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16話 孤児院(1)

 早起きをした僕は市場へと向かった。

 市場は各地で採れた野菜や魚などが集められ売られている。建物はダンジョン化以前の風景を残しており所々ひび割れなどが見られるが改修の予定は無いのだと言う。

 野菜は主に復興エリア内で栽培されたものであり復興エリア間はごく限られた空路、陸路によって交易が行われていた。魚は海にいる生き物のことで、内陸の復興エリアや、海に面していても海洋モンスターにより海上封鎖された復興エリアでは非常に貴重な食材となっている。僕は生まれて数度しか魚を食べたことがない。


 僕が誕生日の時に孤児院で魚を食べた思い出しか無く、美味しい貴重な食材を買って帰れば冒険者としての自信が、見栄が付くのでは無いかと思い市場を訪れたのだった。


 野菜と魚を大量に買ってそれらを入れた段ボールを抱えた僕は、孤児院への道を歩いていた。

 レベルアップしたので体力がついたのだろう。疲労は特に感じない。


 住宅街を抜けると緑地公園が見え、墓場を通り過ぎると白亜の壁色をした教会と孤児院が見えてきた。

 孤児院は教会と併設されており、教会によって運営されていた。

 寺院がいち早く目をつけた蘇生の奇蹟により得た多額の金銭により政治力を強めている今、教会の影響力は弱りに弱っていた。そのおかげで教会の孤児院に保護された僕たちは毎食毎食神に感謝しながらご飯を食べる日々を送っていた。


 ダンジョン化により人々は不可思議な力、いわゆる魔法の力に目覚めた。

 寺院の関係者は肉体強化、結界、蘇生の力、教会の関係者は精神への干渉や治癒、物質を変換する力に優れていた。

 所属する団体で得意とする魔法が変化するというのは、謎であったがその人の死生観や世界をどう捉えているかといった心の在り方で魔法の習得の仕方が異なっているようだ、という研究が発表された。

 寺院は輪廻転生、回生を基本的に受け入れ、教会は死者からの復活を特別視していることが魔法が出来る出来ないの違いになっているのだろうとされていた。

 その使える魔法の違いから寺院の元を訪れる人々が多くなっていき今の均衡となっていた。



 段ボールを抱えた僕は孤児院の門まで来ると制服を着た女子高生と出会った。


 その女子高生は長髪でスラリとした体型であり、赤のリボンタイがついた白シャツ、膝上5センチのチェック柄のミニスカを着ており、手提げ鞄を右肩にかけていた。

 名前は、神崎美由(かんざき みゆ)、赤子の時から付き合いのある僕の一歳年下で今度高校3年生になる生意気な女の子だ。


「げ!もう帰ってきたの!?」


 みゆはそういうとニヤニヤしながらタタタッと軽快な足取りで近づいてきて声をかけてきた。さっきまで澄ました顔だったのが台無しだ。


「私はねぇ、気づいていたわよ。『金持ちになってやる!』と大見栄切ったセイギはすぐ冒険者あきらめて帰ってくるなんてことはね!

 大体セイギは根が優しいんだから冒険者みたいな危ない仕事は向いてないのよ!」


 みゆは予想通り冒険者をあきらめて逃げ帰ってきたのね!とニヤニヤしながら脇腹をつついてくる。

 僕のことを馬鹿にしているみゆは心無しかなんだか嬉しそうだった。


 そんなことより、段ボールを抱えているんだから脇腹をつつくのはやめろ!!

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