光闇戦争①
「止めんか、おんし等」
鍋を囲んで喧嘩している三人の間に、一つに縛った黒髪に赤いコートと黒いズボンとブーツを身に付けた一人の男が割り込んできた。
「食い物なんかでそがにいがみ合いなさんな。戦争中にそがな事で仲間割れしちょったら、勝てる勝負も勝てんぜよ」
「うぅ……」
「すまねぇリュウバ殿」
三人は申し訳なさそうに頭を下げる。
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「やっぱりあの土佐弁、リュウバさんですよね?」
「ああ。当時はよくああやって喧嘩している者達の仲裁をしていた」
戦闘中以外でも大変だったんだな。
「あの人もガクラさん達の先輩なんですか?」
「そうだが。つーかあの戦争に参加してた光族全員俺等の先輩だ」
俺等はこの時まだ赤ん坊だったし。
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仲裁を終えて頭を掻いているリュウバさんの元に赤い髪の男が近づいてきた。
あの人は現在、異世界調査団の隠密部隊の隊長をしているハンゾウさんだ。
「おうハンゾウ。おんしも喧嘩を止めちょったのか?」
「ああ。全く、こんな時だというのに、何故喧嘩などするのだ。同じ世界の者同士。手を取り合えば良いものを」
「全くじゃ。はっはっは!」
二人は光族が集まっている場所へと足を踏み入れた。
そこで三人の男の元へ寄った。
「戻ってきたか。リュウバ、ハンゾウ」
「うむ。喧嘩しちゃあせんか見てきたぜよ」
「何か変わったことは起きていないか、ケンド」
あの人、ケンドさんか。
ハンゾウさんが声を掛けていた黒髪の男は、現在調査団の大団長のケンドさんだった。
人間の姿はあまり見ないから一瞬分かんなかった。
「いや、特に変わった事は無い」
「相手側も現在動きは無しだ」
スープを飲んでそう答えたのは、少し若いがグリーフさんだ。
……だが。俺が一番気になっていたのは、もう一人の茶髪の男だった。
「親父……」
「そう。あの男はお前たちの父、ナイディンだ」
若いが親父の姿を見て、俺達は懐かしんだ顔になった。
「一体何時になったら終わるんだろうな、この戦いは」
「こちらには無くても、闇族達の方は戦う意思が強いからな。奴等が諦めないか、全員倒さない限り永遠に続くだろう」
「その通りじゃのぉ」
「我々はともかく、この世界の者達の為にも、あまり長期化させる訳にはいかないな」
「ああ。戦力は現在拮抗しているが、勝機は必ず訪れる。その時が来るまで、皆が持ち堪えてくれるよう頑張るしかない」
ケンドさんの言葉に四人は頷く。その顔は、なんだか哀れみを感じる。
昔、親父もよく言っていた。戦争中は心苦しかったって。
「一つ質問いいですか?」
「なんだい?」
メモリービジョンで見ている途中、セーユがグリーフさんに質問した。
「光族と闇族って、どうして戦うことになったんですか?」
「……そうだな、この事はこの世界ではあまり知られていなかったな」
確かにこの世界で知っているのはごく一部だけ。この場にいる冒険者の中ではキルカのパーティー以外は知っている。
世間には、アスタラードに侵略してきた闇族を止めるために光族が現れて戦い始めた。ってな感じで伝わってる。
「まず闇族とは、元々私達光族と同じように世界のバランスを保つために活動していたのだ」
それを聞いた生徒達は言葉を失う。
俺も初めて知った時は驚いた。
「では、どうして闇族は侵略なんか?」
「戦争が始まる数年前。闇族の世界、ダーケストの心臓とも言えるエネルギー体、ダークコアが突如制御不能になったのだ」
闇族の世界にも、ライテストにあるライトコアみたいなものが存在していた。
「何を試しても上手くいかない闇族達は、とうとう違う世界を奪おうと考え出したのだ」
「それで……戦うことに」
「まぁ、闇族は世界のバランスを保つためなら手段を択ばなかったからな。そのせいでよく言い争いも起きていたから仲は良くなかったよ」
その結果が、あの光闇戦争なのかもしれないな。
「さて、そろそろ見せよう。戦争の決着の日の戦いを」
グリーフさんの言葉に、俺達は頷いたり唾を飲んだりした。
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映された映像の時間が夜から昼に変わり、荒野を無数の戦士達が歩いていた。
それぞれの種族の先頭には、当時の一番の戦士が立っている。
「んっ?」
戦士達が足を止めると、遥か前方にある一団が向かっていた。
それは無数の魔物と魔族、魔王軍だった。
そして先頭を歩いている魔族に俺は見覚えがあった。
「魔王……」
間違いなくそれは、俺達が去年倒した魔王だった。
けど……なんか違和感を感じるな。
「光族の方々! 魔王軍は俺達が相手をする。あんた等は闇族の所へ!」
「分かった。行くぞ皆!」
『おぉぉぉぉぉぉぉ!!』
光族は本来の姿になって空を飛ぶと、魔王軍の後方へ飛んでいった。
魔王は飛んでいった光族を目で追った後、アスタラードの戦士団に目を向けた。
「全軍! 奴等を叩き潰せ!」
魔王の合図で、魔王軍は戦士団に向かって走っていった。
「こっちも負けねぇぞ!!」
「行くぞ!!」
戦士団も武器を手に取り、ついに両軍が激突した。
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「彼等は大丈夫だろうか?」
「ケンド。心配なのは分かるが、今はあいつ等を信じて、俺達は闇族を叩くことに専念するんだ」
「……そうだな」
戦士団の皆を心配するケンドにナイディンが声を掛ける。
光族の皆は上空を飛んで闇族の元へ向かっていた。すると、地面から大量の赤黒い髪のようなものが伸びて来て光族に襲い掛かった。
「皆! 離れろ!」
ケンドの言葉で皆はばらけて回避すると地面に下りた。
「キャハハハハハハハ!!」
「あれは!?」
髪が伸びてきた先には、鋭い目に青い体をした女形の超人が笑いながら地面の中から現れた。
「あいつは……っ!?」
ナイディンが後ろを向くと、大柄の青い超人が拳を振り下ろして来て、ナイディンは咄嗟にそれを避けた。
するともう一体、更にもう二体の超人が立ち塞がった。
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「グリーフさんアレって」
「……闇族だ」
初めて見た闇族に、俺は息を呑んだ。




