11話 蘇生チケット
ニイさんがカウンターの上に山盛りの素材を置いていき最後にゲンコツ大の魔石をいくつも<空間収納>から取り出していた。
ニイさんとカウンターで相手をしている職員が会話をしていた。
僕はレベルアップしたので聴力が上がっており聞き取ることが出来た。
「もう!換金に来るなら来るで前もって連絡をください!
もっとちゃんと化粧してたのに」
「ごめん、ごめん。潜ってたらつい取りすぎちゃった。
それに化粧しなくても充分可愛いよ」
どうやら顔見知りのようだった。というか口説いてるのかあれ。
ニイさんは査定札を受け取るとカウンターから離れ体の向きを変えて僕と目が合った。
「や!橘くんか。君も換金かい?」
「はい。それにしてもすごい量ですね」
「あの後潜ったら辞め時がなくてね。良い具合に狩場が空いてたんだよ」
「あれからずっと潜ってたんですか!」
ニイさんは僕達とのパーティを別れたあとずっと潜ってモンスターを狩っていたことを語った。
「あ!そういえばクランポイント見ましたよ。規定値達したから報酬が貰えるみたいです。
あと僕達のクラン10位なんですね」
「ありがとう。一緒にクランルームに行って報酬見てみようか。恐らくクランルームにもう届いてると思うよ。
ランキング入りしたんだね。なら勢い確認して次のシーズンに回そうかな。ちょっと待ってて」
そういうと先程のカウンターに戻り職員に換金することを辞めることを告げて素材を回収していた。
大量に査定に出してやっぱり辞めるわと回収する彼の行為に職員はまた来てね〜と気にしている素振りなどなかった。
「あの後何してたんだい?」
ニイさんは別れた後の僕の行動について尋ねてきたので、僕はソロでやって上手くいかず野良パーティを組んでみたものの上手くいかなかったことを伝えた。
「じゃあまずそのパーティの元に行こうか。報酬を確認するのはその後にしよう」
ニイさんはダンジョンの入り口へと向かった。僕はついて行った。
向かう道中、僕はソロで潜っても問題ないのかを質問した。それはパーティが6人を基本構成とするからだ。
ニイさん曰く、レベルが上がってしまうとソロの方が楽らしい。野良でパーティを募集してもなかなか希望通りのメンバーが集まらず何時間も待つ羽目になるのだという。
それであれば初めからソロで潜れる階層で潜っている方が効率が良いのだと。
「後、高レベルになると皆性格が悪くなる。いや違うな。人間性が欠けてきて協調性が無くなってしまう。
そのせいでパーティは固定じゃない限りうまく回らない。喧嘩してしまうからね」
なんだか実害があったかのように語るニイさんに僕は闇に触れないでおこうと深く聞くことはしなかった。
ーーーー
ダンジョン入り口。
僕達のパーティがいる場所に到着した。周りには他のパーティがあり各々休憩したりしているようだ。
僧侶と魔法使いの2人は怪我をしていないため歩けるが僕が報告してくると告げて去ってしまった為、離れることができず待っていたようだった。
戦士の2人は怪我をしているので呻いていた。
盗賊の死体は既に回収されて寺院に持って行かれたようだった。
「やぁ、傷を見せてくれるかな。...ふむ、これは大ネズミの毒にやられたようだね。
この<治療薬>を使うといい。
そちらの君は<中級回復薬>を使うといい」
と到着するなりニイさんは戦士2人にアイテムを渡していた。
戦士2人は押し売りかと思ったのかそんなアイテムはお金がないから払えないと断っていたがニイさんがいいからいいからと促され2人はアイテムを使った。
「!!おぉ!!痛くない!!」
「顔が治った!!」
アイテムを使うと2人の傷はたちまち良くなって治った。大ネズミに噛まれて紫色に膨れて変色していた足は元に戻り、欠損していた顔面の肉は元通りになっていた。
「ありがとうございます!!..お礼の方なのですが...」
「いいからいいから。気にしなくていいよ」
と2人はニイさんに感謝を告げていた。
「橘くん、死んでしまった盗賊の彼は君の仲間かい?」
ニイさんは変なことを聞いてきた。盗賊とは今日野良で知り合ったばかりで良く知らないが会話した感触では嫌な気分が生じていた。それで仲間かと聞かれると同じパーティだから仲間ではあるが野良であるからそうじゃないとも言えるし、と悩んでいたがニイさんが求めることはそういうことでも無いのだろうと思い答えた。
「仲間ですね」
「そうか、戦士の君。蘇生チケットを渡すから盗賊を蘇生して来てくれるかな」
「え、こんな高いものを良いんですか」
「いいともいいとも。橘くんの仲間だしね。
それはそうと君たちはクランに興味はあるかな?」
ニイさんは戦士たちにクランの勧誘を始めたが既に火狐紅蓮隊の下部クランに入ってますので、と言われ断られていた。
こんなはずでは!という顔で僕の方を向いているが勘弁してほしい。いや知らんよ。野良パーティのメンバーのクラン加入状況なんて。
ーーーー
盗賊を蘇生しに行くという野良パーティの面々と別れ、僕とニイさんはクランルームに向かっていた。
クラン勧誘を断った戦士たちは火狐紅蓮隊の下部クランに加入していると語った。
火狐紅蓮隊、クランランキング2位のクランだ。
「下部クラン。つまり一軍二軍みたいなものだね。
成績や能力が良ければ一軍に昇格できる。上位は人数が多いからそういう風に一軍二軍に分けてメンバーを競わせていることが多いね」
ニイさんは説明を続けた。
クランのシステムとしてクラン人数の上限はクランポイントと所属人数により変動する。所属人数が満杯でもクランポイントが足りなければ上限人数は拡張されず、クランポイントが規定値に達していても所属人数が満杯でなければ次の上限人数へと拡張が出来なくなっていた。
それは、冒険者ギルド側にとって数に限りのあるクランルームを使わせるのに体よく断るための方便なのだという。少人数で豪華なクランルームを使わせたくなく人数が多いだけで豪華なクランルームを使わせたくないという思惑が働いているらしい。
「でも良かったんですか。蘇生チケットを渡してしまって...
蘇生するには1億円ですよ。1億円」
「そりゃあ橘くんが仲間だというから... いや、別に良いよ。蘇生チケットなら回数券で沢山持ってるし」
僕が謝ろうとするとニイさんは蘇生チケットの説明をし始めた。
蘇生チケット。
寺院は寄付金、つまり金額にして1億円によって信仰心を試し、蘇生という奇蹟の行使を行う。
蘇生は死んだ状態から生き返らせることができるが一定の確率で灰になってしまう。
寺院に言わせると信仰心が足らなかったせいであるらしいが、ニイさん曰く、年齢が上がるにつれて失敗率が上がっているそうだ。
そんな寺院が蘇生チケットを期間限定で販売をし始めた。
蘇生チケットは前払いによってチケットを購入しておき、それを探索課に預けておくと自動的にその蘇生チケットを使って蘇生してくれるというサービスだった。
これまでであれば知り合いやパーティメンバーに蘇生するかどうかを尋ねたりしていたがこのサービスによって自動的に蘇生してくれる流れが出来ていた。
以前であれば知り合いやパーティが蘇生を拒否して財産を奪ってしまうという事例が多くあったためそれを心配する冒険者に向けてサービスを開始したというのが寺院の言い分であった。
蘇生チケット1枚なら1億円だが、回数券で蘇生チケット5枚分を買うと回数券として6枚分を購入することが出来、蘇生チケット10枚分を購入すると回数券として13枚分を受け取ることが出来た。
「錬金術が出来るとみんな思ったんだよね」
ニイさんは遠い目をしていた。
蘇生チケット10枚分を購入すると回数券として13枚分になる。
つまり、3枚分得することになる。それを転売することができれば3億円の儲けになる。
それに気づいた冒険者たちは持てる資産を全て使い蘇生チケットを買い漁った。不運なことに購入数制限がなく、蘇生チケットの蘇生対象者は購入者限定というわけでもなかったのだった。
パーティが共同購入で買う事もあるため使用者の限定はされていなかった。
「転売先がなかったんだよね」
お金のある冒険者の皆が持てる資産の全て、果ては借金してまで蘇生チケットを購入したが、お金のある冒険者は皆購入してしまったがお金のない冒険者はそもそも買えないので転売先がおらず過剰供給となっていた。
なので蘇生チケットの在庫を大量に抱えている冒険者は多かった。
階層攻略が進むにつれて企業や研究機関に素材を売り資金を得る冒険者が多く現れていたが寺院の蘇生チケット販売により冒険者が抱えていた大量の資金が寺院経由で市中へ流れることになった。
「寺院は多額の資金を得てそれを元手に色々と政府や企業に口を出していき影響力を強めていってるね」
ニイさんはやれやれだ、という両手を使いジェスチャーをする。
「ちなみに私は13枚回数券を10セット、あの時買ったんだよね...」
続けて言うニイさんに僕は同情せずにはいられなかった。
「見つけたわよ!ニィニィ!
ダンジョンの入り口で初心者の冒険者たちをクラン勧誘していたそうね。
そこまで落ちぶれるとは笑えるわね!!」
突然、背後から大声で呼びかける女の子の声がした。
僕が振り返るとそこには赤いフリルのついてドレスを着た赤髪のツインテールの小さな女の子と頭に二つの丸まった角が生えた長身の女性が立っていた。
「そこまで落ちぶれるなら... ! いい加減私のクランに入りなさい!!」
なんか僕、蚊帳の外のようです。
ワクチン接種で高熱出してました。復活したので更新頑張ります!




