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28話 一件落着

 僕達が巻き込まれた東郷セントラルビルでの騒動は、<中部復興エリア解放戦線>リーダーの守谷キリコの拘束により決着がついた。


 キリコとの戦闘が済んだ後、貴族の衛兵たちが乗り込んできて事態を収束させた。


 犯行の目的はダンジョン化前の世界を取り戻すことだったらしく、その目標は叶うことはなかった。


 全てが解決したこの事件で唯一の不明点は、地下1階の中央管理室を制圧していた解放戦線たちが何者かに気絶させられていたことだ。

 これに対しては内輪揉めか、はたまた第三者の介入なのかと捜査当局も頭を悩ませていた。

 詳細は今後行われる尋問で明らかになることだろう。


 ぼんちゃんやミドリさんにも聞いてみたが特に気づいた点は無いと言っていた。

 そりゃそうか、ぼんちゃんたちは55階にいて地下1階の出来事なんて知れるはずもないか。


 キリコによって異界送りにされたセツナを含めた人質たちは()()()()()()により元に戻された。

 異界送りの送り先が底なし沼や火山の火口の上などに設定されていなかったことが救いだった。

 イチゴは、怪我人を出さず、そういったことをしなかったキリコに殺意が無かったとして減刑を求めて奔走することになるのだが、それは全てが終わった時にイチゴから苦労話を聞くことにしよう。

 セツナが戻ってきて、セツナに抱きついてわんわん泣いていたイチゴからしたら話したくはないだろうけど。




ーーーー




 東郷セントラルビル 60階 宴会場控え室内




 東郷セントラルビル60階の宴会場は、今回の事件があった場所ではあるが、貴族、東郷家の催し物は毎回ここで行っているとのことで、例に漏れずこの宴会場を利用していた。事件から三日後に、何故僕たちは再びそんな場所に来たかというと、事件解決に尽力したとして表彰を受けるため、やってきていたのだった。


「なぁーんで、私がこいつの部下ってことになっているわけ?」

「姫、『こいつ』ではなく東郷家の八男、東郷八郎様です。見かけはあれでもこいつ呼ばわりは失礼かと思います」


 ぼんちゃんこと、東郷八郎は、今回の事件に際し、私兵を使い解決へと導いた功労者、ということになっていた。

 イチゴは不平を溢しているが、ニィさんから『報酬を最大化するため』と『貴族とのコネクション強化』が目的と言われ、渋々納得していたものだった。

 戦闘狂(バトルジャンキー)のイチゴとて、金銭は欲しいし、不安定な冒険者という地位が少しでも安定すればという思いも、少なからずあり賛同していた。



「さてそろそろ私たちの出番だ。行くよ」


 案内人から声を掛けられたニィさんは、僕たちを先導し歩き出していた。


 僕たちはタキシードに、ドレスという正装をしており、この場になんとか馴染もうと努力した格好だ。




ーーーー




 東郷セントラルビル 60階 宴会場




 宴会場内へと拍手で迎えられた僕たちは順番に入っていく。順番はぼんちゃん、ニィさん、イチゴ、セツナ、僕だった。ミドリさんはどうするか?と尋ねたら何もしていないしそういう場に出るわけにはいかないとかいう理由で不参加だった。


 宴会場内は、正面の舞台へのレッドカーペットを境に左右に並んだ観覧者が拍手していた。僕たちはレッドカーペットの上を歩けばいい。歩く場所が分かり易くて良い。

 

 拍手の中からわずかに雑談が聞こえてきた。

「八男は追放されたのでは?何故ノコノコとこのような場所に......」「継承をまだ狙っているのか?」「≪邪剣≫≪吸血姫≫≪守護竜≫、いずれも上位の等級(ランク)A冒険者だ。そんな彼らを従えるとはなんと末恐ろしい」「1番最後の男はなんだ?」「分からん。使用人か?」......がやがや......


 冒険者ギルド認定の等級(ランク)Aの威光は凄まじいもので、観覧者の話題はほとんどニィさんたちの経歴や実績について語られていた。僕についてはほとんどが誰だこいつ?という感想だった。



 レッドカーペットを渡りきり、舞台下で僕たちは片膝をついた。もっとも僕は作法が分からないので他の人の真似をするだけなのだが。


 舞台上から燕尾服を着たおじさんに話しかけられた。

「ご苦労。閣下も今回の働きを褒めておられた。これにより勲章と金一封の褒章が与えられることになった。東郷八郎、前へ」

「はっ」


 ぼんちゃんが呼びかけられて前へと進み舞台の上へと上がっていく。

 ぼんちゃんは燕尾服を着たおじさんから一言、二言話しかけられ勲章と封筒を受け取っていた。

 受け取ると同時に会場内は拍手が鳴り響いた。

 その後はつつがなく式は進み、立食パーティーが始まった。


 僕は高そうな料理に驚き、余ったら持って帰れないだろうかと思いながらメロンの上に乗っていたハムを取り外しハムを食べていた。持って帰れるなら、マリアさんとみゆ用に容器を貰って帰らないと。

 イチゴは取り皿に唐揚げを山盛りに積んでガツガツと食べていた。その風景が異質なのか周りには誰もいない。

 セツナは何やら出席者の男性複数に囲まれて談笑しているようだった。僕の目線に気づいたのか、セツナが僕に向かってウインクし小さく手を振ってきた。

 僕は軽く手を上げてリアクションを返し、目線を切ってニィさんたちを探した。

 ニィさんとぼんちゃんは舞台上にいた燕尾服のおじさんと会話をしているようだった。

 主にニィさんが話しているようだったがここからでは会話内容は聞こえなかった。


「お疲れ様ですぅ!はい、乾杯!」


 ニィさんたちを眺めていたら突然声をかけてきたので振り向くと、そこにはオレンジ色のドレスを着た美少女がいた。見た目の年齢が僕と同じ17歳くらいと思われる彼女は、僕と同じ背丈ぐらいで胸元はしっかりと谷間が見え、足にはスリットが入っておりスリットからは素足が見えている扇情的な格好をしていた。

 僕は乾杯!乾杯!と言われるがまま、手に持っていたグラスをその美少女の差し出すグラスとぶつけた。


「やや、これは失礼したね。私は東郷家の四女、東郷(とうごう)四葉(ヨツハ)と申します」

「え、ええ?」

「そう畏まらなくてもいいよ。そうだね、君に分かり易く自己紹介するなら、

 クラン<ブシドースピリッツ>所属の()()()の方がいいかな?」


 クラン<ブシドースピリッツ>は中部復興エリアの冒険者ギルド内でクランランキング1位のクランだ。


 その所属のミフネというと......そう言われても僕には見当が付かなかった。

 まして貴族の四女という肩書きも合わさって意味不明だ。

 何故こんな場面で僕なんかに話しかけてきたのだろうか。

 ニィさんならこの美少女の素性を正しく知っているだろうか。

 話しかけるのであれば、同性のイチゴやセツナ、それか今回の立役者のリーダーであるぼんちゃんか、ニィさんであって名も知られていない最下級の等級(ランク)Gの僕に話しかける理由が見当たらなかった。


「話しかけようと思ったんだけど、彼女らはなんだか忙しそうでね」


 ミフネはちらりとイチゴたちを見る。なるほど、理由は明確だった。


「初めまして、橘正義です。それでどうして話しかけようと?」


「そんなの決まってるじゃない? 貴方達が助けた十二郎ちゃんのお礼と同じ冒険者としてどうやって助けたのかの冒険譚が聞きたくってね。

 捜査当局に聞いても教えてくれなかったから直接聞こうと思ったわけなのよ。

 本当助けて頂いてありがとうございます。十二郎ちゃん以外にも助けて貰えて本当に感謝しています」


 ミフネは深々とお辞儀をした。


「いえいえ、人助けは当然のことですよ」


 僕は身分が高い女がこんな態度を取ることに充足感を得ていた。

 気を良くした僕は、ぼんちゃんの親族で、かつ僕と同じ冒険者になら言ってもいいかと思い、これまでの流れとどうやって助けていったかをこと細やかにミフネに自慢げに語っていた。

 僕が発する言葉一つ一つに、ミフネがすごいですわ〜などと感嘆し賞賛してくれていたので嬉しくなってついつい話し込んでしまった。

 

 いやぁ人助けはするもんだね。こんな美少女と楽しく談笑できるなんて。


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