24話 東郷セントラルビル(7) ウサギの飼い方
イチゴが壊したエレベーターシャフトの中から、イチゴ達からやや遅れて出て来た、自称≪全世界のお兄ちゃん≫、冒険者ギルドから授与されし二つ名≪邪剣≫こと、ニィさんはイチゴ達の銃撃戦を眺めていた。
「へぇーまだ銃なんて残ってたんだ。
しかもこんなに沢山よく持ってこれたね。
君は助けに行かなくていいのかい?」
「あん? 俺は女子供の相手はしねえ。それにイチゴには恩義がある、
やるならあんたみたいなヘンタイだ。
女を下に見ているクソ野郎とは、前から懲らしめてやりたいと思ってたんだよ、≪邪剣≫
あんたが平穏無事に過ごせてたのも、うちのリーダーから仕掛けるのを禁止されてただけのことなんだぜ。
いい気でいられるのも今日までだ」
ニィさんが語り掛けた先には、和装をした白髪のおかっぱ頭の女がいた。女には長い兎耳が頭に生えていた。
「【兎人】か、いいね。
君のことは知らないけど、有名になることで君のような可愛い子が近づいて来てくれるんだから役得だね。
そうだ! 私が勝ったら、私の家にウサギ小屋を作ってあげよう。
服はバニーガールの衣装を着せてあげよう。毎日同じ服だと飽きるから、春はバニー着物、夏はバニー水着、秋はバニーセーター、冬はバニーサンタ服を着せてあげるね。
そして、毎朝毎晩、『おはようニィニィ』と『お帰りなさいニィニィ』と言って貰おうか。
そうしたらご褒美に君の大好きな私の人参を毎回食べさせてあげよう。好きなんだろう? 【兎人】って(笑)」
「ッ!! 【兎人】を舐めるなっ!!!」
≪首狩兎≫こと、月魄ミコトは、魔素を脚に溜めた神速の蹴りである<真空破断脚>を繰り出そうとした。
<真空破断脚>、この蹴りを極めたミコトは敵との距離を無視する。離れた敵の首は神速の蹴りによって放たれる魔素の刃で跳ね飛ばされるのだ。
このスキルにより、ミコトは≪首狩兎≫の二つ名を冒険者ギルドから授かり、クランランキング2位の<火狐紅蓮隊>の戦闘隊長として君臨していた。
「スキル出す前に叫んじゃダメじゃない? 一拍子遅れるからノロマな亀でも防げるよ?
それに、有名な君のスキルぐらい私が本当に知らないと思ったのかい?」
と、≪邪剣≫は無拍子で距離を詰め、≪首狩兎≫の蹴り始めの右脚を左手で抑えて言うと、右手で腹部を押し込みながら≪首狩兎≫の軸足を足払いし、床に叩きつけた。
「ぐあっ!」
ミコトは受け身が取れずにそのままの衝撃を背中に受け、肺からの空気が全て抜け身体が硬直した。
≪邪剣≫は腹部を押さえていた右手をミコトの首元まで移動させ首輪で抑えこみ、右手に魔素を集め、ミコトの体内に魔素を流した。
<魔素操作>により、ミコトの体内に魔素が駆け巡り、ミコトの神経はズタズタに裂かれた。
≪邪険≫こと、邪竜ニーズヘッグは、自身の剣術に絶対的な自信を持っていた。
師匠から剣の道を教わり、師匠を超えた時、自身の剣術は最強に至ったのだと知った。
その後、他の武器術をも学んだが分かったことは、勝つためには剣術だけではいけないということを学んだ。
勝つ為であれば、剣術の正道を進まず、邪道を進むことを選んだ。
剣以外でも使える物であれば何でも使う。
言葉を発するだけで相手の行動を操作できるのなら使わない理由なんてないだろう。
しかし、それを良しとはされなかった。
元々所属していた、正々堂々、正道を基本理念とするクラン<聖白騎士団>からは除名され、今のクラン<Grab the glory>に拾われ、持ち前の優秀さでサブリーダーにまで至ったのだった。
≪邪剣≫邪竜ニーズヘッグは<魔素操作>を行い、接触した相手の体内の魔素を乱し破壊する方法が、ダンジョン外の戦闘では最強だと考えていた。
戦闘をするには相手に触れなければならない、その際に相手の体内の魔素を乱して神経に少しでも刺激を与えれば相手は激痛に耐えれず無力化出来る。例え耐えたとしても動きが鈍くなった相手であれば単純に打ち破ることが出来るので、自身が負けることは無いと考えていた。
エレベーターホール内の敵を全て無力化できた頃に、橘がエレベーターシャフトから出てきて、その後ろをエレベーターが通り過ぎて行った。
「ふぅ、いきなり下からエレベーターが上昇してきてビビりましたよ。危うく轢かれかけました」
片手が塞がれた状態で5階分の壁を短時間で登り切った橘は、そんな事を言った。
各人の性格
イチゴ:真っ直ぐ最短距離で行く
セツナ:理論的なデータを集めて検証して最大効率を選ぶ
ニィさん:ルールを破って得をするならルールを破るし、ルールを守ることで得をするならルールを守る
橘:自分の意見が無く、他人の意見に流されやすい




