14話 装備ガチャ
冒険者ギルド内売店前。
時刻は昼時のため、冒険者はまばらにいるが混雑はしていなかった。売店のレジは4箇所あるのでそうそう混雑することはないだろうが。
売店には<帰還の巻物>と鍛冶屋チケットの交換に来たわけだが、10万円という臨時収入もあったことから他にも良さげな物がないか探していた。<火炎の巻物>や<氷結の巻物>や<電撃の巻物>なんてものもある。それとも<睡眠の巻物>の方が使い道が広いか? 所持重量制限がキツかったから<魔法鞄>は高いけど運ぶのが楽になるように鞄を買おうかな。靴も服も新しいのが欲しいな。色々物色するも全てを求めるには所持金は心許なかった。
「レイピアを使っていくなら左手はパリィ用にマンゴーシュを使うといいよ」
「へー、そうなんだー」
ニィさんとマヤさんは2人でマヤさん用のサブ武器について物色していた。
レイピアは刺突用の片手剣であるから左手は武器を持たない。
その左手には防御用としてマントや小型盾、短杖、ダガーつまりマンゴーシュを持つ戦法が取られることが多い。
「付術したマントでも良いけど中々良い値段するからねぇ。
<魔法威力低減>か<魔法反射>、<矢避けの加護>、<精霊の加護>、<筋力増強>、<幻視>とか色々欲しい効果はあるけど店売りじゃ並ばないからダンジョン産か高レベル鍛治職のマーケットで買うしかないね。
今だったらマンゴーシュでいいと思う。ダンジョン進めてマントも手に入れたらプラス装備するという感じで」
と言い、売店の前でニィさんはレイピアの基本技や術理の説明を熱心にし始めて、売店の職員に注意をされていた。ニィさんて剣術の話になったら早口になるよな。
「何買うか決めたい?」
ニィさんは注意されて懲りたのかマヤさんから僕に話し相手を変えたようだ。
「一旦、武器貰ってから考えようかと思います」
「了解。ちょっと待ってね」
そう言うとニィさんは売店の職員に小声で話しかけた。
(ちょいちょい、これからこの子が鍛冶屋チケットの交換をしようとしてるんだけど、この子に良い武器出してくれない?
まだ3日前から始めたばかりの駆け出しの冒険者なんだ。
中途半端な武器渡して彼が死んでしまったら私は毎日ここにきて彼の死に際を君に説明してあげようと思うんだよね。
君も彼が死ぬのは心苦しいだろ??ね?わかるだろ?ね?)
小声ではあったが僕はレベルが上がり聴力が上がっていたので何を話しているか分かった。
これは恐喝では?何してんのこの人!?
まずいですよ!?と隣を見るとマヤさんは聞こえてるのか聞こえてないのか何も関係がないように売店の棚をまだ眺めていた。
...僕も知らないふりして棚を眺めるか。へーコノスニーカーイイナー。
「職務規定ですのでそういった対応は出来ません。しつこいようですと衛兵を呼びますよ!」
メガネを掛け直した職員は毅然とした態度で言い切った。
「そう言うことなら仕方ない…じゃあ2択にしよう。
彼に良い武器を渡すか、今度飲み会をするか。
いや何ね、私が話しかけた理由は実は君と仲良くなりたいなと思って話しかける理由が欲しかったんだよね。
一目見た瞬間から私は思ったんだ。君と仲良くなりたいとね。それで少しイジワルなことを言ってしまったようだ。すまない。
君は可憐で美しい!私はこの機会を逃すべきではないと思った行動なんだ」
「いや、その、そんなはっきりと言われても困ります。まして私なんかが可憐で美しいだなんて。
そんなこと初めて言われました」
「いいや、君は美しい! 君にそんなことを言ってこない周りの男は見る目がなかったようだね。
だから明後日飲みに行かないかい?」
「明後日ですか? ええっと、いきなり2人っきりはアレなので友達を呼んでも良いですか?」
「いいともいいとも。じゃあこちらは3人で行くとするから君も2人友達を連れてきてくれ」
「あ、わかりました」
ではこれが私の連絡先だ、とニィさんはスマホで連絡先を交換していた。遺物扱いであるスマホであったが当然のようにニィさんは持っていたようだ。そして売店のメガネをかけ三つ編みをしている頑固そうな女職員もスマホを持っていたようで連絡先の交換が成功していた。
あれ?僕の武器の件は? 良い武器貰えるんじゃないの?
ーーーー
ニィさんはダメだったよ。と言ってきたが何がダメだったのか。
メガネをかけた女職員は確かに厚縁メガネで牛乳瓶みたいなレンズで三つ編みをしているがよくよく見てみれば素顔は可愛らしい気配がした。
ニィさんはマヤさんと買い物の雑談をしている最中に女職員の素材の良さに気づいたというのか。なんという視野の広さ! というかこの人の名前なんだろう?
僕は名前を聞きそびれた女職員に話しかけ鍛冶屋チケットを使う事と<帰還の巻物>を一つ買うことを告げた。
分かりましたと事務的に答えた彼女の名札を見て「ミドリ」という名前だと言うのは分かった。
奥に引っ込んだミドリさんは包みと巻物を持って戻ってきた。
プロになるとこの時点の戻ってくる時間と包みの大きさから何が入っているかが分かるという。なんのプロだ?
戻ってくる時間が長いと期待大、良かったねと後ろでニィさんが囁く。プロは身近にいたようだ。
代金と鍛冶屋チケットを渡してお礼を告げて売店から離れた。ニィさんはまたねーとミドリさんに手を振っていた。ミドリさんは顔はそっけなく無視して無表情だったが手だけフリフリとニィさんに向かって振られていた。
売店から少し離れた広間で僕達は包みを確認することにした。
「何が出てくるかなー?」
マヤさんは興味津々のようだった。
「じゃあ開けますよ」
包みの中からは剣が出てきた。
「これは?」
「貸してみて。ふむ、雷属性で、<魔力阻害>付きの剣のようだね」
「見ただけで分かるんですか?」
「<鑑定>スキルを持っているからね。
これは当たりかというとハズレ武器の部類かもしれない」
「え?なんでですか?属性付きで付術もある剣ですよ」
「雷属性がついているから当たれば相手を一定確率で<麻痺>出来る効果があるし、切れ味も中々の業物だ。
でも<魔力阻害>が厄介なんだよね。
文字通り効果は魔力を阻害するんだけど、レベルアップには魔素を体内に取り込む必要がある。
つまりモンスターを倒してレベルアップしようにもモンスターから出てきた魔素が大気中に散ってしまってこの剣を装備しているとレベルアップができない。
はっきり言って使えない。店売りでも売れ残ってたのはそのせいだろうね。
マーケットで売りに出しても換金するのは難儀するかもしれない」
ニィさんから残念な判定を受け、使うとレベルアップ出来ないという残念武器だったが棍棒よりかは遥かに攻撃力が上がるので売らずに時々は使うことにしよう。レベルアップは出来なくても技術は身につくから剣術スキルを生やすのに良いかもしれないというニィさんのサポートは聞いていて虚しかった。




