ガクラの考え
その日の夜、設置した場所に移動できる転移魔方陣でオールブ島の家から、住んでいる家に俺達は戻ると、ジュリエから貰った資料を見ていた。
「随分とデカい学校だな」
資料によるとセシュイン学園は初等部、中等部、高等部の三つが一つになっているからオールブ島一大きい学園らしい。
「やっぱ大きい学園だから教師足りねぇのか?」
「でもそんな大きい学園なら逆に足りるんじゃないか?」
「連帯責任で大勢クビになったとか」
「クラカちゃん、そんな暗いこと言わない」
資料を見て、俺は学園のコースが目に入った。
コースは二つあり、冒険者を目指す冒険者コースと、それ以外を目指すノーマルコースの二つに分かれていて、冒険者コースは戦闘訓練が授業にある。
「割合的に冒険者コースは九割程で殆どか。生徒の年齢的にもガネンとクラカとあまり変わらねぇな」
ガネンとクラカは人間で例えると16、7だから丁度良いな。
「……」
「ガクラ。何企んでんだ?」
「は?」
エスティーの言葉に俺は少し戸惑った。
「何だよ急に?」
「いや、お前がちょっとニヤついてたから怪しいと思ってな」
「別になんも企んでねぇが、ニヤついてたか俺?」
自分じゃあ分かんねえからガネンとクラカに聞いてみた。
「うーん確かにちょっと口元が緩んでたかも」
「うん。気持ち悪いぐらいに」
ニヤついてたのは本当みたいだが気持ち悪いという言葉にグサッときた。
「まぁ企んでたというよりは良い事を思いついただけだ」
これは本当だ。
「何だよ良い事って?」
「それは明日になったら分かる」
「はぁ?」
エスティーは首を傾げる。
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翌日、俺達はオールブ島の家に行き掃除やら整理やらしていた。
「メイト。このテーブルは何処に置きゃあいい?」
「日当たり的に考えると、そこの壁から三、六九メートルぐらいの所」
「いや分かんねぇよ! もっと分かりやすく言え!」
「僕的にはこれが分かりやすい説明なんだけど」
じゃあもう無理だわ。
俺はなんとなくの場所にテーブルを置いた。
「おいガクラ、足どけろ」
「あぁ、悪ぃ」
床を掃除しているクレンに言われて俺は足をどけた。
「メイトー。この椅子何処ー?」
「その椅子はあのテーブルの右側に置いて。あ、ごめん。僕から見て右だから左」
ガネンとクラカは言われたとおりに椅子を置いた。
「お前等はきちんと働いてるが、それに比べて……」
俺は部屋の角で足組んで椅子に座っている女をチラッと見た。
「ほらほら皆ー、手止めなーい」
オメーも何かしろよ。
手を叩いて偉そうにしているアスレルを見て俺はイラっとした。
「お前もちょっとは手伝え」
「何言ってんのよ。力仕事は男の仕事でしょ。か弱い女にやらせる気?」
何処がか弱いだ。か弱いって言葉を辞書で調べて見ろ。全然お前と当てはまらないぞ。むしろ逆だぞ。
そう思った次の瞬間、アスレルの高速パンチが俺の顔面に飛んできて吹き飛ばされた。
「ごはっ!!」
「何か失礼な事を思われた気がした」
殴り飛ばされ気を失いかけると玄関のドアが開いた。
「こんにちは」
訪ねてきたのはジュリエだった。
こんな時に来るとは。
「お前かぁ、何の用だ?」
「昨日申した通りに、皆さんに学園でやってほしいことをお伝えしに参りました」
ジュリエは一枚の紙を取り出すと、近くにいたメイトに渡した。
紙を渡されたメイトは紙を開いて見た。
「なるほどね」
「何だメイト。何書いてあんだ?」
「ああ、僕等がやることは冒険者コースの教官みたいだよ」
冒険者コース、教官……ってことは。
「俺達は教官として生徒を鍛えてくれ……って事か?」
「はい。その通りです」
簡単な内容で助かった。難しい事とかよく分かんねぇし、座学とかだったらまず俺は無理だ。
するとエスティーが割り込んできた。
「なぁ、俺達に教官をやってほしいってことは教官の数が足りねぇのか?」
「いえ、そう言うわけではないのですが……まぁこちらの都合です」
「いいじゃねぇかどんな理由でもよぉ、久々の依頼なんだからよぉ。……あ」
俺はある大事なことを思い出した。
「そういやぁ学園長。今回の依頼の報酬を聞いてなかったんだが」
依頼をやるんなら報酬はとても大事だ。特に今の俺等は。
「そう言えばそうでしたね。活躍に応じて増やす予定ですが……最低でも」
ジュリエは紙とペンを取り出して書くと俺達に見せた。
「大船に乗ったつもりでいろ」
俺は親指をグッと立てた。
「それは心強いです。それでは今日はこの辺で」
用が済んだジュリエは家を出ようとすると、俺はもう一つ大事なことを思い出した。
「あー待ってくれ。丁度お前に用があったんだ」
「はい?」
ジュリエは足を止めると振り向いて首を傾げる。
俺は懐から一枚の封筒を出し、ジュリエに渡した。『入学届』と書かれた封筒を。
「ガクラさん、これは?」
俺は封筒を渡すと後ろにいるガネンとクラカを指さした。
「俺の息子と娘を入学させてくれねぇか?」
「「は?」」
ガネンとクラカは同時に呆気に取られた声を出す。
「ねぇ父さん。それってどういうこと?」
突然のことに困惑しているクラカが訊ねた。
「あーほら。お前等前に『この世界の事よく知らないのに教師なんて出来るの?』とかなんとか言ってただろ? 確かにそうだなぁって思った時に学園の資料を見て、二人を入学させて生徒として学ばせた方が良いんじゃねぇのか? っと思ったわけだ」
説明を終えると、何故か二人は怪訝な表情で黙っている。
「どうしたお前等?」
「どうしたって、どう見たって呆れてるじゃねぇか。お前の勝手な提案で」
流石に内緒にしてたのはマズかったか?
「ガネン、クラカ。黙ってたのは悪かったが、この世界の事を一気に多く学べる良い機会だと思わねぇか?」
「まぁ~そうかも知れないけど」
「いきなり学校に通えって言われても」
まだ不安そうだが、依頼が始まるまで時間がある。それまでには少しは考えがまとまってほしいな。
「まっ、前向きに考えてくれ」
俺がその場を後にすると、エスティーが声を掛けた。
「ガクラ。本当にそれだけの理由であの二人を学園に通わせようとしてんのか?」
時々鋭いんだよなぁコイツ。
「四割程その理由だ。残りの六割は……」
俺は二人を見た。
「友達が出来れば良いなと思っただけだ」
「……そうか」
思ったよりまともな理由でエスティーは笑った。




