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17話 孤児院(2)

 僕たちは孤児院の前で騒いでいると中から老婆が出てきた。


「あらまぁ、お帰りなさい」


「ただいま」


 4日前に孤児院(ここ)を出たばかりなのでホームシックですぐ戻ってきたと思われたかもしれないな、と僕は今更恥ずかしくなった。

 老婆は、ここの院長でマリアという名前だ。怒ると怖いが穏やかな性格で、ダンジョン孤児の子供たちを保護しており、みんなのお母さんだった。

 マリアさんから中に入るように案内されて僕は段ボールを抱えながら中に入っていった。



ーーーー



 孤児院一階食堂内。


 僕とみゆとマリアさんの3人で食堂の長机にて代用コーヒーを飲んでいた。

 代用コーヒー、いわゆるコーヒーは通常コーヒー豆を使用して作られるが、ダンジョン化した今ではコーヒー豆が産出される海外諸国との貿易は絶望的な頻度になっており、正真正銘の正式なコーヒーというのは極一部の上流階級でさえ飲めたら誰かに自慢したくなるほどレアなものになっていた。

 この代用コーヒーは孤児院の支援者がマリアさんに贈ったものであり、客人用に出されるのが常であった。


「こんなに沢山ありがとうね。冒険者として順調な滑り出しをしたというところかしら」


 マリアさんは僕が渡した野菜や魚が入った段ボールを見ながら言った。


「いえいえそんなことないですよ。僕はまだまだです」


 僕は見栄を張りたかったが謙遜しておいた。


「ちぇ、絶対あきらめて帰ってきたと思ったのに」


 みゆは僕が段ボールを抱えているのを見てアパートの荷物を持って帰ってきたのだと勘違いをしたのだと言う。


「こらこら、この子はこんな事言ってるけどあなたが出ていってからすごい落ち込んでいたのよ」

「落ち込んでないし!!」


 マリアさんの告げ口にみゆは激しく反論した。


「そんなことより、みゆ学校行かなくて良かったのか?

  春休みだけど部活行こうとしてたんだろ?」

「そんなこと!? あぁ、次のコンクール用の作品を仕上げようとしてただけだから昼から行くことにするわ。

  春休みだから美術室いつ行っても良いし」


 みゆは美術部に所属していて、次のコンクールに作品を応募したら部活を引退して受験に専念するのだという。

 みゆの希望進路は東部復興エリア1にある大学に進学することだった。

 僕とは違い、みゆは優秀なので奨学金が貰えてタダで進学できる見込みが高いと教師陣は口を揃えて言っていたのを思い出した。僕への扱いとはすごい違いだったのを覚えている。僕は優秀ではなかったので大学進学なんてものは候補に入らず、高校卒業して何をして稼ぐかという選択肢しか無かった。


 大学進学で復興エリア間の移動をするが、復興エリア間の移動は交通網はわずかに残っており少ないながらも定期便があるので移動が出来る。しかしよっぽどの理由がないと移動しようとする人はいなかった。

 前にマヤさんが言っていた、北部復興エリアに卒業旅行に行ってるというクランメンバーのゴーゴーくんとやらはよっぽどの変人であることに間違いなかった。


「まぁ大学進学失敗したらセイギの所に嫌だけど行くわ。

  アパートもあるし一緒に暮らせば家賃も浮くから安く生活できるわね」

「大学失敗する可能性考えてるのか?」

「まさか! この私が失敗するわけないわ。

  でもどうせなら大学に行くなら日本で1番の大学に行かないと意味ないって思うから行けなかったらそん時はそん時ね!」


 何事にも優秀な成績を取ることができていたみゆはその能力に比例してか酷い自信家だった。

 まぁ落ちることないと思うと言い放つみゆを見て、僕は来年みゆが大学で遠くに行くことを想像していた。


 取り留めのない会話をして時間が経過していき、しばらくするとみゆは学校へと登校していった。


 今日は2050年3月25日、新学期はもうすぐ始まる。

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