北町の町長
「あのー。大丈夫ですか皆さん?」
学園の食堂で昼食を食べているとセーユが声を掛ける。
「大丈夫って何がだ?」
「いえ、皆さん最近授業中でも何か考え事をしている感じがするので」
「……ああ。……ちょっと、あの白い巨人の事でな」
「あの巨人ですか」
今あの白い巨人は、中央町では最近話題になっている。
『中央町に突如現れた新たな英雄』……と。
「あれは光族じゃねぇんだけどな」
「違うんですか?」
「ああ。アイツからは光素を感じないからな」
光素は俺達光族以外には感じられない。だから皆はあれが光族ではないというのが分からず、光族であることを疑わねぇんだと思う。
「光素を出さない様に戦うというのは?」
「無理だな。光素を感じさせない様に戦うのは歴戦の光族でも難しい。第一、奴自身だけじゃなく光線からも光素を感じなかったんだ。それは間違いなくおかしい」
俺が言うと隣に座っているガネンとクラカも頷く。
「何なんだろうな、ホントにあの巨人は」
「あ~! なんかモヤモヤする~」
昨日この話をした時、他の皆もあの巨人の正体に頭を悩ませる。
さっさと正体を掴みたい。
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学園からの帰り道、俺は途中の公園のベンチに座っていた。
あの巨人が現れるかもしれないからだ。
巨人も気になるが、界獣の方も気になる。
やっぱり誰かが闇取り引きで入手したのを操ってるのか?
この二つの件を何とかしないとな。
「すみません。もしかして、光の兄弟のガクラ殿ですか?」
俺は声を掛けられた方を見ると、そこには40代ぐらいの人間の男がいた。
「そうだが……アンタは?」
「初めまして。私は北町の町長をしております、ノスと申します。本日は中央町の町長と会談のためにこの町に来ました」
中央町の町長……あ、ジュリエの事か。
「宿に戻る途中、貴方を見かけたので声を掛けさせてまらいました」
「あっそ」
ノスは隣に腰かけた。
「私は一度、貴方方光の兄弟とお話をしたいと思っていました」
「俺等と?」
「はい。なんせ貴方方は魔王を倒し、この世界に平和をもたらしてくれた英雄ですから」
「そうか」
英雄って呼ばれてもな、俺達は別に……。
「ガクラ殿。貴方は英雄とは何なのだとお考えですか?」
「は?」
突然の質問に俺は呆気にとられた。
「私は、英雄とは常日頃から人々のために活躍し、希望を与える者だと思うんです。人々の為に活躍、戦い支援を得る。それが英雄だと思うんです」
ノスは目を輝かせながら語る。
俺はそんなノスに困惑を感じていた。
「それでは、私はこれで」
「あ、ああ」
ノスは軽く頭を下げると近くに待たせている馬車に乗って行った。
その後、夕飯の少し前まで待ったが、結局その日は界獣も白い巨人も出なかった。
……だがその翌日、中央町に界獣が現れた。しかも二体。そして勿論、あの白い巨人も現れた。
町で暴れる二体の界獣と白い巨人は戦い、界獣達は白い巨人に倒された。
そして周囲から歓喜の声が上がると、巨人は姿を消した。
俺の方をチラッと見て。
――――――――――――――――――――
次の日の昼休み、今回の件について考えていた。
「また考え事ですか?」
「ああ。早く今回の件を解決させてスッキリしてぇんだよ」
「でも界獣を倒してるんですから味方なんじゃ?」
「味方なら良い。だが、光族を名乗るだけの偽物なら許さねぇ」
過去にも光族を名乗ろうとした偽物が現れた事例がある。
俺はその話を聞いた時とても腹が立った。
「あのー。私昨日例の白い巨人見ました」
「はい! 私も見ました!」
遠慮がちに手を上げるシフールとピンッと手を上げるモリンが言った。
「ふーん。で、実際に見てどうだった?」
「はい。確かに最初は味方かと思ったんですが、何と言えば良いのでしょう……。戦い方に違和感を感じました」
「私もです。あの戦い方……まるで、見せつけてるような……そんな感じがしました」
「見せつけ……か」
この二人の意見は間違ってない。
あの巨人はやたら派手な動きをしたり必要以上に力を溜めたりしている。
あれだと自然に視線が集まる。
まさかな……。
「光の兄弟の皆さん」
声を掛けられ振り向くと、そこにはジュリエが立っていた。
「学園長か。何の用だ?」
「貴方方にお客様です」
「客?」
そう言って奥の方から来たのはイサユ、トーザ、ソウシと四名のオールブ島警備団だ。
「なんだよ、客ってお前等か」
「いや、俺達は護衛だ。アンタ等に本当に用があるのは」
イサユが後ろを向くと、四名のオールブ島警備団の中から一人の人間の青年が姿を見せた。
なんだろう。誰かに似てるような。
「初めまして。僕は北町の町長、ノスの息子のホクと申します」
ノスの息子、だから似てると思ったのか。
「それで、俺達に何の用だ?」
「はい」
ホクは意を決したかのような顔をすると、深く頭を下げた。
「お願いします!! 父を……父を止めて下さい!!」
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中央町にある無人の倉庫。
そこで一人の男が熱心に計画を進めていた。
「今回の調整は無し。私も三回の戦いで『あの力』には随分慣れてきた。何の調整もしないコイツを倒すことで私は遂に――!!」
「英雄になれると?」
突然の声に、男はバッと後ろを振り向いた。
すると倉庫の入り口には、オールブ島警備団が立ち塞がっていた。
「もうこんなことは止めましょう。ノス町長」
イサユに言われて男、ノスの頬に汗が流れる。
「うるさい! 何故お前達がここに!?」
ノスが叫ぶと、オールブ島警備団の中からガクラが顔を出した。
「ガ、ガクラ殿!? 何故貴方も?」
「頼まれたのさ。お前の息子に」




