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18話 東郷セントラルビル(1)

 中部復興エリア1:中央区駅前東口。



 予定時間通り、僕は駅前東口に到着した。


 中央区の駅前は栄えていて、僕を含めた貧困層が多く住んでいる南区の安アパートや孤児院の周辺の様にヒビ割れし倒壊した建物が残っていることもなく、都市計画によって煌びやかな高層ビル群が行儀良く誇らしげに並んでいた。


 中部復興エリアの復興計画の目玉とも言われる場所が中央区であり、ダンジョンから得られた資材をふんだんに使用した現代の技術力による発展の象徴とされ<中央区(セントラル)>と呼ばれている。


 復興エリアは数あれど日本の中心にある中部復興エリアの中心部であるからこそそう言った愛称が付けられた。以前であれば旧東京エリアの人間が我々こそが政治、経済の中心であると主張しただろうが、そういった旧世代の土地の価値観に縛られた人間は既にこの世から居なくなっていた。


 人類生存圏である北部、東部、中部、南部とカテゴライズされた周囲100キロもの壁で円形に囲われた復興エリアは各地に点在するが、工業地帯を有している中部復興エリアが他のエリアと比べて魔石工学の活用で進んでいた。


 工学の発展が人々の生活を豊かにし経済を発展させ、それに伴って魔石の需要が高まり、魔石を採掘出来る冒険者は莫大な富を築いていた。


 それから富の一極集中と市場への金融政策の一環として去年行われた寺院の蘇生チケット商法により冒険者の資産の殆どが寺院に流れることになったが、今度は寺院の支配力が日に日に増していく結果になった。


 そのせいか街中のポスターなどでは寺院のプロパガンダな広告が多く見受けられたがその光景に違和感を覚える者は教会関係者を除いて殆ど居なかった。


 僕は街角のポスターを見て反吐が出そうになった。


 僕達のような教会に保護されたダンジョン孤児は、寺院と教会間の文化戦争の被害者である。

 保護してくれた事には感謝しているが、文化戦争のあおりを受けて困窮して育ったのは違いなかった。 

 文化戦争では、寺院の財力に頼ったロビー活動に対して、教会は地下に潜り活動を進めて頑張っているそうだが贔屓目に見ても寺院の圧勝だというのが街の風景で感じ取れた。

 



 駅前は3月最後の金曜日とあってか非常に人で混雑していた。

 行き交う人みんなが高そうな服を着て楽しいそうに笑っていた。


 場違い感甚だしいな。さっさとニィさん達と合流しよう。


 僕は早足で人混みを抜けて周囲を探索した。


 僕はニィさんから言われていたことを思い出していた。


『常在戦場。いついかなる時でも修行をすること。意識的にトレーニングすることで少しだけでも鍛えられるよ』と。


 僕はこの人混みを利用して<気配探知>のスキルを生やそうとしてみた。


 ニィさんとぼんちゃんの気配はどこだろ?


 集中しろ。


 人が多い。


 ノイズが多すぎる。


 地上だから魔素は薄い。体内の魔素を意識し循環させ神経を集中させる。


 深く、より深く神経を研ぎ澄ませ。


 地上での冒険者の戦闘の基本は、自己強化系のスキルを使うのが1番だと言われている。

 それは、周囲の魔素を活用する魔法スキルよりも自身の魔素を活用する方が地上戦ではより多くの効果が得られるからだ。


 もっとも高レベルの冒険者なら保持する魔素も多いので十分な殺傷力のある魔法スキルを行使出来るため、同レベル帯での戦闘という前提条件の話ではあるが。


 そして、ダンジョン内は監視下ではないが、地上の街中で決闘や殺傷事件を起こすのは問答無用で投獄されるので、地上戦を想定すること自体がナンセンスだという見方もある。


 例外的に、復興エリア外で探索する遺物回収を目的とした冒険者が地上戦での戦闘法を探究しているぐらいだ。


 しばらく集中してみたが結果はダメだった。気配を捉えることは出来ず、普通に目視で見つけてしまったのだった。




「遅い! 遅刻だぞ!

 分かっているのかい? 今日が大事な日だと!」


 ニィさんは僕が挨拶をするよりも先に注意をしてきた。

 すいません......と言いながら2人の服装を見ると、 ニィさんは黒のジャケットにジーンズ、ぼんちゃんはねずみ色のチョッキにチェック柄の長ズボンを履いていた。

 見るからに2人の高そうな服装を見て僕は服装の相談をしてなかったなと後悔した。


「よし!じゃあ行こうか!」


「彼女達はここで待ち合わせじゃないんですか?」


 僕は待ち合わせ場所に冒険者ギルドの売店のミドリさんとその友達2人がいないので聞いてみた。


「ミドリちゃんには店で現地集合と伝えてあるよ。

 行く道中で橘くん達とは打ち合わせをしておきたかったからね」


「?」


 僕は不思議だったが、なんでも探索と同じでパーティの事前の打ち合わせが合コンには必要なのだといい、僕たちはニィさんから作戦説明(ブリーフィング)を受けた。





ーーーー


 東郷とうごうセントラルビル エレベーター内。




 僕たちは駅前で1番大きなビル<東郷(とうごう)セントラルビル>のエレベーターに乗って上がっていた。


「今から行くのはぼんちゃんの親族がやってる店でね、よくお世話になってるんだよ」


「ぼんちゃんって貴族なんですか?」


 と僕はぼんちゃんについ聞いていた。

 ここらの一等地に店を構えることが出来るのは貴族階級の関係者しかできなかったはずだ。


 復興エリアとして居住区が狭まった結果、管理をする必要性が生じたためエリア管理者が割り当てられた。


 それが貴族階級と呼ばれる人たちだ。国家が単独で統治することが不可能になったため、復興エリアの壁内を一つの独立自治区と見做して管理運営を貴族階級に一元管理をさせていた。


 ダンジョン化以降の騒乱を抑えるため、数年毎に党首が変わってしまう民主主義的な1国、1党首での支配体制では安定した国家基盤を作れないと判断し国土強化、国土奪還を共通理念とした独立国家共同体として日本は再出発したのだった。


 これには多くの反発もあったと思うだろうが、旧東京エリアはダンジョン化への防衛策が乏しくすぐモンスター生存圏へと塗り変わったため、()()()()すんなりと現貴族階級たちの手で改革ができたのだと()()()は残されていた。


 思えばぼんちゃんとは家の話などをしてこなかった。僕が孤児なのもあってあまり家庭の話は触れたくなかったのだが、こっちから話題を振った以上僕も身の上話をしないといけないか、とこれからの会話の流れが嫌なものになっていくのを感じ取った。

 

「あぁぼんちゃんは貴族の出身でね。訳あって冒険者をやっているんだよ。

 詳しくは本人に聞いてみたら? 笑えるよ」


「笑わないでよ。

 昔は貴族の八男だったんだけど...色々...調子に乗ってたら...勘当されて...追放...されてね.....」


「追放...ですか......」


 僕は思った以上に動揺していた。一生安泰の貴族だったのに勘当されて追放までされてしまうって何やったんだ、ぼんちゃん。まさか極悪人か?


 つまり処刑すると世間体が悪いから追放されたということだろうか。そんな軽々しく追放なんて起こり得るだろうか。


 思えばぼんちゃんの体型は出会った時から子豚みたいだなと思ったことがあったが、この時代に太れるというのは裕福な家なのだと気づくべきだった。


 でも貴族なのに太っているのもおかしいな。ダンジョン化により『力こそ全て』なこの世界で復興エリアを管理するには絶対的な力が求められる。


 そのため、貴族達は自己研鑽に努めて『貴族たる者、誰よりも強くあれ』という脳筋思考、武闘派な考えを持っていたはずだ。


 復興エリアを管理している貴族のエリア長を倒せば、倒した人がより強い力を持っているということで管理権を得るという脳筋制度があるそうだが、実際に挑もうとすると取り巻きに鎮圧されるのと地上での決闘は禁止されているので、挑んだ時点で投獄されてしまう。


 貴族の立場を保持するために形骸化した制度だった。

 そんな思想の家で育ってあんな体型だから追放されたのだろうか。



 反復するだけの曖昧な返事をして次の言葉を繋ごうとしたらエレベータが目的の階層についたようで、扉が開いた。それに従いニィさんたちはエレベータを出て行った。 



 ニィさんは店の前で改めて説明を始めた。


「ここがぼんちゃんの親族がやってる日本料理屋でねぇ。

 刺身が美味しくて、何かあったらいつもここを利用させてもらっているんだ。

 毎日新鮮な魚を取り寄せているそうだよ」



 僕は店の豪華さに驚いた。店内は綺麗に清掃されており装飾品は僕が見ても高そうな物ばかりだ。

 ここで食事すると一体いくら取られるんだろうか。貧相な価値観では想像もつかなかった。


「僕はそんなにお金を持ってないんですが.......」


「知ってる。知ってる。安心して。

 クランの加入祝いも兼ねて僕とぼんちゃんがお金を出すから気にしなくていいよ。

 さっき伝えた作戦を忘れなければね」


 僕は道中に指示された内容を思い出していたがいまいち指示の意味が分かっていなかった。

 作戦を忘れてしまうとここでの支払いがどうなるのか恐ろしくなったので僕はなんとしてでも忘れない様にと決意した。


 僕たちの席に案内される際に、すでに女性陣は個室で待っていると店員が告げた。


 どうも、とニィさんは礼を告げ、個室の中へと進むとニィさんは棒立ちになって動かなくなった。


 僕がなんだろ?と思い、個室の中を覗くと、ミドリさんの隣に座っている2人と目があった。


 ミドリさんは友達を2人連れてくると言っていて、ニィさんも誰がくるか知らなかったのだろう。



 僕たちの目の前には、雨宮イチゴと竜宮セツナがいた。



「遅かったんじゃない? 待ってるのがバレたかと思ったわよ」


 雨宮イチゴは冷ややかにそう言った。






 僕はニィさんが言っていたことを思い出した。


━━━━『雨宮イチゴ(クソガキ)と出会ったらすぐ逃げろ』と。

やあ (´・ω・`)

ようこそ、すまない。

冴えない小太りのコンビニバイトをしながら冒険者をしている梵天丸こと、ぼんちゃんは追放された貴族の八男のボンボンだったんだ。

チート小説には主人公がチート持ちと、観測者である主人公の周りがチート持ちばかりという2種類の形態があると思うが本作のチート小説は、後者なのだ。

なので名有りの登場人物全員チート持ちなのは勘弁してくれ。タグにもチートって書いてるしね。

主人公がそういうチート持ち達とどう折り合いを付けて渡り合っていくか楽しみにして欲しい。

主人公しかチートを認めない!の場合は申し訳ない(´・ω・`)

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[一言] 文章が格段に読みやすくなったと思います。
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