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34話 大浴場(2)


 湯に浸かっているマヤを見つけ、イチゴは隣に浸かった。


 イチゴについてきていたのかセツナがその隣に浸かった。


 イチゴは両隣の胸の大きさを見てゲンナリとしつつも、マヤに話を切り出してみた。


「マヤって橘のことどう思ってるの?」


「え? どうって?」


「好きとか嫌いとか殺してやりたいとか色々あるでしょ。そういうことよ」


「あー、普通かなー。強いていうなら可愛いと思うかな?」


「ふーん」


 マヤは橘のことを可愛いと言った。イチゴはどういう事か考えていると、隣のセツナが会話に混ざってきた。


「分かります! 振る舞いが可愛いですよね。でもその中にかっこよさもあって、上腕二頭筋の筋肉や薄く割れた腹筋、長く綺麗な指が素敵なんですよねぇ!」


「えぇ......そうですねー......」


 マヤは急に早口になったセツナに引いていた。マズイ、このままだと1時間はこの調子だ。

 イチゴはセツナに制止すべく話しかけた。


「ちょっとセツナ止まりなさい。

 というかアンタ、橘が装備片付けている時覗いてたわよね。

 みっともないからやめてよね」


「姫、覗いてないです! 偶然見えてしまっただけで、偶然です! まーったくの偶然です!」


 セツナは覗いていないというが、イチゴはセツナの止めどない感情を知っているので、深く追及する事はやめた。


 セツナの抱く感情の一つである、17歳である橘の全裸が見たいという欲求は普通なのだろうか。


 外観年齢12歳のイチゴは外観に精神年齢が引っ張られているため、それは今一理解しがたい欲求であった。

 そして、そういった欲求の残滓が僅かにあってもたちまち、吸血衝動に塗り潰されるイチゴにとっては理解しがたい欲求でもあった。


 イチゴにとっては、ニィさんに殺された時のように、肉体をグチャグチャにされ屈服されたいというのを欲求として持っていた。


 魔素により肉体を自動回復してしまう吸血種族故なのか、イチゴは壊すのも壊されるのも好きであり、破壊衝動や殺戮衝動の方が欲求として強い。

 とはいえ、イチゴのような強者を壊せる者はなかなかおらず、壊す者として鬱憤を晴らす事が多いのだが。


 人を見ればまずどこから壊すかを考えるしどうやって殺そうかを考えてしまうイチゴは、セツナのように男の筋肉や指に綺麗さを見出すことが出来ず、壊す物としか認識が出来なかった。


 そんなに全裸が見たいのなら、この大浴場の壁を壊してみようかしら。それとも、今度橘に頼んでみようかしらと考えていると、マヤはセツナの早口に付き合いきれなくなったのか時間だという至極もっともな理由をつけて、湯から上がって行ってしまった。


 釘を刺しておこうと考えていたイチゴであったが、同じクランになった訳だしいくらでも機会はあるだろうと考え直し、風呂から上がった。


 イチゴとマヤの関係としては、マヤがイチゴのクランに加入申請を出して、イチゴが面接して断った、というぐらいの縁しかない。イチゴは今でも加入拒否して正解だと思っている。


 マヤの境遇が厄介すぎた。

 イチゴは、マヤが教会の造りし聖女候補の1人だというのを聞いていた。


 金銭により文化侵略を行う寺院に対抗すべく、地下に逃げた教会関係者は地下で聖女を造り、失った信仰を取り戻そうとしていた。


 イチゴの聞くところによると、夜な夜な地下で信者と共に多くの聖女候補生たちが集会を行なっているそうだ。

 その集会では、熱狂的な信者が集まっているという。

 彼らは自身の推し聖女候補生へお布施を行い、信仰を示す。

 教会はその信仰を集め、誰からも推される真の聖女を造り出そうとしていた。

 そうした地道な活動で教会は信者を増やしていき信仰を取り戻そうと考えているようだった。


 マヤは聖女候補生らしく外観が優れている。

 女に耐性が無い男が見れば、たちまち魅了されるだろう。

 そんな規格外な人物をクランに入れたら、どうなるか想像に容易い話だった。


 いくらセツナと両思いだとはいえ、橘も例外では無くなびいてしまうだろうとイチゴは考えていた。


 風呂に浸かってサッパリしたイチゴたちは、休憩所で待っていた橘と合流し、昼食を取る為食堂に向かった。

 

TIPS:【エリア管理者と寺院と教会の目標支配の違い】

エリア管理者は『合法的支配』、寺院は『伝統的支配』、教会は『カリスマ的支配』により支配を目指しています。


魔法とモンスターのいるダンジョン世界なので、厳密な定義で見ると異なりますが各勢力の方針はそのような雰囲気で運営してるって感じでゆるふわに捉えてくれればいいです。

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