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超人種族の異世界英雄記  作者: 至田真一
偽りの英雄
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クラカの奮闘

「こっちだ、急げ!!」


 植物生物から逃げる町民をオールブ島警備団の団員達が誘導していた。


「随分と大きいな。池の水を大分吸収したな」


 一つ結びをした長い金髪の人間の男、オールブ島警備団団長のイサユは植物生物を遠くから見ていた。

 その後ろには白衣を着たエルフの老人が立っていた。


「学者殿。あれが逃げ出した植物生物で間違いありませんか?」

「ええ。とてつもなく成長していますが間違いありません。団長さん、アイツがあそこまで成長すると間違いなく大きな被害が出てしまいます。奴の討伐をお願いします」


 学者は頭を下げてお願いすると、イサユは「分かりました」と答えた。


「イサユさん、こっちは戦闘準備完了だ」


 垂れ目をした魚人族の男、オールブ島警備団副団長のトーザの言葉にイサユは頷いた。


「よし。第一部隊は大砲と弓、第二部隊は魔法で攻撃!」


 イサユの言葉で団員達は構えた。


「撃てーーっ!!」


 イサユの合図で大砲と矢、魔法が発射され植物生物に命中し、頭が吹き飛ばされたり半分失うが、すぐに再生してしまう。


「チッ。厄介だな」


 再生の速さにトーザは舌打ちをする。

 すると植物生物の体が少し大きくなり、新たに首が二つ生えた。


「クソっ! また成長したのか」


 新たに生えた首を含めた三つの首が警備団達に襲い掛かってきた。

 次の瞬間、横から飛んできた人影が三つの首を斬り、頭が地面に落ちた。

 着地した人影を見ると、それはガクラの娘のクラカだ。


「あれは……ガクラ殿の娘!?」


 クラカは剣を持って植物生物に向かった。

 植物生物は噛みついてきたり蔦を伸ばしてくるが、クラカはそれらを剣で斬り伏せていく。


「女の子一人に負けてられねぇぞ!! 撃てーー!!」


 警備団の負けじと大砲と弓、魔法で植物生物を攻撃する。

 クラカは「おぉー」と感心すると、植物生物に振り向く。

 すると首の一つが別の方向を見たのに気づき、その先には小さな女の子が一人泣いていた。


「あっ!!」


 クラカは急いでその女の子の所に走って女の子を抱き抱える。

 ――が、植物生物が口を開けて目の前まで迫っていた。


――――――――――――――――――――


 オールブ島の家でソファに寝ころぶ俺は、違う世界で買った漫画雑誌を読んでいた。


「いや~今日も暇だなぁ~」

「休日はいつもそうじゃん」


 ガネンがジト目で言う。

 リビングには俺とガネン、そして床で寝ているディークがいる。


「そういやぁクラカの奴、散歩行ってくるって言ってたが何処行ったんだ?」

「さぁ? どうせその内ひょっこり帰ってくるよ」

「だろうな」


 あっ、この漫画また気になる形で終わったな。

 ホント良い腕してるよこの漫画家。

 すると、ディークが目を覚まして牙をむき出して外に向かって唸る。


「どうしたんだ?」

「どうせ誰か来たんだろ。誰だ?」


 俺が立ち上がると同時に家のドアがバンバンと叩かれる。

 ドアを開けると、オールブ島警備団の団員服を着た人間の男がいた。


「旦那、大変です! 例の植物生物が公園の池に現れて、かなりの大きさに成長しているんです!」

「植物生物? ……あ~あれか。それで何? 手伝ってくれと?」


 団員が頷くと、俺はやっぱりかと頭を掻いた。

 俺に頼むって事は、被害が出てるってことか?


「しょうがねぇな~。暇だから行ってやるよ」


 俺は行こうとすると、団員は短い棒の先端に小さな結晶が付いた小型念話水晶を取り出した。


「俺です。今旦那の所に着いて……え? ……えっ!? 本当ですか!?」

「どうした?」

「実は旦那の娘が植物生物と戦っているって知らせが!」


 アイツ、帰りが遅いと思ったらそういうことか。


「それで、旦那の娘が小さい女の子を助けた際に奴の攻撃を受けて怪我を、うぐっ!?」


 俺はその団員の胸倉を掴んだ。


「おい!! その公園は何処だ!!?」


――――――――――――――――――――


「マズい状況だな」


 イサユは歯を食いしばる。

 今、植物生物の蔦には左のわき腹から血を流しているクラカが捕まり、攻撃が出来ずにいた。

 先程、植物生物が小さな女の子に襲い掛かったところをクラカが助けに行った。

 幸い、女の子は無事だったが、助けた際にクラカは植物生物に噛まれ怪我をし、更に蔦で縛られて捕まってしまった。


「どうするイサユさん」

「んー。我々の攻撃が当たったりでもしたら間違いなくガクラ殿はブチギレるだろうな」

「そしたら俺達オールブ島警備団は壊滅。皆仲良く無職ですかね?」

「嫌な事言うんじゃねぇ」


 不吉なことを言うソウシの頭をトーザは殴る。


「おい! ガクラ殿に連絡は!?」

「はい! 先程向かわせた団員から着いたと報告がありました。しかし、ここから光の兄弟の家まで距離がありますし、来るのに時間が掛か……ん、何だあれ?」


 鬼人族の団員が振り向くと、奥から何やら黒い物体……ではなく、生き物がこっちに向かってくるのが見えた。


「猿……ゴリラ? いや……あれは、ホーンコング!?」

「ホーンコングだと!? 何故一級の魔物がここに!?」


 イサユは焦り、向かってくるホーンコングを見ると目を細める。


「おい。誰か乗ってな……」


 速いスピードで向かってくるホーンコングが近くに来ると、その背にはガクラとガネンが乗っていた。

 警備団の上を跳び越えると、植物生物に向かって行った。


「ディーク! 跳び乗れ!!」


 ガクラが指示を出すと、ディークは雄叫びを上げて大きくジャンプし植物生物に跳び乗った。

 跳び乗ったディークに向かって植物生物の首や蔦が一斉に襲い掛かるが、それらをガクラの大剣の一閃で斬られて行く。


「ディーク! お前は構わずクラカの所まで突き進め!」

「ゴォォォォォォォ!!」


 ディークは首や頭、蔦の上をジャンプして渡って行きクラカに近づく。

 襲ってくる首や蔦も、ガクラとガネンが剣で斬り伏せていく。

 そしてクラカが目の前に来たところで、一つの頭が口を大きく開けて襲い掛かると、ディークがパンチをかまして頭が破裂するように吹き飛びクラカの元に着いた。


「ガネン! あの蔦を斬れ!」

「おぉ!」


 ガネンが剣から光の斬撃を飛ばして蔦を斬ると、クラカを縛っていた蔦が解けた。


「クラカァァァ!!」


 ガクラがクラカを左腕でガシッと掴むと、ディークは植物生物の上を次々とジャンプし警備団の所に戻る。


「おい! 医療班!」


 イサユの声で、医療箱を持った団員が来た。


「ガクラさん!」

「ん? お前等いたのか」


 茂みの中からセーユ、シフール、イセナの三人が出てきた。


「はい。クラカさんとこの公園に来たら、池からあの怪物が出て来て」


 セーユの話を聞いたガクラは大体の事情を把握した。

 そんなガクラに、植物学者のエルフの老人が近寄る。


「ガクラ殿、申し訳ない。アイツに逃げられてしまったばかりに娘さんに怪我を……」

「それはもういい。それで爺さん、アイツの弱点とか知ってるのか?」

「は、はい。アイツは植物で出来ているので火や氷に弱いです。しかしあそこまで水を吸って成長していると火の効果は薄いでしょう」

「と言うと氷か」


 ガクラは少し考えると、警備団やガネンのほうを向いた。


「ちょっとアイツを仕留める。それまでアイツの気を引いてくれ」

「分かった」


 ガネンが頷くと、イサユも頷き団員達に声を掛ける。


「よしお前等! もう少しだ、気合を入れていけ!」

『おぉぉぉ!!』

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