王都での再会
負けられない戦い。それは恐らく人生で一度は経験するかもしれない。
俺達光族にとっては日常の様なもんだが、俺は今まさに、そんな戦いの真っ最中だ。
(もう、後がねぇ……)
とても強い緊張感の中、俺は血が出そうなほど拳を握り、欠けてしまいそうなほど歯を食いしばった。
一瞬たりとも目が離せない。ここまでの勝負なんて、滅多に起きない。
俺は息を飲むと、戦いに終止符が打たれた。
「白の18番」
「くそーーーーーーっ!!」
リューロン王国の王都にあるカジノで、俺はルーレットの台に頭を打ち付けて叫んだ。
「悪ぃなガクラの旦那。コインは貰うぜ」
対戦していたドワーフの男は、賭けていたカジノコイン全部を持っていった。
「おい! 次はスロットで勝負だ!」
「別に構わんが、アンタもうコインねぇじゃんか」
「んなもん、換金所で交換して――」
「「させるかぁ!!」」
換金所に向かって走りだした俺に、横から飛んできたガネンとクラカの飛び蹴りで吹き飛ばされ、俺は壁に激突し床に倒れた。
――――――――――――――――――――
「本当にカジノにいたわね」
ガネンとクラカにズルズルと引きずられている俺を見てセーユは言う。
「果たし状の時間まで暇だから時間潰してただけだっつーの。っていうか何でお前等がいんだよ?」
「ちょっと興味があったので」
「まっ、合宿前の下見ってことで別に良いか」
カジノから王都を進んで、俺達はコロシアムの前にやってきた。
「ここで超闘祭が行われるんだよな?」
「ああ。去年のことだが、昨日の様に覚えてる」
元々コロシアムには冒険者がよく集まるが、超闘祭が近いからか、腕に自信がありそうな冒険者がいつもに比べて大分いる。
しかもちょくちょく俺を見ている。
「あれ、ガクラ?」
俺は声を掛けられ振り向くと、そこには背中に二本の剣を背負っている黒髪のエルフの少年がいた。
その周りには彼の仲間もいた。
「キルカ達じゃねぇか。久しぶりだな」
「ああ。久しぶり」
俺は久しぶりに会った冒険者仲間に挨拶すると、彼等は笑って返した。
「父さん、知り合い?」
「ああ。お前等は会ったことが無かったな」
ガネンとクラカはコクっと頷いた。
「この二人が噂のガクラの子か」
「ああ。今年はお前等参加出来んだな」
「まぁな」
去年はコイツ等、かなり離れた町にいたせいで参加出来なかったんだよな。
「それで、ガクラは何で王都に? まだ大会まで日があるだろ」
「実はこの間、俺に果たし状が来てな。今日コロシアムで勝負する約束があるんだ。確か……コユって奴から」
「コユ? それって――」
「ドロボー!!」
キルカが何か言おうとすると、少し離れた所で、男が女性からバッグを盗んで逃げているのが見えた。
「王都で盗みをしようとは、バカがいたもんだな」
氷の属性力で捕らえようと俺は大剣を抜こうとすると、キルカが手を伸ばして止めた。
「多分大丈夫だ」
俺は何でかと首を傾げると、逃げる男の先に冒険者なのか片手剣に胸当てを身に付けた人間の少女がいた。
「そこのガキ、どけ!」
男は殴りかかると、少女は素早くしゃがみ足払いをして男を転ばせると、剣を鞘ごと抜いて体制を崩した男の背中に叩きつける。
「ダメだよー盗みなんて」
少女は男の手からバッグを取ると、追いかけてきた女性に返して、女性は頭を下げてお礼を言った。
「ガクラ、あの子がコユだよ」
「は?」
俺だけじゃなく、ガネンとクラカ、生徒達も驚く。
すると俺に気付いた少女が走り寄ってきた。
「やぁ、初めまして。果たし状で来てくれてありがとう、ガクラ」
――――――――――――――――――――
果たし状の差出人のコユに会った俺達は近くの酒場にやって来た。
「いやー来てくれるか期待と不安半々だったけど、来てくれて良かったよ」
「まぁ暇だったってのもあるが、何でわざわざ果たし状なんか出したんだ? 超闘祭があるじゃねぇか」
「僕、誰ともパーティー組んでなくて。ほら、超闘祭って五人で出るから超闘祭では無理かなって思って」
成程。大会本番では無理かもしれないから果たし状を送ったってことか。
「そういや、何でキルカはコイツの事知ってたんだ?」
「俺も一昨日戦ったんだコロシアムで」
「そうなのか?」
コロシアムはいつもは誰とでも対戦できるようになっていて、よく冒険者同士の力比べに使われている。
「負けたけどな」
「へー……はぁ!? 負けたってお前ランク確かSSだろ」
「えっとー、僕もSSランクなんだけど」
「え、そうなの?」
コイツもランクSSなのか。知らなかった。
それぐらいの実力者だったんなら来て正解かもな。
「ガクラさん。キルカさんって人もSSランクなんですか? 私あまり知らなかったんですけど」
「キルカ達は去年の超闘祭出てなかったからな。遠くの町にいたせいで」
今知れ渡っているSSランクの冒険者って超闘祭に出てるか冒険者歴数十年とかの奴だから、まだ 若いキルカはあまり知られてないんだな。
「初参加以前にガクラ達も出るから優勝は無理だろうな。他の参加パーティーも強いし、二位を目指すってだけでも厳しいな」
少し不安そうなキルカに、隣に座っていたパーティーメンバーの一人のエルフの少女、ユアーナがキルカに寄ってきた。
「大丈夫だよ。キルカ君は十分強いし、私達もいるから」
「そうだな。ありがとうユアーナ」
……なんだ、この二人の良い感じの雰囲気は?
「去年も見て思ったが、お前等って仲良いよな」
「「ん?」」
「「「「「え?」」」」」
何故かキルカのパーティーメンバーに驚かれた。
俺なんか変なこと言ったか?
「ガクラ、お前気付いてないのか?」
「何がだ?」
「あの二人付き合ってるわよ」
「は?」
俺はキルカとユアーナの二人を見ると、二人は気恥ずかしそうな顔をする。
「俺、よく鈍いって言われるが本当か?」
俺は生徒の皆に聞いたら、皆首を縦に振って頷いた。
ちなみによく分かっていないガネンとクラカは首を傾げる。
「ねぇ。そろそろいいかな? 勝負」
コユが困り顔で言うと、俺は「あっ」と思わず口に出た。
「そうだな。じゃあ始めるか」
俺がニヤっと笑いながら言うと、コユは「うん」と頷く。




