ビーチに迫る危機
「スイカ割りするわよ」
アスレルのその一言で、今現在スイカ割りが行われている。
割る役は、クラカがノリノリで立候補して決まった。
クラカは目隠しをして木の棒を持って、周囲の指示でじわじわと近づいて行く。
今、そんな普通のスイカ割りが行われていた。
……スイカの隣で、俺とガネンとエスティーの体が砂浜に埋まって、顔だけ出しているのを除けば。
「チェストーーッ!!」
「「「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
クラカは木の棒を勢いよく振り下ろすと、俺達の前方の砂浜に当たり、その勢いで舞い上がった砂が俺達の頭の上に落ちた。
「あれ? 外した」
目隠しを外して確認したクラカが言うと、アスレルが近づく。
「ちょっと早かったわね。もう一回行くわよ」
「よーし。次こそ――」
「「「ちょっと待てぇぇぇ!!」」」
アスレルがクラカをスタート地点に戻そうとすると、俺達は叫んだ。
「何?」
「何? ……じゃねーよ! 何か俺達が知ってるスイカ割とちょっと違ぇーんだけど! いや、ちょっとどころじゃねーけど!」
「だって普通にやるのはつまらないじゃない。だからちょっと刺激を」
「生死がかかる刺激なんていらねーよ!」
「クラカ。無視してもう一回よ」
「よっしゃー」
クラカは再び目隠しを付けて、木の棒を持って近づいて行く。
「待って待って! 止まってクラカちゃん!」
俺の必死の言葉も無視してクラカはどんどん近づいてくる。
「おい! オメーのバカ娘だろ! 早く止めろ!」
「うるせー! すぐに止まったらとっくに止まってるわぁ! ……って誰がバカ娘だ!」
「二人とも、どうでもいいから早く何とかしようよ!」
こうしている間にも、クラカはどんどん近づいて行き、目の前にまで来ると木の棒を振り上げた。
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
――――――――――――――――――――
その後、何とかスイカ割りが終わって、疲れた俺とガネンは水面をプカーッと浮いていた。
「あ~危なかった」
「アスレルのやろー。クラカになんちゅー事教えてんだ」
二人で海面に浮いていると、ビーチの管理人の魚人族の爺さんがボートに乗ってやって来た。
「やぁ、ガクラ殿」
「ん? 爺さんか」
「こんなに賑やかなのは久しぶりだよ。これも、君達が魔王を倒してくれたおかげだ。本当にありがとう」
「へっ。気にするな」
俺とガネンは爺さんと一緒に砂浜に上がると、監視員の鬼人族の男が走ってきた。
「管理人さん、大変です!」
「どうした?」
「トビザメです! トビザメの群れがこっちに向かって来ています!」
「何!?」
爺さんは首からぶら下げている双眼鏡で沖合を見た。
俺も目を凝らして沖合を見ると、遠くに何かの大群が空を飛んでこっちに向かって来るのが見えた。
トビザメだ。トビザメは簡単に言えばトビウオのサメバージョンのような魔物だ。ただしトビウオと違って普通に空を飛べる。
「こりゃあいかん。すぐに町民の避難と冒険者の収集を町長に伝えてくれ」
「はい!」
あ~あ。せっかくの休日なのに。
――――――――――――――――――――
俺達は着替えて、戦闘準備。生徒達は町民と一緒に避難場所に向かわせることにした。
「ガネンとクラカは念の為、生徒達の護衛を頼む」
「分かった」
「りょうかーい」
ジュリエの先導で、生徒達とガネンとクラカは避難場所に向かった。
「んじゃあ。行くとするか」
「俺等も力が有り余ってるからな。ガンガン行くぜ」
ブラークは拳を合わせてやる気十分だ。
「よーしお前等! 今晩はサメのフルコースじゃあ!!」
『おーーーーーーっ!!』
冒険者達は武器を手に取り、トビザメの群れに立ち向かった。
――――――――――――――――――――
「しっかし随分大きな群れだな。キリがねぇ」
戦闘が開始して30分以上経つが、あんまり数が減ってる気がしない。
背後から一匹のトビザメが襲ってくると、エスティーが双剣で三等分に斬った。
「おい! 何ボーっとしてんだ」
「いやぁ~数が多いなぁと思って」
「確かに随分大きな群れだな」
そんな二人に二匹のトビザメが襲い掛かると、ガクラとエスティーは一匹ずつ斬り伏せた。
「だが晩飯には困らねぇ」
「ああ。今晩はごちそうだ」
俺達はトビザメの群れに向かって走った。
――――――――――――――――――――
一方避難場所では、護衛をしているガネンとクラカは退屈そうにしていた。
「避難場所を守れって言われても」
「一匹も来てないよね」
そんな二人はビーチで戦っている光の兄弟を見ていた。
ブーメランでトビザメを斬り裂いていくクレン。弓で射抜くエンジェ、二本の短剣で斬っていくファルク、殴り飛ばすエグラル。
素早い剣術で斬り刻むメイト、魔法銃で明確に撃ち抜くフォクサー、鞭で巻き付けて捕らえると別のトビザメに叩きつけるアスレル。
ツメで斬り刻みウルファー、棍を叩きつけるノクラー、仕込み杖で斬るアール、扇で踊る様に倒していくレイル、蹴り飛ばすシュラル。
「流石、最高ランクの冒険者でもあるわねガクラさん達は」
同じく光の兄弟の戦いを見ていたセーユが呟く。
最高ランクのSSランクに達しているガクラ達に対して、ガネンとクラカは、以前の屋敷の調査依頼で上がったが、まだ下から二番目のEランクだ。
――――――――――――――――――――
「ん~……」
俺はトビザメの群れの動きを見て少し首を捻らせていた。
「どうしたガクラ。何か気になってるみたいだが」
トビザメを殴り倒したブラークが俺に声を掛ける。
「何かこの群れさぁ、ここに襲いに来たっていう風にはなんか見えねぇんだよな」
「……確かにな。あの様子、まるで何かから逃げてるみてぇだ」
そう言っていると、一匹のトビザメが襲ってきたので、俺とブラークが構えると、海から巨大な水しぶきが上がって、そこから巨大な何かが伸びて来てトビザメを捕らえた。
すると、トビザメの群れは一斉にバラけ出した。
いや、逃げ出したが合ってるな。
「「は?」」
俺達は声を出してよく見ると、伸びてきたのは巨大な竜の頭だ。
竜はトビザメを口で捕らえてると、そのまま食いちぎった。
それに続いて、四つの竜の頭が海から飛び出すと、胴体が海から現れ全体が見えた。
水色の鱗に覆われた体に水かきがある四本の足。そして巨大化した俺達と同じぐらいの大きな体。
現れたのは、クラーケンを簡単に食うと言われている、海に住む魔物の中ではトップクラスの強さを持つ一級の魔物、シーヒドラだ。
「トビザメはコイツから逃げてきたのか!」
「ガクラ! コイツを早く倒さねぇとオーシェンの町があぶねぇぞ!」
エスティーが寄ってくると、他の皆も集まってきた。
「ああ。トビザメは他の冒険者に任せて、俺達はコイツを倒すぞ」
俺達は武器を構えて、シーヒドラの前に立ち塞がった。




