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超人種族の異世界英雄記  作者: 至田真一
偽りの英雄
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ガクラ対ノス

「うおっ!」「うわっと」


 界獣は頭部の二本の角から大量の小さな矢のような光線を放つと、ガネンとクラカは躱す。

 今度はガネンに向かって火を吐くと、ガネンは体を捻らせて避けて近づき腹に拳を入れる。

 よろついた界獣は鎌状になっている右手を振り下ろすとガネンは両手で受け止めた。

 今度は鉄球状になっている左手で殴りかかるとガネンは右手で受け止めた。


「おりゃあ!!」


 クラカが横から界獣を蹴り飛ばすと、クラカの足元に向かって口から冷気を吐く。


「冷たっ! ……ってヤバっ!」


 クラカの足が凍り、地面とくっ付いてしまった。


「クラカ! うわっ!?」


 界獣が鉄球で再び殴りかかると、ガネンはしゃがんで避けるが、続いての尻尾の攻撃を受けて吹き飛ばされる。


「痛ててて」

(手の鎌と鉄球は厄介だな。素手でのガードは危ないし。剣があればいいんだけど……ライテストで作ったものじゃないから使えるか分からないし)


 光族の武器は殆どがライテストの技術で作られ、本来の姿でも人間の姿でも使用が可能になる。

 しかし、ガネンとクラカの武器はこの世界で作られたため、人間の姿では使えても本来の姿では使えるのかが分からない。

 悩んでいると、界獣の尻尾攻撃がガネンの足に当たり転んでしまう。


「しまった!」


 倒れてしまったガネンは立ち上がろうとすると、界獣が鎌を振りかぶってきた。


「うおぉぉぉ!!」


 ガネンが声を上げると、手に光が集まりガキン! と金属音が鳴った。


「これは……」


 ガネンの手には以前メイトが作ってくれた赤い剣が握られていた。

 鎌を剣で弾いて界獣の腹を剣で斬ると界獣は倒れた。


「ふんぬーっ!」


 クラカは足にエネルギーを集中させて氷を溶かしてガネンの元に行く。


「ガネーン。どうやって出したのソレ?」

「何か自分の剣をイメージして光素を集中したら出た」

「ホント!? よーし!」


 クラカは自分の剣をイメージして光素を集中させた。

 すると手に光が集まり、自分の青い剣が出てきた。


「おー、出来た」


 二人は剣を構えて界獣に向かって走る。

 起き上がった界獣は角から光線を撃つと二人は飛んで躱し、剣から斬撃を放ち界獣に命中させて怯んだ隙に近づいて剣で斬りつける。

 界獣は角からの光線と口からの火で反撃すると、二つの攻撃は二人の足元に命中し爆発が起きる。

 二人は爆炎の中から飛び出すと、界獣に向かって真っすぐ飛び。通り抜け様に剣で斬りつけ、界獣は弱々しい声を上げて爆散した。


「やったね!」

「おぅ!」


 剣を使えるようになり、界獣を倒した二人はグータッチをする。


――――――――――――――――――――


「バ、バカな」


 買い取った中で一番強い界獣が倒され、ノスは驚く。


「うちの子をあんまナメてんじゃねぇぞ、ノス」


 界獣を倒したガネンとクラカがガクラに声を掛ける。


「父さん。俺達も手伝おうか?」

「いや、俺一人で十分だ。お前等は学園に戻ってろ」

「分かった」

「じゃあ任せたよー父さん」


 二人は小さくなって人間の姿に戻ると学園に走っていった。


「じゃ、再開といきますか」

「勝つのは……私だ!!」


 ノスは剣を斜めに振り下ろすとガクラは体を仰け反らせて避け、続いて横に振るとガクラはしゃがんで避けノスの腹を殴り、ノスは腹を押さえて数歩後退する。


「剣の腕が無いなー。調査団の新人の方がもっと腕良いぞ」

「うるさい!! まだこんなものじゃなーい!!」


 ノスが剣を振り下ろしガクラは避けると、ノスは足を伸ばして蹴りを当てようとするが、ガクラは足を受け止めて後ろに投げ飛ばすとノスは地面に倒れる。


「ク、クソ……」

「さて……長く戦うと町に迷惑だ。早く終わらせてもらうぜ」


 ガクラの体が緑色に光ると、体の色が緑に変化した。


「姿を変えた所でなんだというのだ!?」


 ノスはガクラに向かい剣を振り下ろす。

 剣がガクラに当たる直前、ガクラの姿がフッと消えた。


「何!? 何処に行った!?」


 ノスが辺りを見回していると、背中に風の衝撃波が当たり前から倒れる。

 倒れたノスが後ろを見ると、そこには右手を突き出したガクラがいた。


「バカな。いつの間に」

「風の速さ、ついてこれるか?」


 ノスは剣から斬撃を飛ばすと、ガクラは凄まじい速さで躱すと、ノスの目の前に現れ顔に蹴りを入れる。


「おのれーっ!!」


 今度は剣で突きを放つが、これも避け後方から風の弾を飛ばしてノスに命中させる。

 吹き飛ばされたノスは剣から光線を放つとガクラは風のバリアで防ぎ、ガクラはそのままバリアをノスに向かって飛ばしてノスに命中した。


「ぐあぁぁぁっ!!」


 後ろに転がり倒れたノスに、ガクラは一瞬で移動して起き上がろうとするノスを両腕でガシッと抱え込んだ。


「な、何をする!?」

「こうすんだよ。トルネードスロー!!」


 ガクラが叫んでノスを真上に投げ飛ばすと竜巻が起き、ノスは竜巻の中で回転しながら近くの広場に叩きつけられた。


「う、ああ……」


 目を回したのかノスはフラフラとよろけながら立ち上がると、ガクラは両腕に力を溜めて顔の前で腕を交差する。


「ウインドクロス!!」


 腕を伸ばして放ったクロスの形の風の斬撃がノスに当たると、斬撃は回転してノスを攻撃する。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!! 私が……え、英雄にぃぃぃ!!」


 ノスが叫ぶと爆発し、爆炎の中から白い剣が空中で回転しながら放り出され、ガクラの近くの地面に刺さると、剣は粒子となって消えた。


――――――――――――――――――――


 爆発した場所に、イサユを先頭にオールブ島警備団が走って向かうと、そこには体がピクピクと痙攣している人間に戻ったボロボロのノスが倒れていた。

 近くには、あの白いカプセルが砕けて落ちていた。


「ノス町長。貴方の身柄を拘束させてもらいます」


 警備団員に手錠を掛けられノスは連れていかれると、何かブツブツと言っていた。


「私が……英雄に。私が……英雄に。私が……」


 同じことを何度も呟きながら、ノスは連行用の馬車に連れていかれた。


「まるで取り憑かれてるみたいだな」

「人は誰かの役に立ちたいという思いはある。だがその思いが強すぎるとやり方を間違え、それは悪になってしまう事がある。今回の事件も、その一つだろうな」


 トーザとイサユが連行されるノスを見てそんな会話をすると、ノスは護送馬車に乗せられ連れていかれた。

 その様子を人間の姿に戻ったガクラは建物の陰から見ていた。


――――――――――――――――――――


『偽物の英雄 白い巨人』


 ノスが捕まった翌日の昼休み、俺は食堂でそんな見出しの新聞記事を読んでいた。

 最近出現した界獣はノスが闇取引で買い取ったものだということ。白い巨人もノスが闇取引で手に入れたアイテムで変身したものだということ。それら全てが記事に乗っていた。

 ノスは当然北町の町長を辞退。その座は息子のホクに受け継がれた。

 俺は新聞を閉じてテーブルの上に放り投げると、後ろの席に座っているイサユが口を開いた。


「ノス町長……いや、ノス殿は取り調べの時もずっと放心状態。牢屋にいる間も同じことをブツブツと言っていた。『私が英雄に』……と」


 それを聞いた俺は呆れるように鼻息を吐く。


「英雄になりたいねぇ~。別に英雄にならなくても大物にはなれんのにな」

「全くだ」


 椅子の背もたれに仰け反るエスティ―に俺は同意した。


「でも、英雄は多分この世界では憧れの的ですし、なりたいという思いはあると思うんですけど」

「そういうのはな、頑張ってなるより気付いたらなってるって方が多いんだ」

「どういうことですか?」


 首を傾げて聞くセーユに俺は答えた。


「簡単に言えば自分のやるべきことをやる。そうしたら、いつの間にか大物になってるもんさ。光族も実際そんな奴多いし、俺等もこの世界じゃそうだからな」


 俺はただ調査団の任務で魔王と戦っただけで、英雄になりたかったわけじゃねぇからな。

 倒したら英雄扱いされただけ。


「それに光族になった奴も気付いたらなってたって感じだしな」


 俺がそう言うと、光の兄弟以外の皆の表情が変わった。


「あのー。光族に”なった”ってどういうことですか?」

「ん? ……あー、そうか」


 このことはあんま知られてねぇんだよな。

 この世界で知ってんのは知り合いの冒険者ぐらいだしな。

 隠すようなことじゃねぇし……いいか?


「実は光族には二種類いてな。一つは俺達の様に元から光族の奴。んでもう一つは……人間から光族になった奴だ」


 それを聞いたセーユ達は目を大きく開く。


「ひ、光族になるってどういうことですか!?」

「俺達光族の力の元になってる光素はな、人の正の感情……正しい心とか優しさ、そういうのに反応する性質があるんだ。それでたまに、強い正の感情を持っている人間の体に大量に入って人間から光族になることがあるんだ」


 俺が言い終えると、セーユ達がポカーンと固まっている。


「どうした?」

「いえ……驚きで言葉が出ません」

「光族になれるだなんて、そんな事想像できませんよ」

「まぁ可能性なんてめっっっっっっっっっっっちゃ低いからな。多分10人ぐらいしかいないぞ」

「それって無数の世界の中からですか?」


 シフールの質問に俺は頷いた。


「まっ、あんま期待はするな」


 話を終え、俺は昼食を頬張った。……気がかりな事を思いながら。

 ノスに白いカプセルを渡した蟲人は恐らく引き渡し役にすぎねぇはずだ。

 一体どうやってあんな巨人になれる力を手に入れたんだ?


――――――――――――――――――――


 暗い大きな部屋の真ん中を蟲人は歩くと、奥の玉座の様な大きな椅子に座っている男の前に立ち頭を下げた。その男の手には白いカプセルがあった。


「ご報告致します。カプセルを渡した例の男ですが、ガクラに敗北致しました」

「……だろうな。下がれ」

「はっ」


 蟲人は下がり部屋を出ると、入れ替わりで人型の機械に身を包んだ異世界人が入ってきた。


「ご報告です。『例の物』が封印されている世界を発見致しました。現在捜索中とのことです」

「そうか」


 男はカプセルを人差し指と親指で潰すと、椅子から立ち上がり異世界人の横を通り過ぎた。


「どちらへ?」

「……散歩だ」


 部屋を出て巨大な通路を歩いている男は口角を上げる。


「もう少しだ。お前等の終わりの日は近いづいて行くぞ……光族」

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