俺の知ってる首無しライダーとなんか違う
「やぁ、俺っちは名無しの元暴走族。これでも昔はブイブイ言わせてたんだぜ。今何やってるのかだぁ?族上がりがやることなんて一つしかないだろ。そう、ツーリングさ」
俺っちは一人真夜中の峠で陽気な声をあげた。この峠は地元では『出る』って良く言われているしいぜ。何がって?あれよ、あれ、首無しライダーよ。だからビビって誰もここを通らねぇ。
「俺っちは怖くなんか無いから毎日通っちゃってるけどな!」
夜中の峠で一人陽気な声をあげる俺っち、完全な不審者じゃん、超浮いちゃってるわ笑。基本誰もこねーから気にするやつなんていないけど。たまに来る奴は元族の俺っちにビビってすぐ逃げる。いや~いい気分だわ~。
「ん?なんだこの音」
そんな風に俺っちがいい気分で鼻唄を歌っているときだった。何かの音が俺っちの耳に飛び込んできたのは。しかも音がドンドン大きくなってきやがる、近づいてきてるってことだ。
「ヒャッホー、まさかお出ましか?この奇妙な音はつまりラップ音ってやつなんだな」
その『音』は近付いてくるにつれ明確に聞こえるようになってきた。リズムよく小刻みに
『パカラッ、パカラッ。パカラッ、パカラッ』っと。
ん?パカラッ、パカラッ。パカラッ、パカラッだぁ?まるで馬みてぇじゃねえか。そして『音』はどんどん近付いてきてついに真後ろの位置までやってきちまった。俺っちは意を決して振り返る。
「やあやあこんな峠を通る俺っちと気の合うライダー君。おめーの奏でる音まるで馬みた…い…だな」
馬だった。まごうことなき馬だった。黒くて、おっきくてなんか怨念宿ってそうな鎧をつけてる。後首がない。
(おっ、俺の目がおかしーんじゃねえぜ。ホントにそうなんだよ)ヤバイ、俺っちとしたことが焦りのあまり一人称が変わっちまった。つーか、いったい誰に弁明してるんだ?
「いや、そんなことどうでもいいんだよ!現実逃避してる場合じゃねえ!」
「そうですね。もっと反応してくれると有り難いです」
そう、馬だけじゃねぇ。上にまたがっているこいつも問題だ。そいつの容姿はヤバイぐらい目につく。
・なんか脈打ってる禍々しい鎧!
・人の顔が張り付いている盾!!
・血が滴り落ちるランス!!!
極めつきはあいつの顔。首がない!馬と同じだから大して驚かないけど!!
「へい、なかなかにイかした格好してんじゃねーか。まるで物語に登場する悪役のデュラハンみたいだぜ」
「まさにそのデュラハンです」
ヒューまさかの本人だったぜ。
俺っちの勘も捨てたもんじゃねぇ
「ご本人とは驚きだぜ。伝説とは違う格好してるじゃねーか。彼とは実は別人だったりする?」
「いえ、イメチェンしただけであってあれも僕ですよ?他にもド○クエとかにも出てます。ああいうの全部僕です」
「大御所中の大御所じゃねえか。何でこんな日本の片田舎にいるんだよ!!こう、もっとなんか雰囲気あるような城で待ち構えてろよ。後でサインちょうだい、自慢しちゃう」
「ふふっ、いいですよ。ここにいるのは『首無しライダー』が出るって有名だからですよ。同じ首無しだから仲良く出きるんじゃないかと思って…後ワンチャン僕でもイケるんじゃないかと」
「意外とノリ軽いな…」
こんな風に俺っち達はいる場所の雰囲気とは裏腹に和気あいあいと話し込んだ。話している時間は長くても数分だった。けど、その数分で俺っちはこのデュラハンがまるで長年のマブダチのように感じた。つまりアホほど馬が合った。
………馬だけに。しかし、この楽しい時間ももうそろそろ終わりになっちまう。いや、一段落つけなきゃいけねえが正しいか。俺っち達の目の前に車が見える。
「おう、兄弟。わかってるな?」
「ええ、お手並み拝見といかして貰いますよ、先輩」
「ヒャッハー、仕事の時間だぜぇ。俺っちこそが『首無しライダー』今晩はなんとスペシャルゲストとしてデュラハンも一緒だぜ。盛り上がっていこーぜぇ、フォーー」
目の前の車の持ち主がどんな反応するか楽しみだぜ。
【車の持ち主視点】
俺は今真夜中の不気味な峠を一人車で進んでいる。この峠は地元では元族の首無しライダーが出るって有名なんだ。だからほんとは走りたくなかった。
「ちきしょう、何であんな賭けをしちまったんだ、罰ゲームが重すぎるよ。あいつら鬼か」
俺はこんな場所に来る原因となった友人達を呪った。
「ん?なんだこの音?」
俺は恐怖を紛らわすために大音量で音楽を流していた。だからこんな近くに聞こえるまで気づかなかったんだ。それはまるで馬の蹄が奏でいるような音だった…
サイドミラーに見えてはイケないものが二つ見える。
俺は再度友人達を呪った。
「ねえねえ、知ってる?あの噂。あそこの峠出るんだって!!真夜中に通ると、楽しそうに和気あいあいと話している『首無しライダー』と『デュラハン』が!!」
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