37話 半殺し
冒険者ギルド内売店前
僕は売店で武器を見に来た。<雷切>があるがこれを使うとレベルアップできないので他にメイン武器となるものが欲しかったからだ。
「いらっしゃいませ。あ、橘さんこんにちは」
売店にはミドリさんがいて僕に元気よく挨拶をしてくれた。僕が武器を見たいと伝えると棚からカタログを出して取り扱っている武器を教えてくれた。
「付術武器はいい値段しますので、無付術で切れ味がいいものが良いかもしれませんね」
ミドリさんは二階層しか進んでいない僕の懐具合を考慮してか顎に手を当てながらそういった助言をしてくれた。
確かにカタログを見ると僕では買えそうになかった。また武器ガチャに挑戦してみるか? それより魔法鞄を買うのが先か、うーむ欲しい物は多いのにまだまだお金が足りないぞ。
僕が欲しい装備とこれから必要なお金の計算をしていると、ミドリさんが話しかけて来た。
「あの、今日はニィさんはいらっしゃらないんですか?」
「今日はもう用事があって帰って行きましたよ。何かあったんですか」
「いえ、特に用事があるということはないのですが最近いらっしゃってないのでどうされてるのかなぁと」
ミドリさんは照れながらそう言った。あんなに初対面では嫌がっていたのにこれだからイケメンは役得だな、と僕は密かに思った。
「じゃあ今度会ったらミドリさんが会いたがっていたって伝えておきますよ」
「ええ! そういうつもりじゃ無いんです。ほんと大丈夫ですから」
と僕の提案に嫌がっているような素振りをしつつ本気で拒否もしていない態度を見て、何やってんだかなぁと僕は自身の提案の無意味さについて考えていた。
どちらにせよ所持金では満足には装備を揃えられないので何も買わず売店を後にした。
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孤児院一階食堂内
僕は孤児院に行く途中前に市場で買った食材をマリアさんに渡した。今回も前回と同じく野菜と魚を買ってみた。
「毎回こんなに沢山持って来なくてもいいんですよ」
「いえいえ子供達には大きくなって欲しいですから」
孤児院には現在30人ほどのダンジョン孤児がいる。それだけの人数を養うには食料はいくらあっても足りないだろう。30人の中には当然みゆも含まれている。
「教会の方からも時々頂いていますしあなたは気にしなくていいのですよ」
「教会の方というの<聖白騎士団>の方ですよね?」
「ええそうですよ。それがどうかしましたか」
「彼らについて気になったことがありまして……」
僕は昨日、ニィさんとイチゴが会話していた内容を思い出していた。
ニィさんが<聖白騎士団>の団長━━セシリアを脱退時に半殺しにしたということが気になっていた。
セシリア、当然これは洗礼名であり本名は不明。若干22歳にして教会の冒険者部隊<聖白騎士団>の団長になった女性だ。金髪のロングヘヤー、人懐っこい性格で団員からも好かれていた。僕たちへの支援をしてくれていた人が本当に半殺しにされていたのか、現在はどうなっているのか。僕はマリアさんに何か知っていないか尋ねた。
「セシリア団長の現在ってご存知でしょうか」
「セシリアちゃん、、セシリアちゃんは騎士団の訓練中に事故で大怪我をしてしまって療養しながらも仕事を続けていると聞いていますね。
まだ若いのに魔力神経の破損による下肢の麻痺だなんて可哀想なことです。事故の後は退役するという話も出ていたそうですが団員の説得で辞めずに車椅子に乗り陣頭指揮を取って頑張っているそうですよ」
マリアさんがセシリア団長との孤児院での餅つき大会などといった思い出話をしてくれていたが僕の耳には入ってこなかった。
魔力神経の破損か。ニィさんは<魔素操作>により相手の魔素を乱し魔力神経を破壊することができる。この場合通常医療では治すことは困難だ。僕もニィさんからやり方を習ったがうまく出来なかった。僕は相手の魔素を認識するという段階でつまづいていた。<雷切>を持っているせいで認識が出来ないのか、もしくはこのスキルを使うと確実に相手が壊れてしまうのを自覚していて心のどこかでブレーキをかけているせいかもしれないとのことだった。
下肢の麻痺に対して自殺して蘇生チケットを使わないのは蘇生チケットが高額な為か、自死が怖い為か、寺院が行う蘇生を信用できない為だろうか。確率で蘇生が失敗するらしいが、教会関係者を真面目に蘇生処置するとは思えないので寺院に頼るという選択肢が取れないのかもしれないのだろう。
「今は冒険者活動はほどほどにして街中の警ら活動をメインにしているそうですよ」
マリアさん曰く、セシリア団長の体調が良く無いため<聖白騎士団>はダンジョン攻略はせず、警ら活動を専らしているそうだ。セシリア団長の不在が悪漢による教会施設への嫌がらせの増加を引き起こしていたのだった。また聖女候補生による集会の警護にも人手が必要な為駆り出されているとのことだ。
「その集会というのは僕でも参加出来るんでしょうか」
「集会は本会員の紹介が無いと参加できないですね。その紹介を得るにも本会員への多額な謝礼が必要と聞いていますしあなたにはまだ早いでしょう。横道に逸れず地道に冒険者を続けた方がいいですね」
僕の問いかけにマリアさんは答えた。
「ただいまー」
食堂にみゆが入ってきた。みゆはそのまま食堂の奥にある冷蔵庫まで行き、コップに水を注ぎ水を飲み出した。
時計を見るともう夕方だ。
みゆは学校の部活を終えて帰ってきたようだった。
その後、僕は子供達と一緒に夕飯を食べて帰ることにした。




