22話 東郷セントラルビル(5) 不幸な出逢い
東郷セントラルビル 60階 エレベーターホール内
エレベーターホールには12人の武装した男達がいた。男達はいずれも<中部復興エリア解放戦線>のメンバーである。
男達の装備は統一されており、バリスティックヘルメット、タクティカルスーツの上に鉄板プレートが胸部に1枚入れ込まれているボディアーマーを着込み、足元はタクティカルブーツを履き、手にはサブマシンガンが握られていた。
エレベーターを見張れという指示をついさっき受け、エレベーターホールにやってきて待機していたその内の1人、武藤興作は自身の境遇を思い返していた。
(どうしてこうなったんだ............)
武藤は数日前に冒険者登録をし意気揚々とダンジョンへと挑んでみたものの返り討ちに遭い、大怪我を負ってしまった。怪我をして困っていると親切な冒険者がやってきて助けてもらえた。
快復した男はその親切な冒険者に感謝を述べて、自身の所属するクランへと戻っていったのだった。
そこでクランの先輩にダンジョンで探索失敗した話や助けてくれた冒険者の話をしてみたところ、何でもそいつは、武藤が所属しているクラン<火狐紅蓮隊>の先輩らを何度か殺している奴であり、関わり合いを持つなと強めの注意を受けた。
所属先のクランも判明しているので後日菓子折りでも持って感謝を伝えようと考えていた武藤だったが、そんな凶悪な奴だとは知らなかった為、先輩に言われたっきり感謝を伝えようとすることはなかった。
そして、その際にダンジョンに潜ったパーティーメンバーに素材の換金を分配されず盗まれたままだということに気付いたが、そのパーティーメンバーがその敵対クランのメンバーだと分かったため、より一層敵対心を持つことになっていた。
兎に角、武藤には金が無かった。
冒険者になれば儲かるという話を信じて、冒険者ギルドを訪れ、なんと幸運にもクランランキング上位のクランに勧誘され、才能があるよと褒められて調子に乗った武藤は、そのクランの先輩に勧められるまま高額な装備をローンで購入していた。
このままだと月末にはローンの支払いが滞ってしまう。武藤はクランの先輩に金の相談をすると、「金払いの良いバイトがあるから紹介するよ」と言われ、あれよあれよと言う間にここに至ったのだった。
(初めは、貴族の子供の誕生日会で余興をするから、っていう話だったはずが、どうしてこんなことに)
『ドッキリだから誰にも秘密に』という条件が含まれていた事もあり、報酬がとても高額だったのでバイトに申し込んだのだが、渡されたのクラッカーではなく銃であった。
不思議に思ったが、銃型のクラッカーだと言われ納得するしかなかった。
そして、祝いの衣装として渡された衣装は武藤でさえ祝いの席には相応しくないと思ったが、銃型のクラッカーを持っているのだからそれに相応しい服装だと言われ納得するしかなかった。
ビルの移動はクランの先輩の誘導指示により、誰にも見つからず宴会場まで来ることが出来た。
男はそういうドッキリなのか?と思いつつ、指示により銃のトリガーを引くと、出席者に対して乱射が始まった。
そうなってしまうともう共犯者である。
武藤は後戻り出来なかった。
(それにしてもキリコ先輩は凄かったな。出席者を守ろうと前に出てきたボディーガード諸共消し去るなんて。このままだと犯罪者だがキリコ先輩に敵う奴なんていない。キリコ先輩についていけば問題ないはずだ)
後戻り出来ないと悟った武藤は、先輩であるキリコについて行くしかないと考えた。
武藤はクランの先輩のキリコが誰よりも最強だと信じていた。
武藤はキリコの使う反則じみたスキルを知ってからはキリコに勝てるやつはいない、と思っていた。
(気合いを入れて頑張らねえとな。ここで負けたら犯罪者だ。勝てば皇軍、負ければ犯罪者というわけだ)
そんなことを考えていると、機械の駆動音と共にエレベーターの昇降表示が一斉に上昇中を示した。
(動いている?)
エレベーターが動くという連絡は聞いていないが、エレベーターを見張れという指示を受けたのだから、この事だったのだろうと理解し銃を構えた。
しかし、一斉に動き出したのでどのエレベーターを見張れば良いのか分からず迷っていると、背面にあったエレベーターの扉が轟音を上げて吹っ飛んで行った。
男は慌てて後ろを振り返り銃を構えると、吹き飛んだ扉のエレベーターの中から何者かが2人勢い良く飛び出してきた。
禍々しい羽を生やした赤いドレスの少女とまん丸い角を生やした青いドレスの女だ。
武藤達は2人に向け、銃を乱射し始めた。




