真実
倉庫に向かう前。
「父を止めてほしい? どういうこったぁ?」
突然のホクの頼みに俺は困惑しイサユに顔を向けると、イサユは顔を横に振る。
警備団にも話してないのか。
「説明してもらおうか?」
「……最近、中央町で話題になっている白い巨人。アレは父なんです」
それを聞いた生徒と警備団は驚きの表情になり、俺は眉間にしわを寄せる。
「ホク君。それは一体どういうことなんだ!?」
イサユの質問にホクは答える。
「巨人が現れる二日前の夜中、父の部屋から話声が聞こえてドアの隙間から覗いたんです。そこには父が虫のような姿をした人と話しているのが見えたんです」
虫のような姿をした人……蟲人か?
だが、この世界に蟲人はいないはず。
「その人は、父に白いカプセルのような物を渡すと父に言ったんです。『これがあれば貴方は光族と同等の力を得られる』……と」
白いカプセル……それであの巨人に変身してたってことか。
だが、何でそんな胡散臭そうな話を真に受けたんだ?
「その話、まだ続きはあるか?」
「はい。白いカプセルを受け取った後、父達の会話ですが……」
『こちらがセットの界獣五体でございます。この界獣共の強さ、行動は全て貴方の手で全て調整可能です』
『おお! このカプセルと界獣があれば……』
『値段は結構かかりますが、どうしますか?』
『買おう!! いくらでも構わない!! これがあれば私はなれるのだ。念願の……英雄に!!』
「……これが、僕が聞いた会話です」
話を聞いた俺は、ノスがあの巨人になった理由がなんとなく分かった。
「最初はきっとすぐ止めるだろうと思って止めませんでした。でも、父は止めることなくどんどんエスカレートしていきました。お願いします!! 父は今日、買い取った界獣の中で一番強いのを何の調整もせずに本格的に暴れさせるつもりです!! そうすれば、間違いなく町に大きな被害が出てしまいます。どうか、父を止めて下さい!!」
調整か……。
確かに今考えてみれば最近出現した界獣はどうもなんか変だった。
最初に出現したのは現れただけで暴れもせず、あっさり倒されたし。
次に現れたのも、火を吐いてはいたが、建物ではなく地面に向かって吐いていたし、コイツも呆気なく倒された。
そして昨日の二体は建物を破壊したりと結構暴れていた。倒されるのにも、多少時間が掛かっていた。
しかしこのやり方……なんか気に入らねぇ。
「おい。ノスは今何処にいる?」
――――――――――――――――――――
「……んで、ここに来たって訳だ」
その話を聞いたノスは歯ぎしりをする。
「ホクの奴め。あの話を聞いていたのか」
「お前があの巨人に変身していた理由はなんとなく分かった。どうせ英雄になりたいとかそんなとこだろ?」
「そうだ!! 私はあの話を聞いた時跳び上がりそうになったよ。貴方と同じように英雄になれるチャンスが来たのだと!!」
俺達はなりたくてなったわけじゃねえんだけどな。
「ノス町長。こんな事をしても英雄にはなれません。もう止めましょう」
「うるさい!! 私は今日をもってなるのだ、英雄に!!」
ノスは奥にある木箱をどかすと、そこには大砲が置かれており、空に向かって何かを撃った。
「今の……まさか」
俺は大砲から撃ちだされたものを目で追った。
それは空中で光を放つと、界獣になり町に降り立った。
「あれがノスが買い取った中で一番強い界獣か」
「そうだ! アイツを倒すことで、私の実力を皆に見せつけるのだ! だから、邪魔をするな!!」
ノスは白いカプセルを取り出すと、先端に付いているボタンを押した。
するとカプセルから白い光があふれ、ノスを包み込むと巨大化し倉庫の屋根を突き破った。
光が消えると、あの白い巨人がそこにいた。
「私は……なるのだ……英雄に!!」
ノスと界獣。俺はノスの相手に集中してぇし……。
界獣は、アイツ等に任せるか。
――――――――――――――――――――
「まさか、あの白い巨人がノス町長なんて……」
告げられた真実にセーユ達生徒は驚きを未だに隠せずにいた。
「父は昔から英雄に憧れていました。自分も人々から尊敬されるような存在になりたいと」
「それで闇取引の話に乗っかったのか」
エスティーの問いにホクは頷くと、エスティーはため息を吐く。
「北町の将来が心配だな」
「間違いなく町長は辞任させられるね」
エスティーとアールがそう言うと、ホクは不安の表情になる。
「でもガクラさんだけ行かせて良かったんですか? エスティーさんも行きたそうに見えましたけど」
「本音を言えば、俺も行ってぶん殴りたい所だったんだが……ガクラ一人で十分だしな。それに、アイツのあの顔を見たらな」
「なんか……分かる気がします」
真剣顔のガクラを見たセーユは納得する。
「父さんの事だから、今頃ムカついたからって理由で殴ってそう」
「確かにあり得る」
ガネンとクラカが笑いながら話す。
「ガクラさんでも流石に……」
「あり得るぞ。アイツは相手が貴族だろうがムカつく奴なら平気でぶん殴るからな」
「そうそう。前にも死刑が決まった貴族をぶん殴って半月近くも目を覚まさなかった事があって、そのせいで刑が中々行えなかった事があるのよね」
頬杖を突きながら言うアスレルにセーユは困り顔になると次の瞬間、町の警報が鳴り響いた。
「うわっ! な、何!?」
突然の警報に生徒達が驚く中、ガネンの兄弟の証に通信が来た。
『おーいガネン。クラカもいるか?』
ガネンが出ると、オールブ島警備団と一緒にノスの元に向かったはずのガクラが出てきた。
「父さん!?」
「いるよー。どうしたのー?」
『ノスの奴、最後の界獣を出しやがってよ。しかもあの白い巨人に変身しやがった』
どうやら向かったものの間に合わず、ノスが実行に移したようだ。
『でよ、俺はノスをぶっ飛ばすのに集中したいからガネン、クラカ。界獣の方をお前等二人に任せる』
「「え!?」」
「おい待て!」
ガネンとクラカが顔をしかめていると、エスティーが割り込んできた。
「ガクラ、俺にやらせろ! 体がなまってしょうがねぇんだよ!」
『うるせーな。若い奴優先が異世界調査団でのやり方だろ』
「まぁそうだがよぉ」
『というわけだ。頼んだぞぉー』
ガクラの通信が切れた。
「相変わらず強引だな」
「ホントだよぉ。……それじゃあ」
「ああ」
ガネンとクラカはお互いを見てから頷くと、窓から飛び出し本来の姿に戻って界獣の方に飛んでいった。
界獣を見つけると二人は巨大化し、界獣にパンチを放ち界獣を吹き飛ばす。
――――――――――――――――――――
「お、来た来た」
ガネンとクラカが来たのを確認した俺は白い巨人になったノスに振り向く。
「こっちも始めるか」
俺は本来の姿に戻って巨大化した。
「さて、お前のアホな計画を終わらせないとな」
「アホだと!? ふざけるな! 私はなったのだ。英雄に……光族に!」
……俺の中で、何かがプチンっとキレた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ノスは走り出して、手に持った剣を俺に向かって剣を振り下ろすと、俺は左手でガシッと掴んだ。
「何!?」
「テメェみたいなパチモンが……」
俺は右拳に力を溜め拳が光ると、ノスの顔面を殴り飛ばす。
「光族を名乗るな!!」




