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超人種族の異世界英雄記  作者: 至田真一
新たな日常
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授業前の一騒動

「はぁ……」


 朝のセシュイン学園の校門前でセーユはため息を吐いていた。


「どうしたんですか?」

「いや……まだ信じられなくて。この間助けてくれた人が本物の光の兄弟のガクラさんで、しかもその光の兄弟がここで一年の特別教師をやるって……。シフール、あなたは信じられる?」

「……驚いていないと言えば嘘になります。実際、まだ頭の中が整理出来ていません。一番驚いたのはガクラさんに子供がいて、しかも同級生になるということですね」

「確かにそうね」


 二人が校門を通って学園の敷地内に入ると、後ろからざわめきが聞こえた。


「なんでしょう?」

「大体予想は付くわよ。光の兄弟の誰かが来たから騒いでんのよ……うえっ!?」


 セーユが後ろを振り向くと、予想が半分当たり、半分外れた。

 後ろにはガクラと、昨日から同級生となったガネンとクラカがいたが、何故か三人の顔はまるで殴られたかのように腫れていた。


「おお、お前等か。はよう」

「えっと……はい」

「おはようございます……」

「あの……どうしたんですかその顔」

「ああこれか? 朝寝すぎてな、そしたらアスレルに殴られて起こされた」


 ガクラが言うとガネンとクラカは頷いた。


「あ~そう言えばお前等名前なんだ?」

「そう言えば言ってませんでしたね。私は生徒長をしているセーユ・ブラードです」

「シ、シフール・ウィートです」

「よろしくな~。ところで生徒長って何だ?」

「生徒長は簡単に言えば代表生徒みたいなものです」

「あっそ」

(生徒会長みたいなもんか?)

「まっ、今日からよろしくな」


 三人はその場を後にして、校舎に入った。


「ねぇシフール」

「どうしました?」

「私さ、昨日まで光の兄弟の授業を期待七、不安三ぐらいの割合だったの。でもなんか今日になると、不安が勝っちゃったのよ」

「そうなんですか?」

「正確には今会ってからなのよ。なんか嫌な予感がしてきたから」

「嫌な予感と言うと、どのような?」

「なんとなくよ」


 シフールは困り顔になる。


――――――――――――――――――――


「一時限目はここまで。冒険者コースは次の鍛錬の授業遅れるなよ」


 担任は教材を持って教室を出た。


「あ~分かんねぇ」

「何をどう理解すればいいの~?」


 分からないことだらけで机に上半身を寝かしてしまう。

 さっきの地理の授業も聞いてて頭が混乱する。

 俺とクラカが得ているこの世界の知識なんて住んでる種族と新聞だけだぞ。土地の事なんて教えられても全然分かんない。


「おーい二人とも。早く修練場行かないと遅れるよ」

「あー、次の授業移動するんだった」

「じゃあ行こっか」


 クラスメイトに呼ばれて俺とクラカは教室を出た。

 次は鍛錬の授業、父さん達の授業だ。


「父さん、ちゃんと授業出来んのかな?」

「さぁ? でも父さん教えるの下手くそだしね」

「確かに」


 俺とクラカはクラスメイトと共に次の授業を行う修練場に向かっていると、他のクラスの生徒が見えた。


「他のクラスも移動してるね」

「なんか今日は光の兄弟の最初の授業だから全クラス合同だって」

「父さん達の最初の授業か……」

「上手く出来るのかな?」


 確かに父さん達、人に教えるなんてやったことないからなぁ。


「変な教え方しない……とは思うけど……」

「大丈夫じゃない? 人数もいるからフォローしながらとか」

「確かにそれなら大丈夫かな。あんな教え方でも」


 クラカと話していると、いつの間にか修練場に着いた。


「結構大きいな」

「そうだねー。講堂より大きいね」


 修練場に入ると、生徒達が奥に行かずに集まっている。

 俺はちょうどセーユを見つけたので聞いてみた。


「どうしたんだ? こんなところで集まって」

「ガネン君、クラカさんも。実は……」


 セーユは困り顔で修練場の奥を指さした。その先には……。


「いい加減にしやがれテメェ!!」

「こっちのセリフだボケェ!!」


 父さんとエスティーが殴り合いの喧嘩をしていた。

 それを見た俺とクラカは思わずため息を吐いてしまう。


「またか……」

「どうせまたしょうもない理由だよね」


 他の光の兄弟の皆は壁際で待機しているので、俺は近くにいたエグラルに話を聞いた。


「なぁエグラル」

「あ? なんだ」

「一応聞きたいんだけど、あの二人の喧嘩の原因は?」

「どっちが教えるのがうまいかで口論になった末こうなった」


 やっぱりしょうもない理由だった。


「えっと、皆さん止めないんですか?」


 全く止める様子のない皆を見て、セーユが話に入ってきた。


「嬢ちゃん。あの二人の喧嘩を甘く見るな。俺達でも止めるのに時間が掛かるんだよ。まぁアスレルは別だが」

「そう言えばそのアスレルは?」


 アスレルだけがさっきから姿が見えない。


「アイツは今トイレだ。そろそろ戻ってくるだろ」


 するとエグラルの言う通り、タイミング良くアスレルが姿を現した。


「どうしたのこんなに集まって」

「おおアスレル。戻ってきて早々悪いが、生徒達が『アレ』に困ってるからよぉ何とかしてやってくれ」


 そう言ってエグラルは『アレ』こと、喧嘩している父さんとエスティーを指差した。


「なるほどね。分かった」


 アスレルは指をポキポキと鳴らしながら二人に近づいた。

 俺とクラカは両手を合わせて合掌した。


――――――――――――――――――――


「あ~今日から鍛錬の授業をすることになった光の兄弟だ。皆よろしくな」


 顔が朝よりも腫れ、しかも血を流しながら俺は軽く挨拶をした。

 そんな俺の隣には、同じように顔が腫れたエスティーがいる。そのせいか生徒達はなんだか引いている。

 アスレルの奴め、喧嘩を止めるぐらいでマジで殴んなくていいだろ。今更文句を言ってもしょうがないから俺は授業内容を言った。


「じゃあまずは準備運動ということで、初日だしこの学園の敷地内を一周してこい」


 すると生徒達は、何故か動かずに固まってしまった。


「あのガクラさん。今、学園の敷地内って言いましたか?」


 セーユが手を挙げて聞いた。


「ああそう言ったが……なんか変だったか?」

「いえ、これまでは修練場の周りを走るだったので、学園の敷地内だととんでもない広さなんですけど……」

「別にいいじゃねぇか。その方が体力付くだろ?」

「……マジですか?」

「マジだ。ほら、早く行ってこい!」


 俺は手をパンパンと叩くと、生徒達は修練場の外に出た。

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