲望には争えず、私は桜華さんの誘惑に甘えた。

 それから夕方まで家のことを済ませ、桜華さんの要望で作ることになった夕食の食材を買いに向かう。調味料系も買っておきたかったので、桜華さんにも付き添ってもらう。


「いやぁ~休日だけあって混んでるね」

「そ、そうですね」


 近所とはいえ、よく帰りにおつかいを頼まれてくることはあった。

 ただ同じ夕方でも、平日か休日という違いだけで混み合っている。私はカートを押しながら、必要な物をメモしたスマホと睨めっこ。

 隣では、桜華さんが目についた商品を手に真剣な顔をしていた。


「このキャベツの山、どう積んでるんだろうね」

「下手に触って崩さないでくださいよ」


 こんな感じで行く先々で立ち止まっては不思議そうな顔をして、私に質問を投げかけてくる。

 特に多かったのは、惣菜コーナーだった。


「ここのきんぴら美味しいんだよね。あ、このマカロニサラダも。そういえばこのミックスサラダ、どうやってこんなに細く切ってるんだろう」

「が、頑張れはどうにかできるんじゃないですか」


 お店に並ぶレベルを求めているのか、桜華さんの期待じみた圧に苦笑いで答える。

 だって私にはできないし、料理を始めたのだってここ最近のことだ。味付けですら桜華さんの好みに合ってるか不安で、レシピ通りだとしても自信がない。


「ソラちゃんはできたりする?」


 桜華さんに見つめられ、私は無言でカートを押して通り過ぎる。


「今日の夕飯、カップ麺でいいですかね」

「ごめんってば、ちょっとした興味できいただけだから。お願い、夕飯にカップ麺は止めて!」


 人目を憚らず叫ぶ桜華さんは、まるでお菓子を強請る子供のよう。

 しかも甘えたように腕を絡められ、その場から逃げるにも身動きが取りづらい。


「わ、わかりましたから離れてください」

「ホント? カップ麺じゃない? お願いした鍋にしてくれる」

「しますします。煮込むだけで簡単ですから」


 本日の要望はお鍋。

 あまりにもざっくりとして、季節的にも少し遅い気がする。

 ただ、私的にはありがたい。だってお肉や野菜を入れて煮込むだけ。市販のお鍋セットだってあるし、味は確約されたのも当然だ。

 少なくとも桜華さんの要望には応えられる。

 あれこれと騒がしい買い物を済ませ、私達はスーパーを後にした。


「お米って結構重いんだね」

「私もちょっと買い過ぎた気がします」


 何かと忙しかった一日だけど、今までにない充足感に満たされていた。

 桜華さんは米袋を片腕に抱え、私が持つ食材や調味料が入った袋の片方を手にしてくれている。

 こういうちょっとしたところ、桜華さんって気が利くよな。

 私が何かをしてほしいとか、お願いしたでもない。まるで当たり前のように手を差し伸べてくれて、何食わぬ顔をしている。

 子供っぽい一面に隠れた、気遣いのできる大人の女性。

 そんな姿に魅入ってしまう。


「どうかしたソラちゃん?」

「な、何でもないです」

「……そう?」


 日も浅ければ、こうして両親や学校の教師以外の大人と接すること機会がない。

 だからなのか、桜華さんのことをもっと知りたいと思ってしまう。

 咄嗟に否定した半面、どう切りだしたものかと頭を悩ませる。


「ソラちゃんってさ、言葉にはしないけど表によくでるよね」

「な、何がですか」

「そういうところ、私の何が知りたいの?」


 横目で盗み見られ、私は足を止めてしまった。


「その……あれです。桜華さんって不思議な人だなぁ~って」

「え、どの辺が?」


 驚いたような顔をする桜華さんに、私は身の上話を口にする。


「私の二つ上にお姉ちゃんがいるんですけど、頭も良ければ運動もできるんです。しかも両親の期待通りいい大学に行くし、私なんかと比べられないんですよ」

「それがどうしたの?」


 あまりにも唐突だったからか、立ち止まる桜華さんは振り返っていた。

「それで進路のことで悩んでたらナンパされるし、桜華さんと助けられてこうして一緒にいて気づくんです」


 こうして今、桜華さんの家で不慣れながらも家事をするようになった。いつもはお母さん任せのこともやってみて、改めて実感する。


「……私って、何にもできないんだなって」


 ただ何となく過ごして、桜華さんと関わったことで変わった気でいる。

 そう、思い込んでるだけなのかもしれない。


「そんなことないよ?」

「ありますってば!」


 優しく否定してくれた桜華さんに対して、どうにか笑みを繕って即答していた。声が少しだけ大きくなった気がしたけど、真っすぐと桜華さんを見つめる。


「だってあの時、誰も私のことを助けようとしなかったのに桜華さんだけは違いました。お互い同じマンションに住んでるって知らない初対面で、その場限りの偶然だったと思います」


 何を伝えたいのかわからない。


「大人としては頼りになるのかなって思えば生活力はないし、挙句、こうして私が家事をやることになってますし……」

「それは、申し訳ない」


 片頬を吊り上げる桜華さんは、気まずそうに視線を落としてしまう。

 違う。そんな表情をさせたいわけじゃない。ああダメだ、こんなことを伝えたいわけじゃないのに。


「別に家事をやることには文句はないですよ。あったら即断ってますし、同じマンションだから顔を合わせないようにすると思います。もしもエントランスとかで鉢合わせても他人みたく接するか、態度悪く無視するかもしれません」


 本当にそうだろうか。

 言葉として口にして、そんな疑問が過る。

 一瞬で冷静になった思考を遮るように、桜華さんは手を重ねてきた。


「ソラちゃんが言う通り、私は確かに家事ができないよ。他人任せだったし、こうして年下の女子高生に頼ってるしね」


 自虐的に笑う表情ですら大人っぽく、隠れた素直な側面が子供っぽい。

 そんな桜華さんだから、惹かれたのか。


「……仕事ができるかと訊かれると胸が張れるわけじゃないけど、まあ頑張ってる」


 どんな風に働いているのかも気になる。

 年の近いお姉ちゃんとは違って、頼りになりそうでそうでない。むしろ、私がしっかり支えないといけない気がしてしまう。

 勝手かもしれないけど、そんな気持ちを抱いている。

 これをどんな感情として片づければいいのかわからない。


「出来るだけ負担にならないよう家事も頑張るかさら、もう少しだけ一緒に――」

「いますよ」


 驚いたように目を丸くさせる桜華さんに、私は改めて向かい合う。


「あんな生活を続けてたら異臭騒ぎになりかねないですし、助けられた分は働きます」


 生意気かもしれない。


「ん~それにしては、私の方が助かってる分が多いと思うんだよなぁ~」


 困り果てる桜華さんに、私は笑い返す。


「だったら少しでも家事ができるようになってください」


 家族である両親や出来のいいお姉ちゃんに、私は頼りたかったのかもしれない。

 本当は進路のことで悩んでて、期待には応えられないかもしれない……と。

 それを聞かされて両親の失望や落胆、お姉ちゃんからの励まされたいわけじゃない。申し訳ない気持ちはあるけど、今はまだ温かく見守ってほしいと思ってる。

 けど、桜華さんと知り合って考え方が変わりつつあった。


「はい、頑張らせていただきます」

「それなら、さっそく帰って夕飯づくりですね」


 どうなるか未来(さき)のことはわからない。


「え~今日はソラちゃんの手料理が楽しみだったのになぁ~」

「ダメですよ。日曜は一緒にやるんですから」

「もぉ~マジメだなぁ~ソラちゃんは」


 隣にいる桜華さんをみていると、大体のことが何とかなりそうな気がしてしまう。

 楽観的なところは私なりにあるかもしれないし、お父さんやお母さん。それにお姉ちゃんも含め、楓先生からも呆れると思う。

 ……夢凪は何となく、受け入れてくれそうな気がする。

 何を伝えたかったのか私の言葉は結局のところは支離滅裂で、この気持ちを素直に桜華さんへ伝えられなかったと思う。

 だけどいつか伝えたい。

 ありがとう、と。


「……ソラちゃん、どうかした?」

「な、何でもないですよ」


 桜華さんと目が合い、まるで私が心に思ったことを見透かされた気がした。

 だから慌ててそっぽを向いて、いつまでも重ねられていた手から逃れる。

 ダメだ。桜華さんって意外と勘の良いところがあるから、気づかれるかもしれない。


「え、怒らせた?」

「何にも怒ってませんよ」


 離れるように私は歩き出すも、レジ袋の片方を桜華さんが持っている。

 だから必然的に離れられず、あっという間に追いつかれてしまう。


「……なんですか?」


 私より背の高い桜華さん。覗き込むような視線に、目を細めてしまう。


「最初会った時より、なんか表情が柔らかくなった気がしたんだ」

「そんなに気難しそうな顔してました?」

「たぶん?」

「なんですかそれ」


 掴みどころのない桜華さんに、私はただ笑うしかなかった。

 桜華さんとこうしているだけで、気持ち的な部分が自然と軽くなる。もしかしたら進路のことで気を張りすぎて、言う通り表情にもでていたのかもしれない。

 夕暮れ時の帰り道、見慣れたはずの光景が少しだけ違ってみえた。


◇    ◇     ◇


「指切ったぁ!?」


 帰宅した桜華さんのキッチンに、さっそくそんな悲鳴が上がった。


「も~だから左手は猫の手ですってば」

「したもん! けどなんか、切るってだけで緊張しちゃって」

「なんですかそれ」


 大げさに怯え、包丁を握っていた右手をみせてくる桜華さん。

 ……それくらいの余裕があるならいっか。

 左人差し指の折り曲げた第二関節部分を口に銜え、今にも泣きだしそうな桜華さんの背中を押す。


「はいはい、今手当しますから座ってくださいねぇ~」

「ねぇ、子ども扱いしてない」

「してませんよぉ~」


 特に難しいことをお願いしたわけでもない。

 一人暮らしで料理も普段からしない桜華さん。それにあまり料理のレパートリーが少ない私が選んだ、四分の一サイズにカットされた白菜。今日と明日で使いきれるだろうと見越して買ってきた。

 それをただ、適当なサイズに切ってもらうだけ。

 根元の硬い芯も落とし、大丈夫だろうと高を括ってしまったのが敗因か。私も買ってきた食材や調味料をしまうために目を離していた。

 その一瞬、第一刀目で切ったようだ。


「後は私がやりますから、大人しくしててください」

「けど、一緒にって」

「……いや、どっちなんですか」


 ついさっきまではやらずに、私が作ったのにたかる気満々だった。こうしてやる気をだしてくれるのは嬉しいけど、急を要したのかもしれない。

 手のかかる妹のようで、年上であることを忘れてしまいそうになる。


「まったく、次は気をつけてくださいよ」


 手当を済ませた私は、キッチンへと向かう。

 その後ろを、桜華さんがついてくる。

 どこか申し訳なさそうな表情で、ジッとこちらをみつめてきた。


「……なんですか」

「他にも何かできないかなぁ~って」

「夕飯ができるまで好きにしててください」


 今日は何かと時間を使ってしまった。

 元より、私がここに来るのが遅かったというのもある。……まあ、特に時間とかを決めていたわけでもないから仕方ない。

 次、気をつければいいのだ。

 この生活にもしだいに慣れていくだろう。

 だけど、帰りが遅くなると両親から色々と疑われてしまう可能性がある。胸を張ってアルバイトをしているにしても内容が不明瞭で、だからといって楓や夢凪に毎回言い訳づくりを頼むのも迷惑をかけてしまう。

 両親が疑わずとも、楓や夢凪が心配してくる。

さてさて、どうしたものか。


「桜華さん、そろそろ夕飯できますけど……?」


 適当な大きさにお鍋の野菜をカットし、市販で買った素を入れて煮込むだけ。情緒がないとわざわざカセットコンロまで買い、一緒に鍋をつつきたいとのこと。

 辛いのが好きとのことで、無難なキムチ鍋。

 本当は韓国のカムジャタンとやらをせがまれたが、残念なことに私は食べたことがない。だからでもないが今日は妥協してもらい、いつか機会があればと内心では思っている。

 ……そんな日がくるのだろうか? そうだったとしてもまだ先の話で、私がこの家に通っているのですら疑問だ。

 リビングから聞こえてくるTVの音に引きよれられ、私は顔を覗かせた。

 そこには桜華さんの姿はなく、ただ点けられたTVから明日の天気を知らせてくる。


「……桜華さん?」


 もしかしてお風呂かと思ったが、そんな気配はしない。

 料理に集中していたからか気づかなかったのか、忽然と桜華さんがいなくなっていた。


「もぉ~出かけるなら一声かけてくれればいいのに」


 玄関まで行くと靴はなく、私のくたびれたスニーカーだけが置かれていた。

 見た目と年齢からすれば大人だが、掴みどころもなく感情表現が豊かなところは子供。こうも不意にいなくなられると、つい心配してしまう。


「あれ、ソラちゃん。……どうかしたの?」


 すると、タイミングよく桜華さんが帰宅した。

 手には小さな白い箱を持ち、悪さがバレた子供のような表情を浮かべる。


「どうかしたのはこっちのセリフですってば、どこに行ってたんですか」


 だからあえて、両手を腰に当てて立ちはだかる。


「そのぉ~これを買いに行ってまして……」


 おずおずと手渡される箱を前に、私は首を傾げてしまう。

 一見すればケーキでも入っていそうな箱で、それほど重みもない。何かしらのドッキリを仕掛けるために用意したなら、一周回って呆れてしまう。


「ちょちょちょ、ちょっと! なんで箱を振ろうとするの!?」

「え、いやだって、変な物だと困りますし……」

「そんなの買ってこないよ!?」


 気づけば箱の中を確認しようとしない私を、桜華さんは必死になって止めに来ていた。

 指を切って騒ぎ、手伝えることがないかと不安げに訊いてくる。急にどこかへ消えたかと思うと帰ってきて、言動に落ち着きがない。

 子供っぽいのだ。


「ほら、今日は一緒に家事をやる日でしょ? なのに、結局ソラちゃんに任せっきっりだったから、……お礼的なモノを……はい」


 箱を開けてみるとイチゴが乗ったショートケーキ。それにチョコレートケーキとモンブラン、他にもシュークリームやプリンの詰め合わせだった。


「……どこで買ってきたんですか」

「ん? 駅前にあるじゃん」


 同じ最寄り駅の利用者として、記憶を辿ってもそんな場所は思い当たらない。

 けど桜華さんは、不思議そうな表情で目を丸くさせている。


「平日はわからないけど、休日とかけっこー若い人で列ができてたりするけど……知らなかったの?」

「……はい」


 改めて場所を教えられ、確かにあったなと思う。

 興味がなかったというか、特別なことがないとケーキを食べない。コンビニのスイーツですら、少ないお小遣いでどうにか遣り繰りをしている。

 数日前にも似たことがあるが、こうも頻繁に買えるほど私の懐は温かくない。

 ……こういうところはズルいと思う。


「ならちょうどよかった、夕飯のデザートにでもどう?」


 子供っぽくもあり、どこか大人のような余裕の笑み。

 だから私は無下には断れず、首を縦に振る。


「残すのは勿体ないですからね」

「それに今日食べ切らなくても、シュークリームとかプリンは日持ちするからね」


 そこまで織り込み済みで、桜華さんは選んで買ってきてくれたらしい。

 こうして計算高いところは、ずる賢い大人だと思う。

 これは私の偏った考え方なのか、大人は何でも知っているイメージが強い。特にお父さんやお母さん、それに学校の先生。二つ上のお姉ちゃんですら、そんな雰囲気がある。

 まさか、桜華さんまで同じだとは……。


「……なんか、失礼なこと思わなかった」

「いいえ、桜華さんも立派な大人なんだなぁ~って感心してました」

「褒めてるのかな?」

「お鍋の用意できてますから、手を洗ってリビングに来てくださいね」


 笑みを保ったまま瞬きを繰り返す桜華さんを置き去りに、私はキッチンに戻ってケーキを冷蔵庫にしまう。

 何やら桜華さんが言っていたようだが、私の耳には届かない。

 年上なのに年下である私が、こうして面倒を見ている不思議な環境。しかも同じマンションに住むだけの他人で、家族ですらない。

 私のイメージから、姉が妹の面倒を見る構図が強くある。

 それは私がそうされてきたからで、桜華さんはお姉さんらしくない。

 なのに、気分的な感覚は変わらないまま。

 ほんの些細なことだが、いつも私を助けてくれる。買い物の時だってそうだし、夕飯の準備も張りきってくれた。迷惑をかけたからケーキをわざわざ買ってくれて、気遣い上手なお姉さん。


「おお~鍋だぁ~」

「そこって感心するところですか?」

 私的には、土鍋があったのが驚きだ。

 カセットコンロに鍋をセットし、野菜に火が通るまで取り留めのない話をする。近所で私の知らないお店を教えてもらい、点けっぱなしのTVを話題にあげるなど。

 本当にどうでもいい話ばかりをした。

 いい感じに鍋ができると桜華さんは上機嫌になり、口いっぱいに頬張って熱そうにハフハフと食べ始める。

 ただ切って鍋に入れただけなのに喜んでもらえると、こっちも嬉しくなってしまう。

 ……近いうちにでもカムジャタンとやらを作ってみようかな。

 料理のレパートリーが少ないだけあって、美味しそうに食べる桜華さんに申し訳ない気持ちになってしまう。


「あれ、ソラちゃんは辛いの苦手だった?」

「そんなことはないですよ。ただ、次は何を作ろうかなって考えてたんです」


 今さらそのことを気にするのか。

 出来ることなら買い物をしている時に訊いてほしかったけど、辛いのが苦手というわけじゃない。


「はいはい! だったらまた肉じゃがが食べたい!!」


 元気いっぱいに挙手する桜華さんは行儀悪くも、その勢いに面食らってしまう。


「……まぁ、気が向いたらで」


 だから私は素っ気なく返す。


「あれ? 今ってその流れじゃなかった……」


 不思議そうな表情をする桜華さんに、私は口もとを隠して小さく笑う。

 だって、同じ料理ばかりを作るのも飽きさせてしまう。できることなら料理の腕も上げたし、こうして喜んでくれる桜華さんのためなら頑張れそうな気がする。

 さっきまでの不安が吹き飛んだかのように、気持ち的な部分が軽くなっていく。

 桜華さんは、本当に不思議な人だ。

 こうしているだけで心がフワつき、不安なんてまったく感じなくなる。


「ほら、冷めないうちに食べましょう」

「ん~だったらハンバーグとかってどう?」


 キムチ鍋を食べながら、次々とリクエストをしてくる桜華さん。

 私はそれを参考程度に耳を傾け、黙々と食べ続ける。

 この桜華さんへと抱く感情は初めてのことで、少しだけ戸惑いを隠せない。それが表情にでていないか心配だったが、平静を装いながらお鍋をつつく。

 こんなことが本当にあっていいのだろうか?


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