33話 大浴場(1)
クランルーム
僕たちはダンジョンを潜り終えて、クランルームに戻ってきた。
時刻はお昼過ぎ、とうにお腹が空いている。
「この後どうします? また食堂に行きませんか」
僕はニィさんを誘った。
今日の朝の一件で話す機会が減ってしまっており、会話のきっかけが欲しかったのだ。
脅されたとは言え、ニィさんから教わることは貴重だ。
聞けば何でも教えてくれるし分かりやすい。
スキルの生やし方は、自身がどれだけその動きを熟知しているか、に寄ると僕は推測しているので、ニィさんの技術解説が無ければ何度も同じ動作を繰り返して、自力でスキルを生やすには長い期間がかかっていただろうと思う。
あの野望の件は置いておくにしても、僕が冒険者として大成するにはニィさんに教えを乞うしかないと思えた。
「ごめんね。早速、貴族の困り事の相談が来たから、これからぼんちゃんと話を聞きに行く予定なんだ」
「あぁ、そうなんですか」
断られてしまった。ニィさんは片付けとして<空間収納>に装備を入れ終えると、またねーと言いぼんちゃんを引き連れてクランルームを出て行った。
クランルームに残されたのは、僕とマヤさんとイチゴとセツナの4人だ。
「橘くん、私たちと食事行きましょう」
「そ、そうね! それが良いと思うわ」
セツナが誘ってきて、それにイチゴが同調した。
「良いですね。行きましょうか。
マヤさんもどうですか?」
僕は平静を装ってマヤさんを誘った。
ダンジョン戻りで装備を片付け終えたマヤさんは装備の下に着ていたインナー服のみとなっており、インナー服が汗で張り付いており、体のラインがハッキリと分かって見えて、はっきり言ってかなりエロい。汗ばんでいるマヤさんも良いものだ。
「え、どうしようかな」
マヤさんは言い淀んだ。この三日間は昼飯は僕とニィさんとぼんちゃんの3人で食堂に行っており、マヤさんとは食事が出来ていなかった。念願の食事を誘ってみたのだが、僕と一緒に食堂に行くのは嫌なのだろうか。
そんなマヤさんはイチゴとセツナの2人を見ていた。
「それより先に風呂に行くわよ。
橘アンタ汚れてるわよ。バッチいわね。
風呂入って食事!
それで決まりね!」
イチゴが僕にそう言ってきた。
そうだ、確かにダンジョンから戻ったばかりなので汚れており汗もかいている。
先に風呂に行くのが良いか。男3人では特に気にせず食堂に行っていたがイチゴはそういうのを気にするみたいだし素直に従うのが正解か。
「じゃあ先風呂行ってから合流しましょうか」
僕たちは時間を決めて風呂入ってから集合ということで解散した。
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冒険者ギルド 大浴場 女性更衣室
イチゴたちは大浴場の更衣室に到着した。
更衣室には当然の事ながら女性冒険者しかいない。
マヤとセツナが服を脱いでいく。女性的なラインを持つ2人を見て、イチゴは顔をしかめた。
彼女らと同じように、イチゴはロッカーの前で服を脱いでいき、全裸になった。
ロッカーに衣服を入れ大浴場へと向かう。
向かう途中で体重計に乗る為に洗面台の所まで来た。
洗面台には大鏡があり、イチゴは鏡に映る自身の身体を眺めた。
外観年齢12歳、イチゴが吸血種族となった時から変わっていない外見がそこに映っていた。
吸血種族になるとエネルギーが血液からの摂取となり、老化が起こらなくなる。それは血液の魔素が肉体の形成をその状態で保とうとするからだ。
老化が起こらないとはいえ、多細胞生物である人間には違いなく、厳密には微細ではあるが成長していく。その為、イチゴはせめてもの抵抗として肉を出来るだけ食べるようにしていたが、効果は出ていないようだった。
イチゴは体重を測り終えると大浴場の扉を開き、中に入って行った。
「橘は何なのよ。セツナというものがいながら他の女を食事に誘ったりなんかして」
イチゴとセツナは戦闘には参加していなかったので本来は風呂に入らなくても良かったのだが、橘のマヤを見る目にイラついたため、風呂に入るのを提案したのだった。
イチゴは大事な友人のセツナと橘が両思いだと聞かされている為、イラついているのだが実際はそうではない為、橘の完全なとばっちりである。
洗い場で体を洗い終えると、目的の人物を探して歩いた。
マヤには、ガツンと言っておかなければならない。イチゴは決意した。
マヤにとっては完全なとばっちりである。




